ショートエッセイ:選ぶということは、選ばないということ。それでも選ぶということ。
ティラノゲームフェス2023とベストフリーゲーム
フリーノベルゲームのプラットフォーム「ノベルゲームコレクション」の祭典、ティラノゲームフェス2023が終了しました!クリエイターと運営の皆様、そして今イベントに関わりを持った全ての皆様本当にお疲れさまでした。
今年のティラノフェスは過去最大の参加数だったと聞きます。量だけでなく個々の作品も毎年それぞれに思いと技術と工夫の数々を凝らされていて、また作品の多様性が毎年広がっているように感じて本当に素晴らしいイベントにさらにさらにとなっているのを感じます。
私にとってもティラノフェスは新しい作品と出会える大切なイベントですし、Vtuber活動においても重要な存在です。毎年このような大規模な企画をしていただけることには感謝と敬意を抱くばかりです。
今回私が選んだスポンサー賞は「ドキドキ!?魔法学園[:ルーキー:]」でした!VR空間での魔法バトルを描いた青春ものです。本当にテンションが上がる作品ですのでぜひ遊んでいただければと思います。
このような選考をする時には珍しく、今回は即決という言葉がぴったりで一瞬も悩むことはなかったです。
とはいえ、本来一つの作品、とりわけノベルゲーム、しかも同人の作品を評価し選考するということは非常に難しいことです。前にこちらの記事にも書きましたがノベルゲーム、特に個人制作のものはどうしても作品と作者個人が切り離しきれないですし、選考者個人の好みが反映されやすいところもあります。
私は年末にフリーゲームのベスト10を2年連続で選出しましたが、特に去年、2023年は記事を出す際に大変緊張しました。
私自身のこの一年の変化として、ノベルゲーム作家を始め多くの方に実況やレビューを見ていただけるようになりました。それ自体はありがたいことですし、「そうなりたい」と自分で思っていたことでもあります。
それでもいざnoteの公開ボタンを押すときには、まさにその自分が望んでいたことが重圧に変換され、一度手を止めたのです。何度か深呼吸して「せーの!」って言いながら押したのを覚えています。正直私より何十倍、何千倍、何万倍も見られる立場の方ってどんな精神なんだ…、と思ってしまいます。
嬉しいことに選んだ作品の作者にお礼をいただけたり、選ばれたことを祝い合っている姿さえ見たりして「なんかすごいことになったな…」となったりもしていました。
ただそのような、それ自体は心からありがたい姿を見るにつれ心の中で「もしかして、選ばれなかったことを寂しがっている方もいるのだろうか」いう気持ちが浮かんできました。まあ実際のところ一個人でしかない私がそんなことを思うのは勘違いの自意識過剰にほかならないでしょう。
ただ、その瞬間に選ぶということの怖さを肌で感じたのを覚えています。(余談ですが、だからこそノベルゲームコレクションの公式がしっかりと作品を選び表彰することには敬意を払いますし、多くの作品にスポットライトがあたるスポンサー賞という試みは本当に素晴らしいと思っています)
選ぶこととは選ばないこと、それでも選ぶということ
賞を選び、公表するということは、どうあっても他を選ばなかったという結果を公表するという意味を持ってしまいます。それは避けられないことでしょう。明確に優劣をつけているわけです。
私の10選+ベスト1も他の作品に「これらの作品ほどではなかったよ」と宣言していると言えばその通りなのです。もっといえば実況で遊ぶゲームを決める行為だってそうでしょう。そう言い換えるとかなりおこがましい行為なのかもしれません。
ただ、大前提として評価をすることは自由です。本来的には酷評だろうがランキングだろうが好きにやるべきです。それは当然の事実です。
一応申し上げておくと私自身は肯定的なフリーゲームレビューに徹することにはしています。もちろんこれも他の人が追従するべきものではないのは改めて。
また、やはりレビューやベストを出すことを喜んでいただける方がいるのも間違いありません。私の記事を見て作品を遊んでいただいたこともいくつかあります。それに、やはりランキングやベスト●●って界隈全体が盛り上がるんですよね。私もノベコレのランキングはチェックしています。
また、素直に言うと私のベストフリーゲーム記事は他のnoteと比べても圧倒的に読まれているという功利的な面も間違いなくあります。私はノベルゲーム実況者とレビュアー両方の顔を持っていますが、実況にしてもレビューにしても、クリエイターが思いを込めて作ったゲームを自分を売るために利用している面は否定できないと常々思っています。だからこそ、自分に、クリエイターへのお返しというか、できることは何かないだろうかと考えることが必要だと感じています。
おこがましい自分ができること
現状の答えは、「作品一つ一つに全力で向き合う」ことです。レビューや批評が批判や否定を受ける時「作品に向き合っていない不誠実さ」が指摘されているのをよく見ます。そうならないようにしようと心に決めています。特に、私は個人制作の作品を遊ぶことが多いので、作品への不実はそのまま作者への不実に直結しうるでしょう。
一つ一つの作品を自分の心と頭と体をフルに使い受け止め、私の武器であり長所だと思う言葉を尽くしてその魅力を伝える。それが、現状私がクリエイターの方やノベルゲーム界へお見せできる誠意というか、できることなんだろうと考えています。そのためには、まさにクリエイターの方々が作品へ向き合うのと同じように、自分の感性と文章、そして実況能力を不断に磨き、この素晴らしい世界の進化についていく必要があるのだと思います。もちろん実況やレビューは「心のままに」するべきですが、だからこそその心は磨き続けなければならないのでしょう。
あ、これは別に他のレビュアーさんやランキングづけする人がよくないとかそういう話ではないです。基本的には皆様それぞれに誠意を持って真摯に向き合ってると思いますので…。