【短歌一首】 炎天も昼なほ暗き切り通し覆ふ葉叢に行灯ともる
切り通しとは山などを切り開いて通した道のことを言うが、その構造上、まわりは山の岩肌が剥き出しになっていたり、木々がうっそうと生い茂っていたりすることが多い。
特に夏の季節は切り通しを囲む木々が最も生い茂っているので、場所によっては昼でも暗い場所もある。
鎌倉時代からある鎌倉中心部の扇ヶ谷と北鎌倉側の山ノ内を結ぶ「亀ケ谷坂の切通し」。鎌倉を訪れた時にはよく通る坂だが、暑い季節に通るのは今回が初めて。
鎌倉は三方を山に囲まれ正面が海で、鎌倉時代に敵を防ぎ味方を守るのに適した天然の要害と言われている。 その山を切り開いて鎌倉には外部と繋がる7つの切り通しがあるが、その一つが「亀ヶ谷坂(かめがやつざか)」の切り通し。亀も登れないくらい急であることからついた名前とのこと。
亀ヶ谷坂は鎌倉時代からの重要な軍事、経済ルート。ここを通るたびに、鎌倉時代にはこの道を馬に乗った武士が通ったんだろうな、源義経は通ったのかな、などと思いをはせる。
いつもここを通る時にほとんど人に会うことがない。
いや多分、観光シーズンや休日にはそれなりに人が多いのだろうと思われるが、自分があえて人が少なそうな時期や時間帯を選んでいるのかも。その方が落武者伝説とか物の怪とか怖い妄想に浸ることができるからかもしれない。
特に、今回は暑い時期で木々が鬱蒼としているので、吹き抜けていく風が起こす葉擦れの音が怖いくらい大きい。
夏の時期は切り通しを取り囲む木々の葉叢が大きく、切り通しの上でアーチのようになっている。このおかげで炎天を遮り、貴重な木陰を作ってくれている。
それにしてもよほど暗いのだろう。天気の良い真昼でも街灯がついたままになっている。
誰も人がいない昼なお暗い切り通しで、吹き抜けていく風に鳴る大きな葉擦れの音を聴きながら、ポツンと葉叢の間に灯っている街灯を見ていると、だんだん時代劇や昔話などに出てくる「行灯(あんどん)」に見えてくる。
中の油皿の火がふっと消えて、暗闇から鎧武者や山姥や鬼が現れたりするかもしれない。
人けのない真昼の薄暗い切り通しを行灯に見守られながらゆっくりと歩いた。しばらく切り通しのふもとで佇んでいると、汗だくの体に切り通しを抜けていく強い風が本当に心地よい。
猫間英介
noteに投稿し始めて間もない今年の1月に、鎌倉の7つの切り通しの中で最も急な坂(というよりも崖?)の「化粧坂(けわいざか)」の切り通しについて探訪記を書きました。(化粧坂は鎌倉で最も怖い切り通し[私見])
鎌倉の短歌を集めました。
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