こんな物語気になる【1】
私は今死んだ。
殺されたという方が正しいだろうか。
死んでしまうと意識は無くなるし、こうして思考を巡らせることも出来ない。と思う。
ということは、私はまだ死んでいない。しかし、少し前、私は殺されたのだ。これだけは紛れもない事実だ。
私の息絶えた顔を目にするのは難しくない。名前は知らずとも、意識になくともこの顔を目にするのは初めてではないという人は多いのではないだろうか。
私の息の根を止めた犯人が明かされるのは1時間後だろうか、否、2時間後だろうか、はたまた3か月後だろうか。
必ず犯人は見つかる。その方法は聞き込みか、取り調べか、心理学なのか。その手法は担当刑事によってさまざまだ。
最後は捕まり、崖の先に追い詰められるのか、うなだれたり涙を流したり、最後は多種多様だが、手錠をかけられたその先を見ることは誰にもできない。後悔しているのか、何も罪悪感を抱いていないのかも分からない。しかし、最後は必ず捕まる。
殺された私がどうして犯人が必ず捕まると知っているのか。それは天からのお告げでも、超能力でもない。
私は女優なのだ。死人専門の。
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