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映画レポ|『いつだってやめられる』シリーズがくだらなおもしろい

みなさんは知っていますか、この映画。

高IQの元優等生たちが“ドラッグを合法成分で開発すれば捕まらないし儲けられるんじゃね?”と集まって繰り広げるイタリア発の大ヒットコメディ映画である。

それが、なんと三部作もある。観終えると達成感を含めた謎の感動すら覚えるので、ぜひおすすめさせてほしい。

◾️あらすじ

定職に就けない博士、教授―“ポスドク”の代表格である主人公・ピエトロは神経生物学者。ふとしたきっかけでスマードドラッグの製造を思いつき、次々と仲間を誘い集めていく。持て余すほどの頭脳を持ちながら、生きることには不器用な男たちだ。2009年にはじまった欧州危機をもろにくらった不遇の研究者たちは、一発逆転、思いがけない大金を稼いていくが、人生そんなに甘くない。マフィアに脅され、思いもよらぬ犯罪に手を染めることになる。

【いつだってやめられる 7人の危ない教師たち】
https://synca.jp/film/528/

◾️社会から弾かれる教授たち

そもそもイタリア映画ってあまり観たことなくないか。ほぼ『ライフ・イズ・ビューティフル』ぶりのイタリア映画が、ドラッグ開発に走る教授の話でその温度差で風邪ひきそうだった。
まず目を引くのは、妙にネオンっぽい特徴的な色味だろう。映像表現でドラッグ気分を味わったのはこれがはじめてだ。

シドニー・シビリア監督によれば、本作は「首席の学者がごみ収集員」という記事から着想を得ており、この記事をきっかけに実際に研究者たちに取材した結果を参考にしている。

【Wikipedia】
https://onl.tw/JzLhtaU

本作は優秀にも関わらず、そのIQを活かすことなく生きている元優等生たちを集めて起こす「革命」という名の…まあ、思いっきり犯罪である。

◾️ドジるマッティア

神経生物学者の主人公ピエトロと、その相棒で化学に長けたアルベルト、ラテン語に長けたジョルジョとマッティア、経済学に長けたバルトロメオ…などなど、個性豊かな面々が揃う。最初に言っておくが、彼らは誰ひとりとして格好良くない。自分の才能を活かすことがとことん下手なのだ。

私が特に好きなのは、2作目である『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』でのシーン。彼らはあるミッションのため、コンテナにGPSをつけようと目論む。実行役はマッティア。

仲間1「ちょっとした手違いがあった。
マッティアがコンテナの中だ。

ピエトロ「は?GPSは?」

仲間1「まだ我々が持っている。」

ピエトロ「おい、マッティアが外で、GPSが中だ。
なぜマッティアが中で、GPSが外なんだ。

仲間2「何か問題が?」

ピエトロ「問題が起きた。
マッティアが中で、GPSが外だ。

仲間2「何をしているのよ?
彼は外で、GPSは中のはずよ。

マッティアが中でGPSが外なのはもうわかったよ。何度も繰り返される早口なイタリア語がじわじわくる。マッティアはマッティアで、GPSを取り付けるため一旦外にGPSを置いてコンテナの中に入ったので相当なドジである。

◾️ドジるバルトロメオ

好きなシーンはまだ続く。彼らはドジったマッティア救出のためコンテナが積まれた列車へと向かうのだが、そこで調子に乗って格好つけたのがバルトロメオ。一応これも言っておくが、彼らはすぐ調子に乗って格好つけようとする。

バルトロメオ「俺がいく」

ピエトロ「あいつは何をしてる?まさか列車に飛び移る気か?」

バルトロメオ「えいっ」

ピエトロ「…おいバルトロメオはどこだ?」

仲間「列車の反対側へ落ちた。

落ちるんかい。

◾️三作で成長した…?教授たち

最初はドレッシングの名前としか思えなかった主人公にも、観る回数を重ねるごとにだんだんと愛着が湧いてくる。

三作目では、あるテロが起きることを未然に知ったピエトロが、テロを阻止すべく仲間たちと脱獄を企てるというストーリーになっている。
また、ピエトロが逮捕されたことをきっかけに悪くなっていた妻、ジュリアとの関係も描かれる。

そして全てを終えたラスト…ピエトロは一連の出来事を通じて、一体何を得られたのか?という問いへの答えが描かれる。その演出が本当に見事で、予想外に泣かされたので驚いた。三作を観た後でしか得られない「観てよかったな…」というこの気持ち。ぜひ味わってみてほしい。

◾️まとめ

少し長くなってしまった。
ここ最近は『RRR』の快進ぶりを見ても、さまざまな国に素晴らしい映画があるんだなと実感する。

またぜひおもしろいイタリア映画が観たい。いや、いろんな国の映画が観たい。そして、文化の違いはもちろん、人本来が持つ共通点を見つけたい。共通点があるって、なんだか嬉しいことだしね。

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