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リモートワークにおいて上司が部下のパフォーマンスを高めるには

1. はじめに

コロナの影響で企業として勝ち企業となっているZoom。株価もうなぎのぼりである。

https://www.investors.com/research/stock-market-crash-zoom-stock-gains-should-you-buy/

日本企業やその他の組織体の多くもリモートワークを強いられているのではないだろうか。

そんな中、リモートワークで部下のパフォーマンスを高めるうえでは通常の業務以上に上司と部下の関係が重要であることを証明した研究がある。

論文は以下の通り。

Hill, N. S., Kang, J. H., and Seo, M. G. (2014) The interactive effect of leader-member exchange and electronic communication on employee psychological empowerment and work outcomes. Leadership Quarterly, 25, 772-783.

2. リーダーメンバー交換理論、心理的エンパワーメント、そしてパフォーマンス

リーダーシップの理論で最も世界中で研究されているのはリーダーメンバー交換理論 (Leader-Member Exchange Theory)、通称LMX理論であろう。この理論はリーダーと部下との関係性に注目している。

簡単に言えば、リーダーと部下の関係にはメンバーがリーダーの内集団に含まれるのか、外集団に含まれるのかという違いがある。内集団のメンバーはリーダーとの間で信頼関係を築き、十分な注意を払ってもらえ、コミュニケーションが頻繁に行われ、その他さまざまな恩恵が受けられる立場にある。簡潔に言えば、内集団のメンバーはリーダーに気に入られている人々である。

一方、外集団のメンバーは特別な注意をリーダーから払われていない人々である。その関係性はあくまで雇用契約という組織の規定に従って形成されている。

リーダーとメンバーとの間の関係の質が高い、つまり内集団に含まれる従業員の方が①仕事に対する意義、②仕事に与える影響度合いの大きさ、③コンピテンシー、そして④自己決定権が与えられていると感じやすくなる。これら四つの要素を合わせて心理的エンパワーメントと呼び、リーダーとメンバーの関係が高いと従業員の心理的エンパワーメントは高い傾向にあるといえる。

さらに心理的エンパワーメントが高い従業員は、仕事におけるアウトカムも高いことが明らかになっている。ここでいう仕事におけるアウトカムとは、職務満足度、組織コミットメント、そして職務パフォーマンスである。

以上をまとめたのが次の関係である。

リーダーとメンバーとの間の関係の質が高い → 従業員の心理的エンパワーメントが高い → 従業員の仕事におけるアウトカム(職務満足度、組織コミットメント、職務パフォーマンス)が高い

3.電子機器を用いたコミュニケーション

Hill らの研究は、上記の関係性を電子機器を用いたコミュニケーションの程度によってどのように変化するのかを検証している。つまり、対面でのコミュニケーションに対して電話、e-mail、インスタントメッセージ、ビデオ会議、ウェブ会議といったコミュニケーションの割合がどの程度かによって、上記の関係性が変化することを証明している。

実験はアメリカの大学のMBAコース受講者353名に対して行われ、質問票調査による実証を試みている。海外のMBAコースは基本的に実務経験のある人々が通学しており、今回も職務経験のある学生たちが対象となっている。

交互作用項を用いた回帰分析によって分かったのは以下の通り。

(a) 電子機器を用いたコミュニケーションの程度が高いほど、リーダーとメンバーとの間の関係性の質と従業員の心理的エンパワーメントの関係が強まる。
(b) 電子機器を用いたコミュニケーションの程度が高いほど、従業員の心理的エンパワーメントと従業員のアウトカムの関係が強まる。

まず、「関係が強まる」とは二つの変数間の傾きが急になることを意味する。

もともと「リーダーとメンバーとの間の関係の質が高い」と「従業員の心理的エンパワーメントが高い」ということが明らかになっている。本研究でもこの関係性は確認できている。

そして、「電子機器を用いたコミュニケーションの程度」が高い状況では、リーダーとメンバーとの間の関係の質が「高い」と従業員の心理的エンパワーメントが「より高い」ということが明らかになったのである。

一方、傾きが急になるということは、「電子機器を用いたコミュニケーションの程度」が高い状況では、リーダーとメンバーとの間の関係の質が「低い」と従業員の心理的エンパワーメントが「より低く」なることも意味する。

この意味で、電子機器を用いたコミュニケーションの頻度が高くなればなるほど、リーダーとメンバーとの間の関係性がより大きな影響を持つことが示唆されている。

アウトカムについても同様で、「電子機器を用いたコミュニケーションの程度」が高い状況では、従業員の心理的エンパワーメントが「高い」ほど、従業員はより職務に満足するようになり、組織へのコミットメントがより高まり、職務パフォーマンスもより高まる、ということが明らかになった。

4. リモートワークにおいてはより上司と部下の関係が重要になる

この研究から示唆されるのは、直接会ってコミュニケーションをすることができない場合、上司と部下の関係性が部下のパフォーマンスに影響を与えてしまう可能性が大きくなるということである。

そして、パフォーマンスへの影響は従業員の心理的エンパワーメントを通じて現れる。

つまり、リモートワークという環境において、もし上司と部下の関係が良くない場合、部下は「自分は仕事を十分に任せてもらえていない」と感じやすくなり、その結果仕事への満足度が低下し、組織に対してコミットしなくなり、職務パフォーマンスも低下してしまう可能性があるのである。

リモートワークをする前に、上司はもう一度部下との関係性を見直し、良好な関係が築けているのかチェックする必要がある。


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立命館アジア太平洋大学 国際経営学部 准教授 Intellectual Partners, CEO コンサルティング承ります 猫派、いいね、フォローされると喜びます twitter: https://twitter.com/YShinohara_APU

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