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ティラノゲームフェス2023お薦め作品紹介⑤プレイするあなたの心と倫理観を揺さぶる一品

 改めて、今年も私が普段からお世話になっているフリーノベルゲームのプラットフォーム「ノベルゲームコレクション」の祭典、「ティラノゲームフェス2023」が迫っています!

というわけで私がここまで遊んだフェス参加作品の中からお薦めできる作品を紹介していきました。
 今回は5回の連続記事としてお送りしていたが、ついに最終回です!

  1. 謎と展開にハラハラするミステリー・サスペンス

  2. 未来は幸せ?それとも…なSF

  3. しっかりゲームプレイを楽しむ探索・アドベンチャー

  4. 正義!キャラクターがかわいい&愛おしい作品

  5. プレイするあなたの心と倫理観を揺さぶる一品

としてそれぞれ3~4作ずつ選び5日に渡り紹介していましたが、今回は最終第5回!!

「プレイするあなたの心と倫理観を揺さぶる一品」

になります!プレイした後思わず考え込んでしまう、自分に当てはめて考えてしまう、過去の自分を振り返ってしまう、揺さぶりに来ている、少なくとも僕はそうなった三作をお送りします!はっきり言いますが、今回は重い作品しかありません。


1:「君も助けてくれないんだね。」

ジャンル:短編露悪ノベルゲーム
プレイ時間:30分~1時間
一言お薦めコメント:ノベルゲーム好きにこそやってほしい、強烈な露悪
こんな人向け!:ノベルゲーム好きの方、露悪やアイロニーが好きな方
注意:今作は以下の要素を持つ人にはお勧めできません。
 ・現実とフィクションの区別がつかない方
 ・インモラル・非人道的・露悪的な要素が苦手な方
 ・ストレスに弱い方
 ・強いストレスを抱えることをお医者様に止められている方
上記に当てはまる方、及び15歳以下の方はプレイ及び視聴等をお控えください。

 未来の世界のスラム街で、かわいくて優しいお隣さんと、会話をしたり壁に空いた穴から部屋を覗いたりしながら、お隣さん、そしてこの町の真相へ近づいていくノベルゲームになります。もともと暗く重い作品を作る方とお見受けしていた作者が敢えて「露悪」を謳ったことが私の中で非常に興味深く、それゆえに遊ぶことにしたのを覚えています。
 本作はおそらく私がここ2~3年で一番「くらった」ノベルゲームになります。実況をしながら読み進めていたのですがある決定的なシーンを見た時には明確にダメージを受けてしまい、チャット欄と、後日配信を見てくださった作者様から心配されるほどでした。それぐらい今作は強烈な作品です。
 ただ、今作は作者様がむやみにこちらを攻撃してきているのではなく、「物語」「人間」そして「ノベルゲーム」というものに真摯に向き合っているからこその強烈な「露悪」なのだということです。内容がひどいというノベルゲーム、映画、小説、そのような「物語」に向き合う時、「どんなひどいことになるんだろう…」という怖さは同時に「期待」「わくわく」「楽しみ」を孕んでいるでしょう。そんな多くのノベルゲームプレイヤーがある種の作品を遊ぶときに抱くであろう感情に対して、強烈に突き刺してきたのが今作なのではないかと思っています。
 デザインやストーリーも本当に的確かつ良質で、お隣さんが本当に、本当に素敵であるがゆえにどんどんプレイヤーの感情をかき乱してきます。あと、もう私はある登場人物が好きで好きで…辛い……。
 また、プレイヤーにセリフをクリックさせ言葉を、今プレイヤーが選んだから主人公が発話したんだよという感触をプレイヤーにぶつけてくるゲームデザイン、色彩の幅の少ない町の雰囲気、少しずつ謎が解けていく登場人物、それら全てが圧倒的に噛み合って強烈にこちらの倫理観を揺さぶってくる、そんな恐ろしくもまっとうで誠実な逸品です。

その作者から心配された実況がこちらになります…。

2:道徳ビデオ

ジャンル:群像劇
プレイ時間:1時間
一言お薦めコメント:ストーリーテリングが異常にうまい傑作
こんな人向け!:群像劇が好きな方、イノセントではない人たちの苦しみ、あがきが好きな方

 「登場人物は全員クズ!!」という強烈な謳い文句のノベルゲームです。ある小学校でいじめをなくすために「道徳ビデオ」を撮るというところからこの物語は始まります。そして、道徳ビデオの撮影で起きたことと、その後、ビデオに関わった人たちがどうなったかが過去と現在から語られていきます。
 時系列や登場人物の視点が次々と入れ替わるというややもすると難解になりやすい形式の群像劇ですが、読み進めていくとしっかり内容が頭に入っていきます。またそのシャッフルによって続きが気になって仕方がない作品となっています。このあたり、セリフ・演出、そして物語を見せる順番に本当に気を使っているのだと思います。私も小説を書いたこともあるのでこの難しい語り口をこんなにきれいにやってしまう手腕には舌を巻くばかりです。絶対できない…。
 もちろん語り口と共にストーリーそれ自体も素晴らしく、「道徳ビデオ」の撮影で起きたこと、それが登場人物の今にどのような影を落としているか、そしてそれがどのような結末を迎えるかを丁寧に、そして容赦なく描いています。加害者と被害者、善と悪が時系列や視点ごとに入れ替わりその境界線は溶け合い、現実に存在する「いじめ」というものの悪辣さ、扱いの難しさも相まって非常に心を締め付けてきます一人残らず赦せないけど、できるなら全員を赦したい。そんな矛盾した気分を味わえます。
 その上でGood Endで描かれる再起と希望がとても印象的です。「悲劇・悪事の当事者にそれでも希望を呈示するならどうあればいいのか」というのは物語を書く際、あるいは評する際に悩まされるところなのですが、今作はその塩梅が絶妙で最後の二人のやりとりはあまりにうますぎて悶絶しました。いわゆる「最後にいいお土産をくれる」タイプの中でも特にいいお土産です。
 全体にシナリオが上質で、かつ映像とBGMと文章のかみ合わせとというノベルゲームならではの演出も楽しめる、「なんだこのクオリティの高さは!?」と驚いた傑作となっています。少し容赦のない表現もあるのでそのあたりは注意の上、いい物語が読みたい!と言う方はぜひ読んでいただけれと思います。

3:ビーフオアチキン

ジャンル:Karooome様
プレイ時間:10~20分
一言お薦めコメント:食前食後にはやらない方がいいかも…?
注意:体調や精神状態がすぐれない方はご注意ください
こんな人向け!:お肉好きな人…?Karoooome作品全体として動物、ケモ好きな人、ブラックユーモアが好きな人

 Karooome様、神、サイコー。やれ。

 の一言で終わらせていいぐらい私はKarooomeさんファンなのですが、その中でも今作をお薦めします。強烈さと言う意味では一番でしょう。
 ゲーム自体は非常に小規模で、おいしそうな機内食を選ぶだけなのですがそこから突然強烈な一撃でこっちをぶん殴ってきます。私はぶん殴られた時「やりやがった…!最高!!!」と思いました。その機内食がおいしそうなのが本当に意地悪な作品です。あまりにミニマルだしネタバレはしたくないのでこれ以上は語れませんがぜひ遊んでもらっていただきたいです。強いて言うなら食前食後には遊ばない方がいいかも…。

 なお僕がどれだけKaroooome様ファンなのかはここに書いてあるのでぜひ読んでみてください!

あとがきと報告


 以上、5日間に渡り計17作紹介してきました!どれもこれも違った魅力のある素晴らしい作品ばかりです。
 ティラノゲームフェス2023といういい機会にぜひ一本でも多く遊んでいただけたらと思っています!

 なお、個人的な報告が一つあります。

昨年、私はティラノゲームフェス2022の応援スポンサーとなりました

 今作も応援スポンサー制度があるのならもちろん参加しますが、その上で、去年と同じようにスポンサー賞の授与がある場合今回の一連の記事で紹介した作品は除外し決定することとなりますので、一応報告させていただきます。フェス期間中に出会った作品から選びたいと思っています。
なので今回紹介した作品は「殿堂入り」と言うことでお願いいたします。ちなみに各去年の受賞作はこちらからご確認ください。


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