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別れ話を待っていた

これは復讐だと思った。
わたしはかれこれ13年間、ある人からの別れ話を待っている。

メールで伝えられた別れに実感がわかずに「せめて直接会ってつたえて欲しい」そう言って保留した。
人の縁には執着しない方だけど、このときだけは少し«関係のない人»になってしまうのが寂しかった。
「わかった。仕事が落ち着いたら連絡する。」それが最後の言葉。

そういえば、この人との離別は2度目だった。
1度目はわたしからメールで、そして「一旦別れてほしい、他の人が好きかもしれない」という身勝手な内容だった。これは罰だ。ふらふら戻ってきたわたしを受け入れた事も復讐だったのかもしれない。


古いメールアドレスで登録しているSNSからメールが届いた。『知り合いかも』とサジェストされた名前は懐かしく、アイコンはよく知っている顔だった。隣には知らない女性と2人によく似たこども。
別れ話をしてないけれど、わたしたち十数年の間にそれぞれ別の人の配偶者になっていたみたい。
そろそろ«関係のない人»になれたかなと思いながら、そのSNSアカウントにそっと鍵をかけた。

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