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ジブリ「君たちはどう生きるか」|感想①

君たちはどう生きるか The boy and the heron

前置きが長いので、感想だけ読みたい方は目次をポチッと押して飛んでください。

観に行くまでの話(ネタバレ皆無)


ついに観てまいりました🥹♡

1枚のポスター以外、一切の前情報がなかった「君たちはどう生きるか」

鈴木敏夫プロデューサーは「僕たちが子どもの頃は、ポスターとタイトルだけで内容を想像していた。それをやりたかった」とテレビ取材で仰っていました。
現在ではなかなか難しいことですから、これはとても貴重な経験になるぞ!とずっとずっとワクワクしていました。
何より、引退を宣言してらした宮﨑駿監督の作品がまた観られることが嬉しくて嬉しくて、、
ジブリ大・大・大好きなので、夢にまで見た新作公開でした。

公開から11日間、ネットニュースなどの記事も見ず、SNSも開かず、評判も聞かないようにするのは大変でしたが、そのぶん心躍る映画体験になりました。

***

ところで皆さんはあのポスターからどんな物語を想像しましたか?

白と青で、クチバシがある、鳥の絵。鳥のはずなんだけど、なんかクチバシの下に目がある。。
それにタイトルは「君たちはどう生きるか」。これまでのジブリからすると珍しい、問いかけ型。タイトルというよりキャッチコピーみたいな。
これは小説『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著/1937年)に由来するもので、でも中身は全くの別物だという報道は事前にありましたね。

私はジブリ作品のなかでもファンタジー色が濃いものが大好きなので、鳥がしゃべったり鳥と一緒に飛んだりする話だと楽しそうだな、あるいは宮﨑駿監督のことだから飛行機は出てくるかもな、と考えていました(想像力の限界)。
でももしファンタジーだとすると「君たちはどう生きるか」という現実的でメッセージ性の強いタイトルとは合わないなぁ、なんて思ったり。

何にせよ、ジブリなんだからきっと楽しいだろう!たとえ内容が好みじゃなかったとしても、絵は素敵だろうから!と、ウキウキ映画館へ出かけました。
この時間ってほんと楽しいです。








さて、ここからネタバレあり地帯に入ります
知りたくない方はご注意ください。











絵文字で内容紹介(ネタバレ少し)

まず、若干のネタバレです。
どんなジャンルの話なのかと主人公を文字で、出てきたものを絵文字で、羅列して紹介します。
これだけじゃ意味は分からないと思いますが、興味を持つ方が少しでも増えることを願って書きますね。







ジャンル:ファンタジー。現実と異世界の境目があるタイプ(強いて言うなら「千と千尋の神隠し」系)
主人公:眞人(まひと)。少年。

🌏🪖💥🔥🏃🏻
🧳🌲🏯🏡🌳👵🏻
📚📖🐦🙎🏻‍♂️🏹🏰
🌱🦤🦤🦤🦤🪦
🌊⛵️🐟
⚪️🎇
🗡️🦜🦜🦜🦜🔪🔥
🧻🌪️
🧙🏻‍♂️🪨○△□🦜🗡️🌌
🌳🏡🏯🌲🧳

こんな感じです。
これだけじゃ分かりませんねw

子どもでも楽しめるような親しみやすさはありつつも、すごく深い話で、ジブリらしさが詰まった大作でした。宮﨑駿ワールドだぁあ🥹♡ってなりますよ。







感想(ネタバレあり)

前置きが長くてごめんなさい。
それでは感想に移ります。
他の方の感想や考察をまだ拝見していないこともあり、考えがまとまっていなくて、読みづらい文になってしまいました、、
でも自分が感じたことを素直に書いたので、読んでくださると嬉しいです。






いやぁ。好きでした。
正直、一度観ただけでは理解し切れなくて。でも、たくさんのものを確かに受け取りました。
これから先何度も何度も観ていく中で、やがて自分の腹に落ちていく作品だろうと感じます。こんな含蓄のあるファンタジー大作を、20歳を過ぎた今、こうして映画館で観られたことを幸せに思います。


理解し切れなかったなりに、あれこれと考えました。そして帰り道に思ったのは、「君たちはどう生きるか」は宮﨑駿監督の「祈り」なのかも、ということです。

過去のものだと思っていた戦争が起こり、きな臭い世界情勢に不安と警戒が煽られる現在。
平和を望む人はたくさんいるはずなのに、私たちの手が届かないところで、世界は勝手に動いていく。平和など夢物語だったのか、と諦めがつのることもあります。
どうにもしようがなくて、思い通りにならない。でも私たちはこれからも生きていくしかありません。

そんな世界で、どうか皆が顔を上げて生きていけますように。

そんな「祈り」の物語だったと思いました。
私たちひとりひとりが、それぞれの人生を懸命に生きていって、その生きざまの結晶が「世界」になるのだから。

***

不思議なものの解釈

今回、かなり不思議なものがたくさん出てきたので、ちょっと解釈してみます。

婆やたち
背が低くて頭が大きい不思議なおばあさんたちでしたね。初めて出てきたとき、眞人にしか見えていない小人か何かかと思いました笑。
かなりデフォルメされているのは、「現実と異世界をまたがる存在」であることを示しているのかもと考えています。あっちの世界で助けてくれたキリコさんを初めとして、他の婆やもお人形になって眞人を守ってくれていたので、どうも普通の人間ではなさそうな気がしています。

『君たちはどう生きるか』
1937年出版の本なので、眞人が5歳あたりの時にお母さんが買っておいてくれていたのでしょう。「大きくなった眞人くんへ」という文字が、母の愛を感じさせます。
眞人は読んで泣いていました。もしかしたら、本を読むことで心境に変化があり、異世界への旅に踏み切る勇気が湧いたのかもしれません。

【2023/8/11追記:小説を読み、ジブリ版と絡めて感想を書きました。こちらも是非↓】

わらわら
白くてかわいい謎の生命体。魚の肝?をエネルギーにして膨らみ、天に昇っていって、現実世界で赤ちゃんになるとのことでした。昔はまさに「赤ちゃんはあの世から来る」という考え方があったので、それを表しているのだと思います。

産屋での出来事
前述の通り昔は「赤ちゃんはあの世から来る」と考えられ、「出産=穢れ」とされていたので、産屋に立ち入ることは禁忌なんでしょうね。
ただ難しいのが、紙が巻き付くシーン。ナツコさんが眞人に「あなたなんていなくなれ」みたいなこと言ってましたが、あれがナツコの本心なのか、はたまた眞人の潜在意識なのか分かりませんでした。
また、そもそもナツコが異世界に吸い込まれた理由もよく分からない。。眞人を釣る餌にされちゃっただけなのでしょうか?

インコ
カラフルで害のない印象なのに、あまりにも凶暴でびっくりしました笑。
そんなインコたちは「人間の写し鏡」かなと思いました。インコって人間の真似をしてしゃべる性質があるので、あの異世界では"人間の現実世界での振る舞い"を真似ているのかもしれません。

ヒミ
なんと少女時代のお母さん。
婆やたちの話によると、お母さんは小さい頃に行方不明になり、1年後にそのままの姿で帰ってきたとのことです。ヒミはその時のお母さんなのでしょうか。。
なぜ眞人と少女時代のヒミが出会えたのかがよく分かりませんでしたが、「死ぬとしても現実に戻る。あなたを産めるのだから」とさっぱり言い切る場面は泣けました。

***

◇眞人のキャラクター性について

空襲警報のサイレンから始まったときは、思わず身構えました。 
火の手が上がるなか、眞人(まひと)は大人の指示を聞かず、迷わずお母さんを助けに向かいます。人混みが亡霊のように黒くゆらめいていて、眞人の不安を表しているように見えました(ジブリにしては珍しい作画な気がしました)。
そして、まだ幼い眞人を突き動かしているものは母への思慕強い責任感なのだろうな、と思うと涙が出てきました。(開始2分で泣いた人←)

眞人のモノローグで、母の死が淡々と語られます。
父は間もなく再婚。相手は、やけに艶っぽくて、既に妊娠中の女性。お母さんにそっくりなその人は、お母さんの妹・ナツコでした。
戦争で夫を亡くした女性が夫の兄弟と再婚するということはよくあったそうですが、妻の姉妹と再婚するパターンはどうだったのでしょうか。。
眞人の心境は語られませんが、複雑な気持ちだったと思います。それでも礼儀正しい姿が、眞人らしいというかなんというか。

夢には何度も、火に巻かれるお母さんが出てきます。母の死が眞人の心に深い傷跡を残していることが分かります。
お父さんはというと、あっけらかんとしていました。軍需で工場が潤い、美しい後妻も得て、満足げ。お母さんのことなど忘れてしまったかのようでした。さらに、「車で乗り込む転校生なんてすごいぞ」という発言で、謙虚さや配慮とは無縁の人柄であることが察せられます。
そんな父を見ていて、眞人は寂しかったはずです。頭に自分で傷をつけたのは、「お父さんに心配してもらいたい」「自分を見てほしい」という気持ちの表れなのかもしれないなと思いました。責任感が強い眞人のことだから、そうすることでしか甘えられなかったのではないでしょうか。

眞人はナツコに対して丁寧に接しますが、心は開いていませんでした。あくまでナツコは「お父さんの好きな人」。ナツコに母の面影を何度も見ながら、何を思ったのでしょうか。。
それでもナツコが失踪したとき、眞人は迷わずに探しに向かいます。それはきっとお父さんのためでもあるでしょうし、アオサギの「死んだなんていかにも人間が考えることだ」という言葉が気になっていたからでもあると思います。それから、「ナツコを助けることで、母を助けられなかった無念を晴らしたい」という気持ちもあったのではないかと想像します。

ヘンテコな異世界に迷い込んでも、眞人は不安がったり驚いたりせず、「ナツコさんを助けなきゃ」と淡々と進みます。意地悪なアオサギを助けたりもします。そのしなやかさ優しさ受容力適応力生命力。。あまり多くを語らず、感情を表に出さない眞人が、内側に秘めている強さ。。めくるめくファンタジーの世界でも、眞人は地に足がついている
その子どもらしからぬ姿を頼もしく思うとともに、私の胸はギューっと締め付けられました。。

***

積み木と、現実世界に帰った眞人

異世界の設定が難しすぎて、まだ分かっていないことが多々あるのですが、取り急ぎ積み木の意味と、眞人が現実に帰ることを選んだ理由を自分なりに解釈してみたいと思います。


眞人は、大おじさまの積み木の塔に新しいピースを加えられる人間です。
大おじさまを継げば、眞人はあの世界の権力者になれるのです。世界が安定するも壊れるも、眞人がどの積み木をどう添えるかで決まる。自分の考えで、世界を作っていける

でも眞人は断ります。自分でつけた頭の傷を指して、「これは僕の悪意なんだ」と言ってました(確か)。
「自分は分不相応だ」と言っているようにも解釈できますが、私は多分違うと思っています。
眞人は、自分の力を過大評価も過小評価もしていない。ただ、「世界はひとりで操るものではない」と分かっていたから、断ったのだと思います。

たったひとりの力で世界を変えることはできません。
頭が良いという大おじさまでさえ、世界を手にしながらも、まだ道半ばだと自分で言います。現に、大おじさまの世界では凶暴なインコが幅を利かせています。
「現実に戻ったとしても世界はあんな風だ」みたいなことを大おじさまは言いました。たしかに現実世界では戦争が起こり、眞人は母を失い、芋でかさ増ししたご飯は美味しくない。現実では不条理なことがたくさん起こります。
異世界でなら、眞人の努力次第で、そんな悲劇が起こらないようにできるのかもしれない。。

それでも、きっとひとりではできないし、してはいけないのだと思います。
ひとりで世界を完璧にしようなんて、独裁と隣り合わせのはずです。たとえ眞人が大おじさまの世界を継いで、争いのない完璧な世界を作ったとしても、それは眞人のエゴでしかない。
どんな世界にも暗い部分があります。全員が同じことを考える世界、誰も対立しない世界などない

だから眞人は現実に戻って、苦しいことも不条理なこともある世界で生きていくことを決めたんだと思います。思い通りにならないのが世界だし、ひとりではどうにもできないのが世界だから。
その中で、もがいて生きていくのだ。希望などないように見えても生きていくのだ。


そんな話だったのではないかと私は感じました。



まとめ

自分が何を言っているのか分からなくなってきました、、笑

まとめると。
「君たちはどう生きるか」は、「思い通りにはならない不条理な世界で、みんなが前を向いて生きていけますように」という願いが込められた作品だと私は受け取りました。

「君たちはどう生きるか」はメッセージ性はあるものの、「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」あたりと比較すると直接的ではありません。
それが穏やかで、どこか切なくて。。
やはり私には「祈り」に思えて仕方ありませんでした。

素晴らしい映画でした。

ただ、やはり一度観ただけではよく分からい部分が多かったので、また観に行こうと思います。それもまた一興。