名門大学への憧憬と隘路

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名門大学への憧憬と隘路

生き残る大学と早慶を目指す大学、そして名門大学への改革について(一部分割愛)

文責:飯島俊雅

 1.一般的な現状について

 2022年厚生労働省の「人口動態統計」によると、年間出生数は初めて80万人を割れる見込みで、7年連続で過去最少を継続することになる。そもそも「日本の将来推計人口」によると、出生数が80万人割れとなるのは2033年で政府や公式機関の予想値より11年も早いスピードで少子化が進んでいる。一方、文科省の「学校基本調査」によると、大学は795校、専門学校が2779校ほどある。大学の定員は約60万人で専門学校は約28万人である。

  当然、大学の危機に関する言説が巷に膾炙して久しい。今の世界情勢や日本の未来など鑑みるとこのような危機は大学だけでなく、日本社会全体に関する議論も必要になるのだが、文化領域で価値体系の危機という意味において大学の危機は日本社会全体の危機とパラレルでもある。しかしながら、ここでは、まず、全体論的な議論は省いて、大学の危機に関する問題を浮き彫りにしつつ、その危機を如何にしてチャンスへと転換できるかについて焦点を合わせることにする。

 2.大いなる錯覚の狼狽[1]

大学の危機をチャンスへと転換するのは大学の改革によって可能である。それについては3項と4項で考えることにし、一先ず、日本の大学の中でそのチャンスを成功へと導いたと目されたいくつかの大学について確認して置こう。

 まず、会津大学は1993年開学。前身は福島県立会津短期大学で、日本初のコンピュータ専門大学である。学士論文からすべて英語記述が求められる。江戸時代の会津には、日新館という輝かしい伝統の藩校があり、会津は教育熱心な藩として知られていた。しかしながら、会津地域には4年制大学がなかったため、福島県は、この教育熱心な会津地域に、新たに県立の4年制大学を設置することとなる。大学の設置に当たっては、国際化、高度情報化社会が進展する中で、世界的視野を持ち、将来の情報科学を担い、発展させる人材の育成が最も重要であると考え、コンピュータ理工学に特化した大学とし開学した。2019年「THE 世界大学ランキング」の日本版において780大学中26位(総合)、世界各地の60以上の大学と単位互換協定を結ぶ。Microsoft Windowsシリーズのソースコードの研究利用も過去に認められていた。窓の杜など、Open Source提供のミラーサイトも運営。

 地域的な特性と時代的な背景(IT)を上手く組み合わせ、そこに国際化を進めるなど、一定の成功を収めたことは間違いない。偏差値は47.5で、中堅の技術者の養成に成功したといえよう。

 次は、国際教養大学は2004年開学し、教育理念は、英語をはじめとする外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養、グローバルな専門知識を身に付けた実践力のある人材を養成し、国際社会と地域社会に貢献することとかかえている。卒業要件には最低1年間の海外留学が必要であり、教員の55%が海外国籍で、グローバルビジネス課程(経営学)とグローバルスタディズ課程(国際関係論)の2つの専攻を有する。日本の三大都市圏から学生の約半数が集まる。各教室には一般企業による命名権購入により、その企業名が付けられている。300名の収容ホールは神戸製鋼が購入、コベルコホール。

 この大学の今の偏差値は67.5であり、まさに名門大学の範疇にも分類される。基本的には、ハーバード大学が全人的な牧師を育つためのリベラルアーツ、つまりエリート教育を行い今の名門になったように、同じく教養を重視し、それに国際化(英語教育を含む)に成功したと言える。国立でもあるので、そもそも国際化が進まない諸国立大学を比肩する大学づくりの計画通りの予算を駆使しつつ、教授と学生の水準を上げるための順スパイラルとして先に教授の水準を上げたことになる。40か国を超える国と地域から集まる留学生が5人の1人であり、殆どの授業を英語で行うまさに国際基準の大学に成長した。但し、国と企業の合作でもあるので、他の大学には到底できない予算と力が作用したことは否めない[2]

 また、金沢工業大学は1965年開学し、教育付加価値日本一の大学を目指す。入学時と比べた卒業時の力の成長を重要視していることから、学生がこなさなければならない課題が多い。その成果が評価され、地方にありながらも常に高い就職率を維持する。建学綱領は人間形成、技術革新、産学共同で、「夢考房」という作業場で、技術講習を受ければ自由に機材を利用できる環境が整備された。「ライブラリーセンター」(LC)は工科系専門図書館としては世界最大級であり、蔵書数は50万冊を超える。

 この大学の偏差値は、建築学部は47.5だが、電気電子工学部は37.5である。建築や工学分野に特化した大学で社会に出て即戦力で使える技術者を育てる大学である。ロボコンなどの評価は高く、ものづくりに特化したため、偏差値はそれほど高くないにしろその評価と就職率は高い。

さらに、高知工科大学は、1997年開学し、高知県初の工科系大学である。学生による授業評価や研究業績を直接的に教員評価教員処遇に反映させる教員任期制再任制度など、従来の日本の大学の慣習とは一線を画した尖端的なトップダウンで運営する。現在の学群は、システム工学群、環境理工学群、情報学群、経済・マネジメント学群の4学群にて運営。総合研究所や地位連携機構も存在し、脳コミュニケーション研究センターなども存在。図書館もスペースにより24時間開放している。

 公立大学になり偏差値30台の大学から42.5から50に。教員評価システムがある意味においては改革に一つの目玉になる。その良し悪しはさておいて。技術科学系大学として就職率も高くなり、主要企業就職率も大きく向上したが、キャリアとか昇進組というより、中堅技術者の排出が一つの成功要因ともいえるだろう。

 その上、京都先端科学大学は、2019年、改名により総合大学として開学した。前身は京都学園大学で、偏差値も底辺を這っていた。理事長に日本電産の永守重信氏が就任し、ここから徹底的に大学改革を行う。建学の精神の実践し、「未来社会を支える人材は、多様な価値観の存在する世界で活躍」する。具体的には、複雑で複合的な問題に挑戦できる人材を育成するために、5学部11学科5研究科を設置し、総合大学になった。経済経営学部、人文学部、バイオ環境学部、健康医療学部、工学部など。2030年度に医学部開設を狙い、荻生田文部科学大臣に打診した。

 この大学は俗にビジネスマンが立て直した典型的な大学になる。偏差値は42.5で必ずしも高いとは言えないが、理事長の就任後、志願者が前年比6割以上も増加した。世界一のモーターメーカーの元社長が理事長になり工学部を新設したことがその理由ともいえよう。それに、ここも上の成功例と同じく英語力をアピールした。そうすることで就職率も上げてきた。財界の有名人なので、政界とも深いかかわりもあると思われるがこの理事長効果を続けてその評価を保つかはこれからのことになる。

 最後に[3]、文科省の教育改革としての進まれている大学院大学である。例えば、沖縄科学技術大学院大学、北陸先端科学技術大学院大学、総合研究大学院大学、奈良先端科学技術大学院大学、政策研究大学院大学などである。これらの大学院大学は、著名な教授陣が豪華に並ぶ。通常の大学では配置しないレイヤーのハイスペックな教授陣による先端科学、先端技術の研究が国家予算レベルで実現した。

 3.価値体系の形式的転倒と希望の言説の陥穽

 ここでは教育に関する本質や概念について議論する暇はなく、人間社会とともに歩んできた再生産システムであるとだけとどめておく。一般的に、良い教育を受け、良い仕事に就いて、幸福な人生を送るといったサクセス・ストーリの言説を強いる。その一方で、学歴信仰や受験戦争、不平等の再生産などといったネガティブ言説も根強い。いずれにせよ、教育を通じて形成される諸価値体系は当該の社会の最終審級としての支配の体制に組み込まれる。革新的なパラダイムの転換なしでこの価値体系は再生産を促されることになり、さらに深化する。その為に教育は100年大計といわれ、その担い手は、善し悪しはさておいて、当該社会の在処を在らしめる貢献(共犯)者にならざるを得ないのである。大学は教育制度のハイアラーキーにおける最高峰であり、完成である。

 既述したように、大学の危機が叫ばれて久しいが、国家の繫栄よりは保身に走る公務員、教育の遠大な夢を忘却した教育の担い手等により、日本の教育や大学は廃れていく一方である。紙面上、100年の大計をその前提に置きつつ、廃れていく大学経営をどのようにして生き返らせるか、いや、どのようにして大学を名誉ある最高峰として作り上げるべきかについて議論を進めていきたい。

 議論を単純化してしまうと、結局は大学の危機をチャンスに転換していくということは、学生募集から始まる。つまり「量」である。残念ながら、これが出発点になる。どころで、国立・有名大学は学生募集には全く問題もなく、常に「質」の向上を狙うことになる。量が減っていくのは既知のファクトなので、量を増やす戦略は生き残る大学や早慶を目指す大学の近視的な戦略であり、時がたつにつれて破綻することは容易に予想できよう。つまり、大学改革は名門大学を目指すことに尽きる。全国の2000進学校の進路指導教諭のアンケートによると、改革力が高い大学のトップは近畿大学である。志願者が4年連続で日本一に輝いた。この10年間で志願者数は倍以上に伸ばしたと。大学を選ぶ理由は人それぞれながら、多くの学生が知名度、偏差値、就職率などを第一に考えるといわれている。この点で近大は明治大学や早稲田大学、日本大学などといった関東の有名マンモス私大だけでなく、「関関同立」という関西私立のトップ校を押さえるという大奮闘を見せている。

 近大は何を改革したのか?総合社会学部、建築学部、国際学部を次々と設置してきた。国際学部は語学教育で評価の高いベルリッツとタイアップし、開設年度から人気を集めた。国際ビジネスで活躍するグローバル人材育成を目的とし、入学後、半年間は少人数の語学教育や海外のことを学び、1年生の後期から2年生の前期まで1年間留学するのが必須だ。現在は留学中の学生の映像をホームページで公開中。改革力だけでなく、広報力の高さも、その特長として挙げられる。

 さらに、2020年の完成を目指して、メインキャンパスの整備も進む。今年は5つの建物からなる、アカデミックシアターが竣工した。2400席用意される24時間オープンの自習室、蔵書の3割がマンガという画期的な図書館などもある。研究力の高さも注目されている。クロマグロの完全養殖、ウナギ味のナマズの開発など、水産研究所の研究成果を、受験生や保護者にわかりやすく伝えたことで、注目度が高まった。卒業生のつんく♂がプロデュースした入学式も大変な話題だ。入試の面でも日本で初めて完全ネット出願に切り替えている。このような多岐に渡る改革が受験生の支持を集め、高校の進路指導教諭にも高く評価されたと見られる。

 2位は立命館大学で、他大学に先んじて改革をスタートさせた「大学改革のフロントランナー」。学部の新設、新キャンパスの設置、付属校の拡充など、学園全体で取り組んできた。近年でも2015年、大阪のJR茨木駅から徒歩5分の地に、新しく大阪いばらきキャンパスを開設した。経営学部と政策科学部を移転させ、2016年には総合心理学部を新設し人気を集めた。来年には滋賀のびわこ・くさつキャンパスに、食マネジメント学部の新設し、15番目の学部となる。3位は東京大学、4位は京都大学である。両方とも新入試制度が評価されたようだ。2位以下は学部や学科の新設、入試方式の多様化、教養科目の設置、英語の生活化教育など教育面の改革などが行われてきた。

 しかしながら、以上の大学の改革は、そもそも名門・有名大学の様々な制度と教育における時代的な流れを汲んだ改善策と言えるが、果たして改革力というほどの革命的な変化とは言えず、100年大計といった教育の本質からしたら、当然の流れとして評価せざるを得ない。前項で確認したように、大学改革の成功例は、国や企業からの支援による予算の豊富さ、グローバル化を掲げた英語力の向上、地域活性化と絡む戦略の策定、時代的や地域的な外部要因の解決策、就職率の向上、特化教育への尽力、そしてマーケティング、ビジネスのできる理事長や組織等などを挙げることができる。そういった意味において近大はこれらの要因を上手く活用した成功例としてみることができよう。さらに以前の医学部の新設は今になって力を発揮しつつ、名門大学としての立地を強めていると思われる。しかしながら、いずれにしても、既存の先生たちによる既存の評価による改革力のランキングからは真の大学の改革について垣間見ることはできず、資本力のある会社が新製品を当然のように開発する仕組みとパラレルであり、言説の陥穽として見えてくる。メタ理論としてのディスコースで言えば、価値体系の再生産であり、その善悪の判断は保留せざるを得ない。それでは、次は「2045年問題」を軸にして、我々の社会がどのように変貌していくかを顧みながら、教育の本質や大学の在処について鳥瞰してみたい。

 4.Nomadの放浪からDiaspora的Cosmosへ

 「2045年問題」というテクノロジカル・シンギュラリティを迎えると、かつてなかった徹底的な管理社会になると言われている。そうなると、苦悩する市民より、自由な奴隷ともいえる従順な国民をほとんどすべての人々が選ぶことになる。自由で平等という幻想を信じつつ、見え隠れする管理社会の網の目は見ぬまま。つまり、この様な社会が深化、いやもっと徹底化するのがシンギュラリティ以降の社会であると考えられる。しかしながらこのような呪縛は、エリートが善良な公僕として、かつて有閑階級が学問や文化を遊び戯れたように、全構成員が獲得した暇を謳歌できるようなパラダイムの転換によって、解かれる夢と希望を見据えてもいる。これら新有閑階級はボーダレスの世界をノマドが行き来するように、ディアスポラしつつもいつでもどこにでも旅行や文化活動、学習活動などが仕事になるかもしれない。そのような仕事が游学になり、殆ど全ての民衆が游学階級になり、好きなことを制限なく、自らが選び遊び戯れるだろう。さらに、ポストコロナにおいてはソーシャルディスタンスが消費者行動パターンを変えてしまい、多くの活動がリモートにおいてもVRやARなどの技術的な根拠によって臨場感あふれるオンライン環境で游学を遊び戯れる。このような技術的な背景は、かつて天然痘やペストなどが齎した社会のシステムの変化とパラレルである。コロナ禍以降も根本的な社会のシステムの変化が齎され、未来に根拠をもつシンギュラリティというパラダイムの変化が加速していく。その世界におけるシステムの一角がまさにディアスポラの游学階級が手に入れるだろう「遊び」である。[4]いずれにしろ、趙管理社会における教育や大学は、コペルニクス的な転換を迎えるだけでなく、AIによる社会的な変貌はまさにパラダイムの転換であるために、この近未来の様相を前提としてすべてを逆算して組み込まない限り、大学改革も生き残れない刹那の栄光に過ぎないのである。

 以上のような近未来を先とって生まれたのがミネルバ大学Minerva Universityである。これは大学の革新ではなく、むしろ大学の破壊的な革命でもある。しかも開学し直ちに名門大学の地に這い上った。ミネルバ大学は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに本部を置く総合私立大学である。2014年9月に開校された。全寮制の4年制総合大学だが、特定のキャンパスを保有していないことが特徴で、学生は4年間で世界7都市に[5]移り住みながら、オンラインで授業を受講する。プロジェクト名の「ミネルバ」とは、ローマ神話の知恵の女神を意味する。ミネルバ・プロジェクトは、ミネルバ大学となる学部プログラムを作成するためにベンチマーク・キャピタルからベンチャー資金として2500万ドルを調達し、2013年3月にはハーバード大学で社会科学部局長を務めていたステファン・コスリンを招き入れ初代部局長を務めた。彼はリベラルアーツの4つの大学の学長を雇い、ミネルバのセミナーベースのカリキュラムの開発を監修した。同年7月にプロジェクトはKGIと提携し、ミネルバ大学を正式に立ち上げた。

 5つのプログラム(社会科学、芸術・人文科学、自然科学、計算科学、経営科学の学士号)のWASC地域認定を受けた。2014年に最初のクラスを承認。学校は、受験者2464人のうち69人を合格にし、29人の学生が入学したため、合格率は2.8%、収率は42%となった。2016年に意思決定分析の科学で修士を提供することにより、大学院教育まで拡大した。大学の講義はすべてオンラインで行われる。授業は1クラス19名を上限とする少数編成のセミナー形式で行われ、教員の講義ではなく、学生同士のディスカッションを中心に進められる。すべての授業は録画されているため何度でも見返すことが可能で、音声が自動筆記で即時にテキスト化されるので、講師からのフィードバックも早く確実になるなど、学生たちの深い学びが効率良く進められるようになっている。成績は毎回の講義ごとに5段階で評価されるので、現時点での自分の理解度などを認識できる。4年間のカリキュラムは、理解の幅と専門知識の深さのバランスがとれるように明確に設計されている。初めに、科学と人文を横断する「心の習慣」と「基礎概念」を導入する4つの「コーナーストーンコース」を受講する。これにより、個人技能である「批判的思考」と「創造的思考」、対人技能である「プレゼンテーション能力」と「コミュニケーション能力」を養う。その後、専攻を決定し、学問を深めていく。4年間で世界の7都市を移動する。学生は生活している場所での社会貢献活動を求められ、現地の問題など異文化体験をすることになる。

  この大学の成功は豊富な予算の確保から始まる。そして多様性に徹底する。世界を行き来しながら実践的な経験的な知識をもとに自分の考える応用力を養うこと。各都市の豊富なリソースを活用し、ワークセッション、著名な文化人との交流、現地の企業、行政機関などとの共同プログラムなどへ参加。様々な文化を、生活を享受することでそもそも文化とは優劣ではなく差であることを共感することで真の国際人や真のエリートを要請する大学になった。ここまでに個人的に興味のあったいくつかの大学の改革について垣間見つつ、一般的に成功と言われる成功例を教育と大学と社会の絡み合いで鑑み、将来的に必要とされるそれをミネルバ大学の例を参考に見てきた。それでは、名門大学として育て上げる意思はあるものの、予算もなく、人材もなく、プランもない大学はどのようにして、生き残れるのか、いや、名門大学への変貌を遂げることができるのかについて、筆者の経験と知見を披歴したい。

 5.偉大なる錯覚への憧憬、そして改革の隘路

 これまで眺めてきたように、大学の改革は単純に大学を改革するのではなく、100年大計としての国の根幹をなす、価値体系の構築であることを述べた。その為に、生き残るとかの低次元の言説でもなく、早慶を目指すという再生産システムという次元の言説でもないことであった。希望の言説としての国家の最終審級を決める価値体系の転換である以上、名門大学を目指すのが大学改革の本質であると考えている。その為の条件というか、その手段については既に述べた通りであるが、その手段というのもそれぞれの大学の内部的な要因によっては一筋縄に決めることはできないだろう。それでも多様性と国際化は共通する目標であると言えるし、改革予算については徹底的なビジネスかを通じて自ら確保できる方法は、教育の最高峰としての大学だからこそできる可能性は多々あるにもかかわらず、今の教授と職員の水準では思いさえも浮かばないと思う。その為に、筆者の大学における、そしてビジネスの個人的な経験から、いくつかの外延的な提案をしながら議論を括りたい。

 筆者はアメリカロス所在のシェパード大学で副総長と理事として勤めながら、大学の改革にメスを入れた経験がある。教鞭を取った時期よりビジネスマンとして経験が長く、徹底的に経営企画を変更させた。まずは、出口戦略を絡めて入口戦略を徹底させ、入学者数を増やした。次に、ディプロマやサティフィケートプラグラムを拡充し短期プログラム参加者を大幅に増やした。さらに、オンライン化を入れてその受講者をもっと増やした。最後に、米国も日本と同じくリカレント教育の市場は甚だ大きい。地域社会の教育プログラムを大学が担うことにした[6]

 しかしながら、日米間の文化の差に加え、日本国内においても地域性と各大学の直面する環境はそれぞれ異なるので、一般的に大学を革新していくための必須だと思われる側面だけを浮刻にしたい。

  先ずは、大学の組織の改編である。すでに行っている大学も多いかもしれないが、大学の経営、つまり、大学も経営していかないといけないが、文科省の補助金に頼りつつ全くビジネス的な効率性をもたない大学がほとんどである。組織の改編を通じて少数精鋭の経営集団を作る必要性がある。

  次に前述した大学の経営的な視点から、自らも儲かる集団に生まれ変わる必要性がある。大学が稼ぐという言葉だけでアレルギーがあるのは当然既知のものでもあるが、生き残るためにも名門大学として生まれ変わるためにも国や自治体に縋るのではなく自ら動かす予算を確保しないといけない。

 また、既に20年前から叫ばれている国際化の徹底である。国際化とは多様性を促すことであり、そのための外国語の修得もその手段である。その為には、具体的に二つの方法を考えている。まずは外国の大学との提携で、私とは関係性の深いサンフランシスコ州立大学との提携による大学の地位の上昇であり、次に大学内の英語教育の様々なプログラムを拡充することである。米国の西の名門大学との提携により、2+2プランにより、入学生の数を増やすことができ、それにまたトリプル学位修得などがある。二つの言語を操るのは多くいるが、三つや四つの言語を操るのはなかなかいない。これだけでも出口戦略として優れていると考えられる。これらのより具体策はもっと敷衍する必要があるが。

 さらに、リカレント教育の拡充である。それぞれの地域には社会人を有する地域とか、年配の方が多い地域、それに、学生が多い町とかがあるが、それぞれの地域に合わせて、地域住民を相手にする講座を広げて収入源にする必要がある。もちろん、会社へのまたは役所への出講やプログラムも開発できる。

 最後にオンライン化により、世界の学生を集めることである。外国語のオンラインシステムの構築や一般教養や入試、それに各種資格試験などの対策プログラムを、フラットフォームで構築しバックデーターやメタバスといった最新システムの構築によって最先端のウェブ3を学内のビジネスとして運営すると、これらのビジネスはまさにビックビジネスとしてかなりの予算を拡充することができる。

 以上のようにして、名門大学への夢と希望のプロジェクトが完成しつつこれらの言説は成功への意志に買われる。かつてNietzscheのツァラトゥストラが神の死を宣言したように、旧態依然のまま独り歩きする大学改革の死を宣言し、大学維新を行うべきであろう。日本の永遠なる繁栄のためには、軍国主義の武器でもなく、資本主義の商品でもなく、琴のような文化の響きによる価値体系の維新であるから。それこそ大学の改革である[7]


[1] この文章は各大学内部の様々な要因については推測によるものである。社会の外延と内包を鑑みつつ、大学との関わりを、ロジックを追って構成したので、内部的な問題との関連性による因果関係については定かではないことを明記しておきたい。

[2] この為に私学は教育産業としてのビジネスが必須になる。また各大学の成功要因に関する分析や評価は、どうしてもその因果関係になる内部要因についてはバイアスがかかることは指摘しておきたい。理事長の手腕とか、改革に必要な内部組織や卓越した経営能力などは外部としては把握できない要因でもあるからである。

[3] これら大学改革の成功例は、国家や企業と関わり予算の豊富さ、グローバル化を掲げた英語力の向上、地域活性化と絡む、時代的や地域的な外部要因、就職率の向上、特化教育への尽力、そしてマーケティング、ビジネスのできる理事長や組織等などを挙げることができる。京都先端科学大学と同じく最近よく言われる大和大学も一つの成功例と言える。田野瀬さんという元議員が先頭に立って近畿の早慶と騒がれている。個人的なカリスマ以外にも入口と出口戦略、つまり受け皿の確立と就職率向上のための企業との提携、教員の確保の優位性などが考えられる。しかしながら偏差値は45‐55程度で、教授の質と国際力、私学としてのビジネス力などまだまだその推移は見守りたい。近畿の早慶というだけでほら吹きと言われるようだが、世界の名門を目指した方がいいいかもしれない。予算は大学のビジネス化を通じて確保できるので、あとは、特化戦略と名門化戦略を如何にして確保できるかにかかわると思われる。

[4] この議論はもう一つの議論になるためにかなりポイントだけに限ったが、いずれにしても超管理社会を迎えるようになると教育や大学の役割や意味合いも変わってくる、いや、パラダイムの転換が起きることは異論の余地のないと言えよう。

[5] 1年目 – サンフランシスコ(米国)、2年目 – ソウル(韓国)、ハイデラバード(インド)、3年目 – ベルリン (ドイツ)、 ブエノスアイレス (アルゼンチン)、4年目 – ロンドン(英国)、台北(台湾)。

[6] これらの成功は、まず理事長の全面的な協力と、次に副総長という権限を持って進めたこと、さらに、その地域の状況を理解した上でそれに合うプログラムを作成、最後に、2045年問題という近未来の予測を鑑み、それを逆算して多様性という要因を組み入れたこと、である。詳細については、それぞれの地域や大学によって甚だ異なる為に、厳密に内部的外部的要因を分析する必要性があるのでここでは概略だけに留めたい。

[7] 最先端の脳認知テストを活用すれば大学に対する満足度だけでなく、就職率も劇的に上がってくる。これは、今までの心理学のMBTIとは異なり、16のタイプの人間を分類するのではなく、8000万以上で1億ほどの人間のタイプを分けてAIが正確に分析する。このようなキラーコンテンツを大学が運営しつつ、関連協会を大学内で運営することで全国の大学の中心地として活動できる。筆者が副総長の時に大学に導入したら、確かに30%以上の就職率が上昇した。世界2次大戦の間、世界の碩学がプリンストン大学に集まることになり、高等研究所ができたが、そこでの研究の流れをくみ、今はハーバード大学の教授らを中心にヘルスケア部門で米国を席巻している。このシステムの運営は筆者関連の会社が運営している。大学のシステムとして運営することもできる。

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