見出し画像

【短歌一首】 夕闇に店の灯りは誘蛾灯ふらふら虫と男呼ばれる

夕闇に
店の灯りは
誘蛾灯
ふらふら虫と
男呼ばれる

夕暮れ時になると、街の店のネオンに一つまた一つと灯りが入る。

この時間に街を歩いていると、夜の営業に向けて準備する飲食店の活気が店の中から伝わってくる。マスター、大将、女将、料理人、従業員、アルバイトたちの最終確認をする声や、厨房での仕込みの音、お店で流れるいろいろなジャンルのBGMなどが開放された扉や窓の向こうから聴こえてくる。料理のいい匂いも湯気や煙とともに漂ってくる。

夕暮れ時

夜の街に繰り出してくる人々の姿もどんどん増えてくる。特に男性の姿が目につく。
一日の仕事から解放されたスーツ姿、Yシャツ姿の男たちが嬉しそうに談笑しながら、吸い込まれるように色々なお店に入っていく。居酒屋、寿司屋、定食屋、ラーメン屋、スナック、バー、カラオケボックスなどにどんどん吸い込まれていく。本当に嬉しそうだ。すでに酔っ払っている人もいる(ハッピーアワー利用か)。

特に夕焼けが美しい日

特に、天気が良くてわりと空気が清々しい日で、さらに夕焼けが美しかったりする中で、お店の灯りが輝き出すと、虫が誘蛾灯に吸い寄せられるかの如く、男たちは明かりに吸い寄せられていく。

自分はあまり酒を飲めないが、その気持ち、とてもよく分かる。昼間の仕事でのストレスが緩み、腹が減り、喉が渇いてきたところに、夕闇の中に誘蛾灯。これはなかなか抗うことができないのだろう。 

日は暮れてゆく

そういえば、最近は減ってきているだろうが、昔、会社で、昼間、あきらかに仕事をしていないオジサンたちが、夕方になると嬉々として元気になり、終業後に飲みに繰り出す姿をよく目にしたものだ。そういう人たちは毎日ルーティンのように飲みに行っていた。 自分が会社に入った時の最初の上司もそんな感じだったな。ビールのことを「泡の出る水」と言っていた。

だんだん夜になっていく

人間の習性なのか、酒呑みの習性なのか知らないが、狭くて雑然とした路地裏の誘蛾灯を人はより好むようだ。確かに、飲み屋は大通り沿いよりも、路地裏、しかも薄暗い方が夜にいい雰囲気が醸し出されている場合が多い。

のれんの向こうは別世界?

仕事帰りにまっすぐ帰宅せず、友人や家族とではなく、昼間も一緒にいる仕事関係者と一杯飲む。いや一杯というより長々と深々と飲んでしまう。これは世界的に見てもかなりマイノリティらしい。

それぞれが身体に注意しながら、周りに迷惑をかけずに、散財し過ぎないように、気持ちよく楽しく飲めばそれでいいと思う。(酒呑みにはこれが極めて難しい。)

最近、友人と会うときは、夕方や夜の飲みではなく、休みの日の昼間とか午後の早い時間に食事やお茶をメインにすることが多くなっている。昼間でも酒を飲むこともあるが、夜よりもずっと話が面白い。夜だと酒が入った瞬間に脳が麻痺して、自分も相手ももう何十回(下手すりゃ何百回)も聴かされた話をお互いにしてしまうが、昼間の方が頭もクリアでじっくりとまともな?話をすることができる。

飲み方は変わってきているが、それでも夕闇に光る誘蛾灯はとても美しい。

猫間英介



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?