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『パワーレンジャー・ロスト・ギャラクシー』の薄っぺらさから見えるアメリカのキャラクタービジネスの表現力の無さ

アメリカ版戦隊シリーズの7作目『パワーレンジャー・ロスト・ギャラクシー』を視聴完了。
今まで怒り狂ってしまうであろうことが怖くて食指が動かなかったのだが、よくもまあ原典の『星獣戦隊ギンガマン』をここまで希釈して価値を貶めてくれたなと怒る気すら失せる。
単純にパワーアップ形態の出過ぎとか宇宙海賊バルバンがあんなクソみたいな扱いをされているとか、そんなこと以上にアメリカのキャラクタービジネスって所詮こんなものかという失望が勝った。
これならまだ自主制作で作られた「フランスファイブ」の方がよっぽど面白かったぞ、途中から東映も本格的にバックアップしていて予想以上に面白い作品になっている。

まず疑問だったのはなぜ原典の「ギンガマン」をベースにしているのに、わざわざ「メガレンジャー」と同じようなSF路線にしようと思ったのか?がわからない。
wiki辺りを調べると、どうやら坂本浩一監督が自分の好きな「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」のようなスペオペ路線をやりたかったとのこと。

元凶はお前か浩一いいいいいいい!!

それだったらさ、何もわざわざ「ギンガマン」を使う必要はないじゃん、前作「メガレンジャー」をそのまま使い続けるか、全く別のオリジナル戦隊にすればいい。
しかもわざわざ本家から田崎竜太監督まで招いておいてこのクオリティの低さだから、マジで小林女史も高寺Pも訴訟を起こしていいレベルだよ。
実は小林靖子が「ギンガマン」執筆時に2クール目で「宇宙探査用ロボを出してくれ」と言われて筆を折り、年月を飛ばして未来SFに路線変更しようとした話があった。
だがそれが実現しなくてよかったと心からホッとしたし、多少の難航はありつつも「ギンガマン」がいかにしっかり1年間血道を上げて傑作を作ったかが改めてわかる。

バルバンもアメリカでは宇宙海賊ではなく宇宙昆虫軍団にされ、しかも本家でラスボスを務めたゼイハブですら完全に安売りされて、ラスボスは別のオリジナルキャラクターでやっていた。
しかも獣装甲だけでは物足りないからか、途中からファンタジーもクソもないショボい強化アーマーが出てきてしまい、そしてなぜかメガレンジャーと共闘してネジレンジャーを倒すという。

舐めてんのか!?本当に○してやろうかこのクズ!!

そもそもなぜギンガマンがネジレンジャーと戦わなきゃいけないのかがわかんないし、そもそも歴代の中でもメガレンジャーとギンガマンって全然戦闘力から何から違う
ネジレンジャーが「メガレンジャー」という作品の中で凶悪な存在として出ていたのはメガレンジャーが素人の高校生という設定があったからである。
歴代戦隊の中で高寺Pが手がけた「カーレンジャー」「メガレンジャー」はファンの間では歴代最弱の戦隊として候補に上がるほどだ。
どちらも「等身大の正義」をテーマとして、ヒーロー性という仮面を極限まで取っ払うことによって敢えて「人間性」の観点からヒーローの本質を炙り出している。

そんな設定だから敵対組織であるボーゾックもネジレジアもそんなに強いわけじゃない、ネジレジアなんてラスボスは「バイオマン」のDr.マンと同じ元地球人だ。
つまり敵組織全体としての脅威は歴代で見ても低めだし、そういう設定だからこそネジレンジャーのキャラクター設定とあの展開が映えたわけで、ネジレンジャーなんて強くない。
それに対してギンガマンの5人はいつ復活するかもわからない宇宙海賊バルバンとの戦いに備えて臨戦態勢で3,000年もの間準備をし続けたプロ中のプロが選ばれている。
生身でもアース・剣術・体術を使いこなしているし、しかも日夜稽古に励んでいて闘争本能が歴代屈指の高さであり、「チェンジマン」辺りと並んで歴代最強候補に上がるほどだ。

だからネジレンジャーとギンガマンなんて実際の力で言ったらギンガマン5人どころか、ギンガレッド1人で炎のたてがみであっという間に燃やし尽くしてしまえる
それをギンガマンの価値を下げてアースを使えない設定にして、それでギリギリメガレンジャーと対等みたいに描こうとしてるけど、その発想自体がそもそもダメ。
なんかもうやっていることが「ドラゴンボールAF」の超サイヤ人10とかと同じ次元のことしてるんだよな、要するに低クオリティの同人作品レベルなのだよ。
こんなのでも海外で人気が出てしまうのはパワーレンジャーが凄いのではなくて、元々の日本のスーパー戦隊シリーズが凄いからであり、そこを勘違いしてはならない。

そもそもアメリカというのは変な国である、銃社会の癖して銃を使った表現に規制をかけるし、宗教上の理由で「ゴッド(神)」という単語を使うのは禁止のようだ。
例えば『ONE PIECE』はそんなクソみたいなポリコレに引っかかったらしく、銃は水鉄砲に変えられ、タバコ・酒も禁止され、流血・暴力表現はダメらしい。
その癖コミックマーベルのヒーローたちが悪を倒すために正義の暴力を振るうのは正当化されているらしい、本当に二枚舌のアホ国家だなあ。
この「パワーレンジャー」ですら子供には「暴力的だからダメだ」と批判されていたらしいが、それじゃあ子供は何を見て楽しんでいるというのだ?

こんな感じでアメリカのキャラクタービジネスは徹底した資本主義・拝金主義の塊みたいなところがあって、金儲けのためにキャラクターをひたすら安売りしている。
そう考えると日本といういい国に生まれ育ってよかったなあと思う反面、ある時期以降のスーパー戦隊シリーズの悪影響って半分はパワレンのせいじゃないのかと思う。
特にこれ。


何かあったらキングブラキオンに乗せればいい
キングブラキオンに乗せた第二弾
原型の全くない映画パワレン版隠大将軍

そう、とにかく困ったらロボット全合体という美学もロマンもセンスも全くないアホみたいな拝金主義の塊みたいな感じ。
いつか大々的に記事として取り上げてやろうと思っていた「ロボット全合体」批判だけど、まさかここで少し扱うことになるとは。
でもそう考えると、「ギンガマン」が高寺Pと小林靖子という職人気質の人たちの舵取りで制作されたのは幸運だったといえる。
今「ギンガマン」がリメイクされたとしたら、キャラの良さも全く無視してとんでもないごちゃ混ぜのロボットができるんだろうね。

まずギンガイオーが出てきたら次にブルタウラスが出て、ギンガイオーとブルタウラスが超合体してスーパーギンガイオーになるんだろうか。
その上、後半で出てくるギガライノス・ギガフェニックス・ギガバイタスも最終的に全星獣合体してゴチャゴチャとしたクソダサいロボットが出るんだろうね。
そんでレッド限定のクソダサい強化も出てくると思われる、少なくとも今「キングオージャー」を作っている大森Pだったらそれくらいはやる。

つくづくアメリカの金儲けのためならキャラクターを消耗品として扱い擦り倒すその精神はある意味尊敬に値するが、絶対に真似してはならない反面教師だ

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