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リアルに「海賊」になってしまった元戦隊ヒーローのお気持ち表明から推察される芸能界の闇

昨日もつぶやいたが、まさかスーパー戦隊シリーズからリアルに犯罪者が再び出てくるとは……念のため言っておくと戦隊ヒーローを演じた俳優が逮捕されたのは2013年の小林朝夫の性犯罪以来である。
小林朝夫の場合は理解できなくもない、大体芸能人をはじめ男性タレントがやらかして失脚する時の原因はほとんどがお酒絡みか女性絡みだから大した衝撃や事件性は然程感じられない。
しかし、今回の池田純矢の場合は決して女性絡みでもお酒絡みでもな「受け子」という今年話題になっている特殊詐欺グループの犯罪への関与だったことが衝撃だったのである。
なおかつ、彼の役をはじめとする人間性や世間一般にあるイメージを見ると、とてもそのような犯罪行為に加担するような人に見えなかったのも余計に衝撃だったのではなかろうか。

今回の事件に関して調べていくと、どうやら彼自身の公式Xに悲観的な呟き、俗にいう「お気持ち表明」があったらしく、それが実はフラグだったのではないかと言われている。
流石に逮捕された人のつぶやきを無断で掲載はしないが、載っていた長文を私なりに要約するといわゆる「病んだ挙句にトンでしまった」という、それ自体はよくあるものだったのだろう。
特に「本当の自分って何だろう?」のくだりを見た時は思わず鳥肌が立ってしまった、自分の存在意義すら疑って崩れてしまう程に精神の糸が完全に切れてしまっていたのだなと。
彼には疲れた時に逃げ場になってくれるような家族がおらず、仕事をしていく中で手に入れたはずの家族ですら自分を蝕む毒になってしまっていたらしい。

そして誰のために、何のために役者として演技し歌を歌い脚本を書き演出をするのか、彼自身の中で何一つ答えが明確にならまいまま子役の頃からずーっと芸能界の厳しい世界の中で扱かれて育ってきた。
それこそ某インフルエンサーが口にしていた「嫌なら無理して学校に行く必要がない」を地で行く存在が池田純矢だったわけだが、彼こそ正に義務教育を捨てて芸能一本で歩み続けた結果身も心も完全に壊れてしまったのである。
「俳優・池田純矢」を軸とした芸能人以外のアイデンティティーというかバックボーンを何一つ持っておらず、子役の頃からずっと演技をし続けた彼は「芸能界の申し子」の領域を超えた「芸能バカ」になってしまった。
そうしてずっと目の前の仕事を必死にこなしていく中で、どれだけ肉体や演技力・社交性などの表面上の「スキル」は成長しても、人間性や教養の部分は何一つ磨かれず、小学生の頃のまま心の針が止まってしまっていたのだろう。

正にそれは『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)でずっとスーパー戦隊オタクを拗らせた「戦隊バカ」のまんま理想のヒーローになってしまうという奇跡に近い経験をしたゴーカイシルバー・伊狩鎧そのものである。
というより、当時の池田純矢がそのまま役として当て書きされていたのが鎧だったことをインタビューでも述懐していたから、思えばもう役者人生の中で彼は若くして「役者としての夢」を実現してしまったのだろう。
そうしてやり続けていく中で自分自身のモチベーションになるものが見つからず、かといって役者以外のキャリアが思い描けるわけでもなく、その積み上げてきたキャリアだけで来たタイプだったのかもしれない。
そういう人間に限って真面目で責任感が強いタイプが多いのだが、それこそお笑い芸人の岡村隆史や梶原雄太は一度芸能界の仕事量のキツさと自分が思い描く理想と現実のギャップに思い悩みどん底まで沈んだ経験がある。

しかしその2人はまだ犯罪行為に走らなかったのだが、池田純矢との違いでいうと「周囲に理解して支えてくれる人がいるか否か」というところが大きな違いだったのではないかとおもう。
岡村隆史には相方の矢部浩之や山本圭壱・加藤浩次など当時の「めちゃイケ」のメンバーが理解を示してくれて「一度ゆっくり休んでもいいよ」という支えが大きくあった。
梶原雄太にしても相方の西野亮廣はもちろんのこと上沼恵美子や妻の存在が自分を奮い立たせてくれる存在としていたこと、そしてフィッシャーズのシルクやヒカル・ラファエルという新たな仲間がいたのが大きく影響している。
俳優・池田純矢にはそういう「理解を示して受け止め支えてくれる人」の存在すらなく、手に入れた今の家族ですら理解者にはなってくれなかった為にずっと四面楚歌の状態だったのであろう。

今回の件に関して、例えば「ゴーゴーファイブ」のゴーグリーン役を演じた原田篤は池田純矢に憤慨と失望の意をXにて呟いていたが、どんなに明るく元気に見える人間にだって人知れず抱えている心の闇くらいあるだろう
それを素直に表に出せるか出せないかの違いであって、前日まで普通に明るく飄々と振る舞っていた人が翌日に自殺していたなんてケースはごまんとあるわけであり、池田純矢はそれを素直に表現できなかったのだろう。
こういう内面に抱えている精神面でのストレスや葛藤は詰まる所本人にしかわからない、ましてや原田篤のように自我が強くやりたいことをやれている人にその悩みは根本的にわからないものだ。
確かに特殊詐欺の受け子という闇バイトに手を出してしまったことは許されることではないしその点に関しては一切擁護しないが、今回の件を安易に「池田純矢は豆腐メンタルの犯罪者だった」で切り捨てていいものだろうか?

一体何がきっかけでどういう伝手で闇バイトに手を染めたのかは皆目見当がつかないのでこれ以上の言及は控えるが、こういう人を生み出してしまったことを事務所側をはじめとする日本の芸能界はもっと重く受け止めるべきであろう。
タレントが起こした不祥事を臭いものに蓋をしてタレントの責任にすることは容易いが間違わない人間なんて誰一人いないわけで、まして人間万事塞翁が馬だから一歩間違えたら誰だって池田純矢のようになる可能性はある。
だがまあ、いちばんの問題は今回のことで『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011)という作品ならびにそのメインの一角であるゴーカイシルバー・伊狩鎧のキャラに傷がついてしまいイメージダウンに繋がることだ。
作品に罪はないとはいえ、曲がりなりにもスーパー戦隊という一番子供が憧れ安心して見られるシリーズ物に傷をつけるような結果になってしまったわけであり、そういう悪印象のレッテルが貼られることは避けられない。

今後どうなっていくのかはわからないが、自殺や孤独死になるより逮捕という形に収まったのは彼にとってある種の「救い」だったのかも知れない。
シルバー世代をゴーカイに騙したリアル海賊」として生きていくことになる彼の罪はあまりにも深く重たいものになるであろう。

今回の件、それこそ俳優として大成し、今「どうする家康」で大活躍中のゴーカイブルー・ジョー役の山田裕貴はどう思っているんだろうね?

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