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映画「かもめ食堂」|感想

かもめ食堂 Ruokala Lokki

リンクがことごとくエラーになるのでDVDを貼りましたが(アフィリエイトじゃないです汗)、Netflix・PrimeVideo・U-NEXT・Huluで視聴可能です!
隠れた(もはや隠れてない)名作で、根強いファンがいる「かもめ食堂」。かく言う私もその1人で、もはや何度目か分からない鑑賞でした。


ざっくりあらすじ

舞台はフィンランドのヘルシンキ。主人公サチエはここで食堂を開いて1ヶ月になるが、閑古鳥が鳴く日々を過ごしていた。ある日、街で偶然出会った日本人観光客ミドリに食堂を手伝ってもらうことになり、店は次第に賑やかになっていく。さらにマサコも仲間に加わったことで、ヘルシンキの人々とのささやかな交流が花開いて......
というお話。

フィンランドが舞台なだけあり、出てくる食器やファッションはもちろん、漂う空気感までもがお洒落で可愛らしく、洗練された映画です。肩の力がいい具合に抜けた、北欧らしいのんびりした時間が流れています。
主人公もゆったり構えた飾らないキャラクターなので、彼女の心の余裕をお裾分けしてもらえるような気分になります。


ネタバレ含む感想

この映画を見ていつも思うのが、20年近く前の作品なのに古くさくなくて、センスが素晴らしいなぁということです。
食器や洋服のデザインが古びれないのもそうなんですが、地味にすごいのが、時代を感じさせるモノ・言葉・価値観が見当たらないことです。例えば携帯電話とか一切出てこないし、「外国で女1人で食堂なんて......」みたいなセリフもない。
制作側が意図していたことなのかは分かりませんが、そういう"時代に紐づいた事柄"が描かれていないからこそ、これから先どんな人が見ても楽しめる普遍的な作品になっているんだと感じます。


登場人物同士の距離感も好きです。
サチエもミドリもマサコも、何か理由があってフィンランドにいるわけですが、お互いの事情には特に踏み込みません。詮索したり、お節介焼いたりはしないんです。
とても印象に残っているのが、サチエのご飯を食べて涙するミドリに、サチエが無言でティッシュを渡すシーン。サチエは驚いた表情はするし、心配そうではあるけど、「どうしたんですか?」とは聞かないんですよね。ミドリも何も言わないし。無理に話をさせず、無理に話さずな距離感。人生、何でも話せば楽になるってもんじゃないもんなぁ、、こういう沈黙に救われることもあるよなぁ、、とじんわりきてしまいます。
もうひとつ印象的だった場面は、マサコのロストバゲージが見つかったため、日本に帰ってしまうのだろうかと残念そうに言うミドリに、サチエが「本人にしか分からないことですし。どちらにせよ、私たちはマサコさんが決めたことを喜んであげないといけませんよね」と言うシーンです。すぐ後にミドリに「もし私が日本に帰ることになったら寂しいですか?」と聞かれてもサチエは「ミドリさんにはミドリさんの人生がありますし」と言います。この"自分は自分、相手は相手"というリスペクトと、ある種のドライさが、軽やかで心地良いです。

「かもめ食堂」は、登場人物を無理にぶつかり合わそうとはしません。
サチエ、ミドリ、マサコはぶつかり合わない代わりに、そっと手を差し伸べ合います。これも別に人情味あふれるものではなく、利害が一致したというだけのさっぱりした助け合いですが、この助け合いがじわじわと話を展開させていくのが面白くて巧みだなぁと感心させられます。
のんびり屋で飄々としたサチエの食堂に、不器用だけど思い切りの良いミドリが変化をもたらして、マサコの懐の深さによりヘルシンキの人々との交流が生まれていく。
上手い例えが思い浮かばないのですが、サチエがひとりで歩いていたところ、ミドリという自転車があったから乗ってみたら、マサコという風が追い風を吹かしてきたみたいなもんですかね。サチエはひとりでも歩いていけるのですが、ミドリとマサコに出会ったことでちょっとパワーアップするんです。伝わるかな?笑
何が言いたいかというと。一般的な物語なら、登場人物たちの気持ちをぶつけ合わせて本音を吐露させることで話を進めたりするのが定石なんじゃないのかと思うのですが、「かもめ食堂」はそういうことをしなくても話が進んでいくので、すごいね!ということです。ドラマチックな展開なしに面白くするってとても難しい気がするので、制作陣の手腕が光ってるなぁと思います。

この映画を初めて見たのは確か小学生くらいの時だったのですが、その当時はこのささやかな物語の意味がよく分からなかった覚えがあります。何の話だったんだ?と思ってました。
でも今なら分かりますが、別に何の話じゃなくてもいいんです。人間がごはんを食べて静かに暮らす、その日常を見て癒されるだけでいいんです。
心をほぐしてくれるこういう映画って、地味だとしても私には必要だなぁと感じました。おにぎりみたいなものかもしれません。「かもめ食堂」というおにぎりをたまに食べて、ハラゴシラエして人生歩いていきたいと思います!(まとめが雑)


おまけ:かもめ食堂ぽい絵文字並べてみた
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