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終わりに向けて時々懐古しようと思います。 誰にも見つかりませんように。 ほとんど眺めて…

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終わりに向けて時々懐古しようと思います。 誰にも見つかりませんように。 ほとんど眺めているだけ。

最近の記事

くじ引きで決まる人生

受験シーズンになると人生初の絶望を思い出す。 きっかけは覚えてないけれど小学生4年生の頃に自分から学習塾に通いたいと両親に申し出た。単純に知らないことを教えてもらう事が楽しく、問題が解けるのが気持ちよかったのだと思う。 やがて塾側から中学受験コースに進まないか?と誘いを受けてはじめて中学受験を意識した。通いたい学校、通わせたい学校があるわけではなかったけれどゲーム感覚で「難しいところに挑戦したい!」と受験することにした。 偏差値教育真っ只中の時代で、夏休みなんかには朝か

    • 傷痕を守る。

      文化人類学の教授に「キミをみると鉄男を思い出すよ」そう言われたのは十九歳の頃。 塚本晋也監督の映画のタイトルということをその時はじめて知った。わたしが人生で一番メタリックだった時期なので、あながち間違いではないが、あんなにイカれてはないと思った。 毎月東京に通って一日中ボディピアススタジオに入り浸り、そのたびに身体に金属や傷が増えて帰ってくる生活をしていただけ。 教授はわたしのことを興味深いと言って色んな民族のイニシエーションを教えてくれたりしたけれど、わたしは自分の身体

      • 2年間友達だった彼のこと

        いまから京都の禅寺めぐりしよう!って2時間かけて京都までドライブしてきたり 炭水化物抜きダイエット勝負しよう!って誘ってきて2人で毎日体重と食べたもの報告しあったり 海外旅行しねえ?いいね!ってノリでタイに行ったり 太陽の塔の下で何時間も昼寝をしたり 東京に引っ越さねぇ?いいね!今の仕事やめるわ!ってノリで同じマンションの2階と3階に住んだり そんな友達がいた。 彼は人の心を操れると思っていたし、催眠が得意だと言っていた。 わたしは操られた自覚はないけれど、思い立ったら即

        • 別れ話を待っていた

          これは復讐だと思った。 わたしはかれこれ13年間、ある人からの別れ話を待っている。 メールで伝えられた別れに実感がわかずに「せめて直接会ってつたえて欲しい」そう言って保留した。 人の縁には執着しない方だけど、このときだけは少し«関係のない人»になってしまうのが寂しかった。 「わかった。仕事が落ち着いたら連絡する。」それが最後の言葉。 そういえば、この人との離別は2度目だった。 1度目はわたしからメールで、そして「一旦別れてほしい、他の人が好きかもしれない」という身勝手な内

        くじ引きで決まる人生

          冬の記憶

          玄関先の鉢に植えられていたのは柊だった。 しばらくそれに気が付かなかったのは、柊の花が小さく香も控えめで造作の似ている金木犀のそれにくらべて少し地味だったからだろうか。はたまた、いつも慌ただしく出かけていくからだろうか。 その柊をはじめて認識したのは、雨が降っていた夜だった。雨に打たれた柊の花は一際香り立っていたようで、帰宅して傘をたたみ暗い玄関の鍵を開けようとしていた私の鼻に濃密な香りがもわんと漂ってきたのだ。その香りのもとを辿る様に、ふと目を下ろした。 緑の鋭くギ

          冬の記憶