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奈良ひとり旅 よかった場所

旅先で感動したものを言葉にするのが苦手なので、その練習がてら書いてみる。色んな神社仏閣を巡った。どこも素敵だったけれど、特に気に入った場所3つ。

第3位:大神(おおみわ)神社

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日本最古の神社。パワースポットとして有名な場所だ。残念ながらわたしは霊的な感応力みたいなものが無いので、本当にパワーにみなぎる神社なのかどうかは分からなかった。

でも、どことなく親しみやすいような雰囲気は感じた。ちょうど祭事が執り行われていて、柔らかな色彩の装束をまとった綺麗な巫女さんたちが神楽を舞っていた。

その舞と音楽の美しさと物珍しさに、たまたま居合わせた人たちがぼうっと遠くから眺めているのがまた良かった。1時間近く長居をしてしまった。居心地が良いのは、多くの人に心を寄せられる神域だからだろうと思った。

第2位:西大寺

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画像は、境内で見つけた「玄武」という北方を守る神獣。かわいい。

西大寺で素晴らしかったのは、本堂の文殊菩薩騎獅像だ。文殊菩薩は釈迦如来の脇侍として普賢菩薩とともに置かれることが多いが、ここでは相方の普賢菩薩はおらず、1人でいちばん目立っていた。

獅子に乗っている像容は実に大きく、華やかで目を引く。こんなに大きな文殊菩薩像は初めて見た。獅子だけ見ても堂々としていて、でも顔はけっこうかわいい。その上に蓮華座を載せて座っている菩薩像は、精緻でくっきりとしたお顔をしている。

ものすごい存在感だ、と思った。菩薩らしい豪奢な装飾品をたくさん下げていながら、しなやかで知的な曲線美の表情が空間を引き締めている。一瞬で引き込まれる。叶うことならずっと見つめていたかった。

第1位:薬師寺

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大雨の薬師寺は、不思議な静けさに満ちていた。きっと平時であれば多くの人で賑わうのだろうが、わたしの参詣時はほとんど人がいなかった。屋根を伝って雨水が流れ落ちる激しい音ばかり響いていた。

大講堂にわたしの大好きなものがあった。国内最古の『仏足石』だ。

仏足石(ぶっそくせき)は、釈迦の足跡を石に刻み信仰の対象としたもの。 古いものは紀元前4世紀に遡るとも考えられている。 また仏足石は釈迦のものとは限らず、シバ神の足跡も信仰の対象とされている。 両足を揃えたものがより古い形式のもので、片足のものは比較的新しく紀元後のものと考えられる。(Wikipediaより引用)

仏教ははじめ、より楽に生きるための知恵のようなものだった。それを教えたお釈迦様はとても尊敬されていたから、亡くなった後長い時が経って、人々はお釈迦様のことがとても恋しくなった。だから、直接の姿はちょっと不遜だけど、気配だけでも感じたいと思って足跡を石に掘ったのだ。

薬師寺の仏足石は両足が揃っていた。大きな石の上に、消え入りそうだったけれどきちんと足跡を見ることができた。なんてうれしいことだろう!

仏足石の周りに、中村晋也さんの作の十大弟子像が立っていた。これもまた素晴らしくて、実際にお釈迦様の時代に行って見てきたんじゃないかというくらいリアルな像だった。十大弟子はそれぞれ名前と、特に秀でた分野というものがある(例えばいちばん弁が立つ人や、いちばん戒律を重んじる人など)。それを考慮したうえで、性格を想像して顔かたちを彫り上げたんじゃないかと思った。それくらい個性豊かでかっこよかった。

薬師寺のメインは金堂の薬師三尊像だ。あまりの美しさに、岡倉天心は「まだ薬師寺の薬師三尊を拝んだことが無い人は幸せだ、はじめて見るときの感激を体験する機会が残っているから」というようなことを言ったらしい。わたしもHUNTER×HUNTERを読んだことがない人に似たようなことを言ってしまうので気持ちはよくわかる。

そんな薬師三尊は、噂に違わぬ美しい仏像だった。脇侍の日光菩薩、月光菩薩は腰をややくねらせた姿。中尊の薬師如来は施無畏・与願印を結び、右手には水かきのようなものがあった。仏像の水かきには、人々をひとりでも多く救いとる、というような意味があるらしい。

全体的に黒くひかっているのは火災で表面の金が失われたからだという。火災に遭ってもなお存在を留め更なる美しさに到達したのかと思うと凄みを感じた。初見の感激というよりは、見れば見るほど美しさがわかってくる気がした。

三尊セットでひとつの完成された美を感じるのはけっこう珍しいかもしれない。柱の角度的に、近くから完全な視界で三尊を拝むことはできなかったが、建物の外から遠目で眺めると、三尊揃って厳かに参拝者を待つ姿が見えた。

1000年以上の昔からここに在り、人々を見つめてきたのだと思うと不思議な感じがした。連綿と続く歴史の末に、わたしもここに立っているのだ、というような。日本の歴史と繋がれる場所が奈良であり、古寺である。また来たい、と強く思った。


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