うろ覚えむかしばなし サトリ

あやふや度 ★☆☆☆☆

あるとき、きこりが山の中で焚火をしていると、「わしもあたって良いかい」と言う者がありました。
きこりは、このような山の中で声をかけてくるものがいるとは、とあやしく思いながらも、「良いよ」と言いました。
藪の中から、老人がぴょんと飛び出し、火に当たりながら言いました。
「おまえさっき、このような山の中で声をかけているものがいるとは、と思ったろう」
見ると老人は一つ目、一本足で、粗末な身なりです。
きこりは思いました。(ははあ、これは化け物に違いない)。
すると化け物は言いました。
「これは化け物に違いない、と思ったろう」
化け物はにやにやと笑いながら、きこりの顔を覗き込みました。
きこりは不気味に思いながらも、そしらぬ顔で火にあたっていました。
(人の心が読めるのだろうか)
「人の心が読めるのだろうか、と思ったろう」
(気味の悪いものを招いてしまった)
「気味の悪いものを招いてしまった、と思ったろう」
化け物はニヤニヤしています。
(無視しよう)
「無視しよう、と思ったろう」
(そのうちいなくなるだろう)
「そのうちいなくなるだろう、と思ったろう」
その時、火の中の小枝が爆ぜました。
爆ぜた小枝は化け物の目を直撃しました。
すると化け物は、「ああ、人間は思ってもいないことで相手を傷つける」とちょっとうまいことを言い、「おそろしい」と泣きながら逃げました。
この化け物を、サトリといいます。


昔話の好きな子供でした。でも、あの頃読んだ昔話は今や記憶の中でうろ覚えのあやふやになり、混ざり合いごちゃごちゃになっています。
きちんとした話を目にしてしまう前に、うろ覚えの状態の自分の中の物語を書いておこうと思いました。
きちんとしたものを目にしてしまえば、うろ覚えの状態には戻れないのですから。

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