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布教されたい人による授業の話

久々のnoteになってしまいました。
気づいたら新年度が始まり、1Qの授業も終わってしまいました。会社の仕事のことは前回のnoteに書いたので、講師としての仕事についてと、作りたい未来の話を書いていきます。決意表明です。

新年度のはじめにやったこと

日本では4月から始まる期間を年度と呼んでいますよね。新年度が始まると職場に新しい仲間が増えたり、学生だと学年が変わったり学校が変わったり大きな変化があります。年度的な意味で言うと授業を受け持っているデジタルハリウッド大学はクォーター制で、わたしは1Qと2Qの年度の前半の期間を担当しています。仕事面で言うと週に1度大学の講義があるので他の仕事はあまりできない日となり、ルーティーン的に講義の準備と講義を繰り返して過ごすので生活の仕方も少し変わります。そんな「先生」としての半年間が始まります。

昨年オンラインで授業をやってみて、それぞれの個性が見きれなかったなという反省がありました。技術を教えるクラスで個性を見ることが重要かというとそんなことはないかもしれないです。でも、卒業生として後輩たちにどうなってほしいかという願いと、今後の世界がどうなってほしいのかという想いがあって、カリキュラム変更をすることにしました。

1年生には「動画作りを体験してもらう」
Adobe After Effectsの使い方

2-3年生には「動画を使って表現することに挑戦してもらう」
Adobe Premiere Pro のちょっと便利な使い方と企画構成の作り方

使うツールも分けました。デジタルハリウッド大学の映像の授業は先生がたくさんいて同じ授業名でも先生によって内容が少しずつ違います。セツナクリエイションはYouTuberの事務所という側面もあるので、弊社のインターンに教えるとしたらどうするか、という視点で2-3年生向けの授業は組み立てました。

この2つの授業を通して学生さんに学んでほしいことはひとつだけ
好きなものを好きって言っていいよ、ってこと

個性を殺さない社会づくりをする

会社員時代、大好きなダンスの舞台に立つために残業をしなくていいように調整して定時後すぐに帰る生活をしていた時、「お前は趣味があっていいな」と皮肉交じりに言われた記憶が今も残っています。
趣味の活動を頑張っている知り合いは「その情熱を仕事にも向けられたらいいのにな」と言われた経験があるそうです。

オタクカルチャーがだんだん当たり前のものになってきても、まだまだ「自分の好きなもの」を「好きだ」と言うと変な人だと思われることがあります。自分の好きなものがほかの人と違うことで生きづらさを感じる人がいます。でも、みんな違うのなんて別の個体なんだから当たり前だろうと今ははっきりとわかります。

私自身、大学生になるまで気づいていませんでしたが「ちょっと変な子」だったみたいなんです。変であることがステイタスではないのだけ注釈をいれたいところなのですが、そんな自分に気づいていないと「なんか生きづらい」世の中との付き合い方になります。
大学生になってそんな自分に気づいて、それを面白がってくれる友人に出会って、「自分の好き」を詰め込んだ表現を続けていたら「なんかちょっとすごいかもしれない人」になることができました。
卒業後に同期との飲み会で「ひとりだけちょっと違ったもんね」って言われたのは昨年の衝撃でした。そんなばかな~って思いましたが、私が好きな感じに作って!ってグループメンバーに言ったらすごく良い作品ができた経験もあるので、本当にそうだったのかもしれません。

企画や制作のお仕事をしている中でそれぞれの人の根っこにある色みたいなものの面白さを感じているので自分の「好き」が見えていることは、クリエイターとしてすごく大事なことなんじゃないかって思うんです。
こういうのがかっこいいと思うから作る、こういうのがかわいいと思うから作る、かっこいいもかわいいも曖昧な表現だし、人によって違うものを指していることがある。でも「自分にとってはこう」というのがわかると、その先何かを作っていくためのガイドラインにはなってくれる

個性ってのはそういうところから見えるようになるのかなって思うんです。
だから、好きなものを堂々と好きと言ってもらうことを学生さんには強要させてもらってます。

好きを表現するための課題

初回課題

私の授業では初回に必ず「好きな動画とその理由」という課題を出しています。目的はいくつかあるのですが、この課題にしたきっかけは落合陽一さんです。
落合さんの授業では好きな論文を要約して提出する課題があるという話をメディアアートという講義で落合さん本人から聞きました。優秀な学生さんが面白いと思う論文をその人の視点で要約が見れるというのが魅力だそうです。
私も18~21歳くらいの学生さんがどんな動画が好きなのかについて興味があります。それに、動画を見るのが好きだから作ってみたいというモチベーションの学生さんに「どこがいいのか」を考えて好きな動画について発表してもらうこと自体がクリエイターとしての目を養うのに必須だと考えています。
実際にこの課題に取り組んでもらい、2回目の授業で発表してもらうと「ほかの人の好きな動画が見れて面白かった」「知っている動画でも好きな理由を聞くと新しい発見があった」など学生さんからのフィードバックも上々なので気に入っています。

最終課題

最終課題は基本的に自由選択です。何を作っても良いよという形式になります。ただし、2-3年生向けには縛りをつけて「あなたの好きなものについて発表する動画」としています。これが布教課題です。

好きなものを発表するとゆるく制限にしているのは、広告制作における認知拡大とか販売促進とか、そういった話に授業内で触れているからで、動画としてのオチのつけ方は自由に設定してほしいという想いがあるからです。こんな人に見てほしいというターゲットを自分で考えてもらって、その人たちに知ってほしい自分の好きなもののポイントなどをまとめてもらって、最終的に動画としてアウトプットをする。今期初めて挑戦した課題でしたが、すごく個性がでて楽しい発表会となりました。

課題を通して好きなものを教えてもらうことで、学生さんの個性や好きな方向を聞くことができるし、学生同士も好きなものの話で繋がれたりするようで、それもまた布教の良いところ。私自身も大学時代友人に布教されてラブライブにハマったりしたので、そういう関係を授業を通して生めた気がしてうれしい気持ちになります。

好きを表現して強くなる

どんなクリエイターになっていきたいのか、卒業後にどんな仕事に就くのか、なんてことがわからない中で、何を頑張ればいいんだろうとか、何を学んだら強くなれるんだろうとかを考えている学生さんがたくさんいます。でも、自分の好きなものについて自分が理解することそれを言語化することができれば、どんな仕事に就いてもその能力は活かせると思うんです。
広告の企画職をしていたときに「これがいい」と直感的に思ったものを言語化できずに悩んだ時期がありました。いまならなぜいいのか2時間でも3時間でも話せると思うのですが、当時の私にはまだその能力がありませんでした。企画会議の経験を積むことで徐々にこうあるべき、このほうが素敵というのを言葉で伝えることができるようになり、今では企画を提出してそれは違うと言われることはほぼありません。それが私のクリエイターとしての強みになりました。(デザイン制作の面で言うとまだまだなので会社のメンバーに助けてもらてます)

もちろん仕事では自分の好きなものだけ作っていくわけにはいきませんから、相手の好きを見つけて自分の好きとすり合わせて素敵なクリエイティブを作っていくことが必要です。でも、クリエイターとして自分を殺さないためには、相手の好きを表現するロボットになるんじゃなくて前述のとおり「すり合わせる」ことが大事なんだろうなって思います。相手のためだけのものだったらAIが作ればいいからね。

強くなって自由に過ごしてほしい

好きを表現できるクリエイターとして自分の個性で仕事ができる人として、私の授業を受けてくれた学生さんたちが素敵な未来を歩んでいくことを期待しています。好きを堂々と言える人が増えていけばもっと世界は生きやすくなるはず。
世界中の全員が個性的であれば、変な人なんて居なくなるからね。

(おまけ)6月からやること

①1年生向けの授業

②Twitchの配信を(すこし)がんばる

布教はいつでもお待ちしております。ぜひTwitterで話しましょう。


サポートいただいた際には全額作品制作に使わせていただきます。