多様性の意味と選択の変化

現代における製品の捉え方

テクノロジーの変化が激しいといわれている近代では、自動運転、VR、遺伝子改編、遺伝子医療、人工知能、ブロックチェーンなどの新しいテクノロジーが生まれており、それによって新しいビジネスが生まれています。このスピードは著しく、人々の生活様式も常に変化し続けています。

日本の労働力人口は、少子高齢化が進んでいるにもかかわらず、5年連続で増加し続けていますが、将来的な予測では、2060年には現在の4割減という推測があります。景気の回復により企業は雇用を増やす必要があり、女性や高齢者が働きやすい環境を整える傾向が加速していますが、労働人口に占める65歳以上の割合が増加しています。しかし、少子高齢化の加速により労働力人口は近い将来確実に減少へ転じると考えられます。そのため、労働力確保のために、今以上に様々な人が働ける労働環境を整える必要があります。グローバル化が進む近年からも企業は多様性を重視しなければならない時代になっていることは明白です。多様化の進行に伴ってニーズも多様化します。よって、同類の人たちの環境ではイノベーションは起きにくく、多様性のある環境でイノベーションが起きやすくなります。

様々なモノで溢れかえっている現代は、比較的欲しいものが簡単に手に入るようになっています。マズローの自己実現論を例にとると、人は、あるニーズが満たされるとより高次元のニーズを満たそうとするため、企業が競争社会で存続していくには、常に新しく価値のあるモノを生み出し続けなければなりません。多様性のある環境でこそ企業はより成長していくことができるのです。単に多様性のある人々の集まりを作るだけではなく、多様性を発揮できることが多様性の本質であるため、多様な人々を集めることではなく、多様な能力を発揮できる環境を作ることに意味があります。

変化が激しい時代だからこその課題として「コモディティ化」があります。テクノロジーの進歩により、消費者が求める以上の機能・性能を多くの製造者が実現できるようになり、製品の均一化が起きやすくなります。コモディティ化すると、製品間の差異が認識されなくなるため、消費者はより安いほうを購入し、価格競争に陥ります。企業としては、利益率が低下するため価格競争は避けるべき事態です。

コモディティ化への対策として、付加価値を付けることがありますが、一度コモディティ化してしまえば、そこからの脱却は難しいと考えられます。技術による差別化ができなくなった以上、どのように差別化していけばよいのでしょうか?

私は、「人」による差別化が増えていくのではないかと考えています。特に、農林水産業の分野で顕著になると考えます。例えば、私はキャベツを買う際、成分や味はどの産地のものでもほとんど大差がないように感じてしまうため、どのキャベツを買っても同じだから安い方を買うという選択の仕方をします。しかし、誰が生産したものか分からない1玉150円のキャベツと自分のおばあちゃんが生産した1玉150円のキャベツであれば、仮に多少高くても後者を選択すると思います。恐らく大半の人がそうだと思います。この選択の仕方は、「自分が信頼できる人が作っているという安心感」と対価を払うことによって「相手に対して手助けの感覚を感じられる幸福感」に影響を受けています。

このように製品の質ではなく、製品を作る人で選ぶという基準で選択する人が多くなると、作る側はいかに信頼を得るかが重要になってきます。製品を人で選択する時代になれば、自分から発信をしていかなければなりません。なんとなく製造するのではなく、自分(自社)の強みを誠実に伸ばしてその認知を自分のやり方で広めていくことが今後重要になってくるのではないかと考えています。

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