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映画レポ|『アメリ』内気な僕らのおしゃれな教科書

はじめて会う人と話すときに緊張したり、価値観が違うだけで変人だと言われたり…なかなかうまく人と交われない、という悩みを持つ人は多い。

今作に登場する“アメリ”もそんな内気な女性のひとりだ。この物語は、なかなか一歩を踏み出すことができない私たちに、とびっきりアートな世界で勇気を届けてくれる作品だ。

◾️あらすじ

空想好きの小さなアメリは、そのまま大人になってモンマルトルのカフェで働いている。彼女の好きなことはクレーム・ブリュレのカリカリの焼き目をスプーンで壊すこと、周りの人たちの人生を今よりちょっとだけ幸せにする小さな悪戯をしかけること。彼女の人生は、スピード写真コレクターのニノとの出会いによって、ある日突然、混乱をきたす。人を幸せにするどことか、優しい笑顔のニノにアメリは恋心を打ち明けることができない。アメリの最も苦手な現実との対決、不器用な恋に必要なのは、ほんの少しの勇気。

【アメリ|ソニー・ピクチャーズ公式】
https://www.sonypictures.jp/he/746220

◾️出会ってしまった運命のひと

アメリはある日、証明写真機の前で探し物をする青年、ニノに出会う。ある男を見つけて急に慌てて走り出したニノが気になり追ってみると、彼が落とし物をしていることに気がつく。それは、撮影に失敗して捨てられた証明写真のスクラップブックだった。

…この時点で彼はかなりの変人であることがわかるのだが、彼がなぜ証明写真を集めているのか、なぜ男を追って走り去ったのか…アメリの心のなかは“証明写真コレクター”のニノのことでいっぱいになってしまうのだった。

◾️幸せへと導く魔法のアイデア

ニノを追っていくうちに、少しずつ彼のことを知っていくアメリ。昼間はお化け屋敷で働いていること、夜はアダルトグッズ店で働いていること、捨てられた証明写真に何度も写っている謎の“証明写真男”を探していること…。

それはいつしか恋と呼べる感情になっていたにも関わらず、内気なアメリにはニノと直接会ってスクラップブックを返すなんてことはできない。そこで、“証明写真男”の謎を暴き、いつものようにいたずらを使ってこっそりスクラップブックを返すことを計画する。

一方ニノも、自分を追っている女性がいることに気がつきはじめる。2人は一度も目を合わせて話すことのないまま、お互いに惹かれ合っていくのだった。

◾️ 内気なアメリが踏み出す一歩

ついに“証明写真男”の正体を知ったアメリはニノへのいたずらを決行する。対するニノは、いたずらを仕掛ける女性に会いたくて堪らない。変わり者2人の追いかけっこは止まることなく、ついにニノはアメリの部屋の扉を叩いた。
ニノがいる。アメリの時が止まる…あと一歩踏み出せば、彼に会える。一度は無理だと顔を背けるも、自分の心を整理し、アメリは勇気を振り絞り一歩踏み出した。2人ははじめて目と目を合わせ、言葉は一言も交わさない。ニノはアメリが指差す場所へ、ゆっくりとキスをしていくのだった。

◾️まとめ

変わり者2人が育む愛を描く『アメリ』。

嫌な言い方をすれば、「ウェイトレス」のアメリに「アダルトショップ店員」のニノは世間から少し浮いている。しかし、アメリとニノは共通の価値観を持ち、世間からの見え方など考えてすらいない。私はこの、ごく自然に価値観を認め、尊重し合う2人の愛し合い方が大好きだ。

何度観てもおしゃれな映像にときめき、じれったい恋に胸がキュンとする。
『アメリ』は内気な私たちの背中をキュートにひと押ししてくれる、そんな映画ではないかと思う。

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