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【短歌一首】 そっぽ向くつがいの鳩は橋の上不意に飛び立ち東へ西へ

そっぽ向く
つがいの鳩は
橋の上
不意に飛び立ち
東へ西へ

東京のJR中央線・吉祥寺駅を降りて神田川の上流付近を歩いていると、二羽の鳩が橋の上にいて、クッククックとしきりと鳴きながら、体を寄せ合ったり、お互いをくちばしで突っつきあったりしていた。

橋の上の鳩

橋の上の二羽の鳩はおそらく「番(つがい)」(=夫婦)と思われる。鳩は一度できたつがいの関係を永続させることを多いらしい。どちらがオスでどちらがメスかは分からなかったが、自分の人間の行動バターン観察の経験則から勝手な想像をすると、羽が黒い方がオス、白っぽい灰色がメスという見立て。

雲行きが怪しい二羽

しばらくはぴったり寄り添ったり、鳴きながら触れ合ったりしていた二羽だが、だんだん雲行きが怪しくなってきた。(勝手に)メスと思われる一羽の羽が毛羽立ち、お互いに相手から少し距離を置くようになる。

ソッポを向き合う二羽

そのうちに、二羽はお互いに完全にソッポを向いてしまい、二羽の間にはしばし沈黙の時間が流れる。少しするとメス(と思われる一羽)が不意に飛び立ち、どこかへ飛んでいってしまった。

橋に取り残された一羽

一羽が飛び去った橋の上で、(オスと思われる)もう一羽はやや茫然自失気味?
丸く目を見開いてメスのいた方を向いている。 
この様子はまさに、「鳩が豆鉄砲を食ったよう」というやつだ。なるほど言い得て妙。

鳩が豆鉄砲を食ったよう
=突然のこといびっくりして目を丸くしているさま。

明鏡国語辞典
橋桁の下にいる一羽(オス)

そのうち橋の上の残されたもう一羽もどこかへ飛び去って行ったが、少しすると橋桁の下の川に降りる足場のところで大きな鳴き声を上げていた。去っていったもう一羽を呼んでいる慟哭か。

一羽ただずむ鉄杭の上

あとでちょっと調べてみたら、鳩は巣を作る場所はオスが決めて巣材を運ぶらしい。岩棚や岩の割れ目に巣をつくる種もあるというから、このつがい(と思われる)二羽の鳩たちもそのケースかもしれない。

勝手に人間に当てはめると、大きく3つの可能性があるのかも、と想像を膨らませてみた。
① 夫婦の一方から他方に対して「三行半」を突きつけて、一方が去っていった。
② 夫婦でそれぞれの役割を確認したのち、一羽は餌や巣の材料を取りに行き、もう一羽は巣作りの場所を探している。
③ そもそも夫婦ではなく、これからお互いに一緒になるかを確認しあっていたが、話は決裂して別れた。

鳩も人間もそれぞれにいろんな事情がある。外野は勝手に言いたいことを言う。

猫間英介


生き物についての短歌をまとめました。




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