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人の夢と書いて儚いと読む

いきなりですが、アルバイトは何個経験したことがありますか?

私は7個です。
喫茶店、ラーメン屋、音楽イベント運営、野球場の売り子、商品PRスタッフ、タバコのプロモーションスタッフ、スタートアップ企業のお手伝い。

なぜこんなにやったかと言うと、理由は1つです。

履歴書の職歴の項目が寂しいから、いっぱい書いて埋めたかったんです。

初めて履歴書を書いたのは高校1年生の時で、その時は中学校卒業と高校入学しか書けなくて、白紙でさみしく感じました。

学校のテストはなるべく解答欄を埋めろと教わりましたので、埋められない項目があることがとても虚しくて、なんとかしたいと思いつきました。

「そうだ。いっぱいバイトしよう。そして履歴書の職歴の欄を埋め尽くしてやろう!」

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ちょっと考え方が振り切ってるね、と言われる背景が我ながら滲んでると思います。

ただ、最初に始めた人生初のアルバイトは大好きだったので、ここは辞めずに他のものを掛け持ちで3ヶ月ずつやってました。

今回はそのアルバイトの1つのエピソードと、そのエピソードを話す上で切っても切れない関係を持つ、トラウマのイニシャルの話をしようと思います。

1、高収入につられたバイト

私は当時、友人の紹介により短期で5日間だけ某携帯端末のプロモーションイベントのスタッフとして働いていました。
なぜか見渡すかぎり美男美女の職場で、たいそう肩身が狭かったです。
後から知ったのですが、なんでもモデル事務所とかに所属の人たちがやるバイトだったらしく、たまたま「身長が高い」という理由で友人からピックアップされた私は、「報酬高いじゃん!」というだけで飛びついたので、入って普通にびっくりしてました。

そんななか、初日の休憩がかぶったイケメンさんがいらっしゃいました。数あるイケメンさんの中でも誰よりも顔が、私好みでございました。

私の好みは「二重で垂れ目」「ちょっと高めの声」の2つです。大好物です。両方お持ちのイケメンさんに、終始ときめきで直視ができませんでした。

推しとはベクトルが違う好きでした。
恋に落ちる音がしそうでした。

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そして、なんと運のいいことに、初日の帰るタイミングが一緒で、電車も一緒でした。話しかけてくださるそのお心遣いにもときめきが止まりませんでした。

2、因縁のイニシャル

話は変わりますが、私は大学生時代に「推し」がいました。
ただ、そろそろ夢から覚めた方がいいのではないかという不安から、推しと出会って2年たった頃に、彼氏を作ろうキャンペーンをはじめました。

そこで最初に紹介されたのが、先輩の同郷の友達で、就職と共に上京してきた人で、仮に「タイチ」とします。

タイチとは色々遊びに行きました。だんだんと好きになっていったのですが、「告白は待っててね」と言われて、待っていたら突然音信不通になりました。

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当時の感想は、もしかして、死んだ????

1ヶ月後、紹介先の先輩を頼り終電で新宿に呼び寄せ、とりあえず新宿東口の駅前ロータリーで一発ビンタしました。いい音が響きました。

音信不通になった理由は、教えてくれませんでしたが、ゆくゆく先輩から聞いたところ「同時進行の女がいて、そっちに行った」とのことでした。

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やっちまえばよかったって気分でした。

わりと傷ついて、ちょっとだけ自暴自棄になりました。
そして、同じく先輩の同郷の友達の、長期休みで東京に来ていた人、仮に「トモヒロ」とします。

結論から言うと、トモヒロとワンナイトしました。
タイチとトモヒロは友達だったので、正直、当て付けの意味合いもありました。


ただ、トモヒロは北海道に帰ってからも連絡がまめで、表面的にですが大切にされている気がしました。
傷ついていたこともあり、わりとコロッと好きになりました。
連絡を続けて、早1ヶ月。突然夜に連絡が来ました。

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衝撃すぎて咄嗟にスクショしました。
余談ですが、この画像をさるYoutuberに投稿したら、「LINEのスクショ集めてみたらツッコミどころしかなかった」という回で使っていただきました。笑

なんと、こいつには5年以上付き合っている彼女がいて、遊ぶために東京に来ていたらしいです。

正直、「遊び」ということは気付いてました。なのでそこには驚かなかったのですが、彼女がいると言うことは、先輩や一緒に飲んだ私の友人にすら口止めをし「いない」と口裏を合わせていました。

私は「嘘をつかれていた」ということがとてもショックでした。
以降、好きな人のタイプは「嘘をつかない人」になりました。

さて、タイチもトモヒロも同郷で同じイニシャルを持っていました。北海道のT。私は独断と偏見で、北海道出身のTを危険視するようになりました。
もう傷付きたくないので、自己保身でした。

3、イニシャルの呪い

話が前後してしまうのですが、バイトの話に戻りまして、勤務2日目。
運のいいことに初っ端からイケメンさんと休憩が一緒でした。盗み聞いた話の内容から、「彼女はいらないけど結婚相手を探してる」とのことでした。直接しゃべる勇気なんて当時の私にはなかったんです。

直後自己紹介しました。それまで名前を知りませんでした。仮に中原さんとします。
「なんか、他のコンパニオンの子と全然違うよね。図書館にいそうだよね
もちろん、最大級の猫被りです。緊張感という心の鎧をまとい、最大級に心を閉ざした状態で人受けがいいように笑みを絶やさないという技術でございます。コツは最大限口を開かないこと。なお、持続時間は8時間。代償は、以後無表情になることです。表情筋が仕事をしすぎだったんです。

それから、中原さんは私をとても可愛がってくれました。もうほんとうに顔面がタイプでして。直視ができないんです。笑うとさらにタレる目元がもうたまりませんでした。よだれ出そうでした。ごまかしましたけど。

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次にかぶった休憩では、今までは全て対面だったのに、なんと1m圏内。体に緊張が走りました。けして粗相をしてはならない。そんな覚悟を持って、そっと猫の動画を見せました。めっちゃ盛り上がりました。ありがとう猫。ありがとう。だいすきだ。

帰り際、私の帰るタイミングで、中原さんが控え室を出てくださいました。明らかに狙っていたのを私はしっかり気付きました。一緒に帰れる喜び。筆舌尽くし難い。
「君は、どう見てもお嬢様だよね」
との一言には、もはや完全に心の中でガッツポーズ。私は完璧に清楚系お嬢様に擬態できていました。

「擬態してます!」
 しかしながら、自己申告もするのが自己流です。めっちゃ笑ってくれました。笑顔まじで好きでした。

ただ。この時から、薄々気づいていることがありました。垂れた目元のしわ加減から、中原さんはおそらく三十路であると。
それでも帰り道、2人きり。それはもうドキドキしっぱなしでございます。会話せねば。そればかりが脳みそをしめていました。頑張って話題をひねり出してました。多分、あの時が一番IQ高かったと思います。

「中原さん、次の出勤はいつですか?」
「18日かな」
1ヶ月のイベントでしたが、前半のみだったため最終出勤日が17日でした。
「じゃあ今日で最後ですね!」
「えーーーそうなの!? もう一緒に働けないの残念だわ」
この時までは、連絡先は無理でもせめて「顔面だいすきです!!」は言おうと思ってました。もう会えない。しかし、そんなことは悲劇の序章にすぎなかったのです。

「お世話になりました〜〜!失礼ですけど、おいくつなんですか?」
「37」
 さ ん じ ゅ う な な?

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「ワア」

干支は猿。私はねずみ。ほぼ2周ちがいました。
しかしながら。イケメンはイケメン。イケメンなのであります。年齢がなんだ。私の心はまだ折れていませんでした。

その後、私が大学生と言ったので、「どんなことしてるの?」と言われ、論文を書いている話になりました。私の所属ゼミは、毎年論文を書くことになってました。


「テーマはなんなの?」
「ご当地グルメ書こうと思ってます」
「面白いね〜〜! 調べてんの?」
「本とか読んでます!」
「へえ! 北海道とか??」

なぜここで突然の北海道。我が因縁の北海道。なんと中原さんは北海道出身でした。ここで一つ。嫌な仮説が浮かび上がり。思わず尋ねました。

「ちなみに下のお名前は?」
「タカヤ(仮)」

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イニシャルTでした。北海道出身の、T でした。


この時の私の顔は相当ひどかったらしく。中原さんに「え、なに、え?」と大層困惑をさせてしまいました。
顔面は変わらず大好きでした。大好きなのでした。
しかしながら、全てが砕け散りました。
なぜならば、彼が北海道出身のTだからです。
我が因縁の、北海道出身のTだったのです。

こうして、儚く、始まる前の恋が砕け散りました。

人の夢と書いて儚いと読みます。やらない後悔よりやって後悔と思って常々思っておりますが、今回は知りとうなかったです。

まとめ

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この話をすると、友人にはこう言われました。
こんなにキレイにオチがつく人生って珍しいね
楽しんでくれてありがとう。

ほんとにごめんけど、わらう
もういくらでも笑ってくれ。

逆に運命なんじゃない? ダメな方の
呪いってこと???

何が恐ろしいかと申しますと、最初のタイチ6月〜7月トモヒロ8月9月は空いて、10月が徳島出身のタイキ11月が福島出身のタクト12月タカヤさんと全部同年にTとばかり出会いました(全部仮名ですが、イニシャルはほんとに全員Tでした)。

本当に呪いなんじゃないかと思いました。

何故ならば、私の「推し」のイニシャルも T でした。
これはもう余所見をした罰なのではないかと、逆に思いました。
こうして私の半年かけた彼氏を作ろうキャンペーンは終了しました。

今でも私の心にしっかりと、「北海道のTの呪い」は刻まれております。
救いなのは、遺伝性はないことかと思います。こんな残念な呪いが遺伝したら子供がかわいそうすぎる。

また、あくまでこれは私の身にタイミング悪く起きたことなので、世の中の北海道出身の方はイニシャルTの方が全員悪いわけではないと理解はしてます。私だけのアレルギー反応とでも思っていただけたら幸いです。

以上、独断と偏見で北海道出身のイニシャルTを警戒することになった話でした。バイトどこいった。

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