続・インターフェースデザインの心理学 を読んだ #1
続・インターフェースデザインの心理学 を読んだ。前作の インターフェースデザインの心理学 を確か新卒2年目くらいに読んでとても面白かった記憶があって(何が書いてあったかは覚えていない)、何かのきっかけでググったときに続編が出ていることを知ってポチってみた。
脳のしくみとユーザー体験 にも書いてあったけど、ユーザー体験は複数の認知プロセスの積み重ね によって構成されるものなので、人間がどのように物事を捉えるかという心理学的側面からデザインを設計する上で気をつけるべきポイントを Tips 的に紹介している。
デザイン〜 というワードが入っているが、具体的なデザインの How が書いてあるというよりは、心理学的にこういう傾向があるからデザインするときに気をつけようね、みたいなことが書いてある。物理本で手元に置いておいて、気が向いたときにパラパラめくってみる、みたいな使い方が出来ると良さそう。
全部で11章あるので、この note では1〜4章までで個人的に面白かった箇所を備忘録的にまとめておく。
1章 人はどう見るか
④中心視野で見るべきものは周辺視野で決めている
人間には中心視野と周辺視野というものがあって、中心視野で見ているもの ≒ 目がフォーカスしているものだが、その中心視野が見るべきものは周辺視野が 無意識で 決めている
無意識で〜というのは頭で考えて決定しているというより、感覚で決めているというような意味合い(ファスト&スローにおけるシステム1的な反応に近い)
無意識の反応なので、直感的に自分にとって大事なものを見ようとしてしまう
例えば恐怖を示す表情だったり(周辺に怖がっている人がいる = 命の危険性がある と直感的に判断して注目してしまう)、過去の経験的に大事だったと認識しているもの
結構重要かもな〜と思ったのは、着目してほしいもの(中心視野で捉えてほしいもの)を1番目立つところに置くというのはUI設計上やりがちだけど、仮に真ん中に置いたとしても周辺視野に少しでもアテンションを引きつけるものがあればそちらに意識が向いてしまうということ
⑨デザインの良し悪しの判断は瞬時に下される
0.5秒で良し悪しが判断されて、その判断はそれ以降の使いやすさの評価にも影響する
0.5秒でイケてると思ったら実際に使いはじめてからも 使いやすい と評価されやすい
UXデザインの法則 にも書いてあった 美的ユーザビリティ効果 のこと
良し悪しの判断は 色使いと視覚的複雑さ によって構成され、色使いが多いほうが良いか少ないほうが良いか、視覚的複雑さ大きいほうが良いか小さい方が良いかはターゲットユーザーの年齢や性別によって異なってくる
2章 人はどう考え記憶するか
⑩ 人は2種類の思考を使っている
ファスト&スロー で有名な内容で、人は2種類の思考を使っている。システム1は直感的で早い思考、システム2は論理的で遅い思考
日常的に使われるのはシステム1なので、ほぼ直感で物事は判断されるものと考えた方が良い。基本的に説明は読まれない。なので、間違う前提で、間違った後に正しく復帰できるようにサービス設計してあげることが大切 だったりする
仮に間違ってはいけないことをやってもらいたい場合はシステム2を呼び起こしてあげる必要がある。システム2を呼び起こすためには意識的に集中して貰う必要があるため、例えば少し難しい計算問題を解かせたり、敢えて少し読みづらいフォントを使うことなどが効果的らしい
⑪ 記憶は容易に変わり得る
記憶は特定のニューロンが発火することで形成される。同様に記憶を「思い出す」ときにも同じようにニューロンが発火しており、新しい情報を新しい記憶によって記憶が変化してしまう可能性がある。つまり思い出すたびに記憶は再生成されているようなもので、思っている以上に当てにならないと考えたほうが良い
3章 人はどう決めるか
⑯ 複雑な決定をしなければならないときはフィーリングに従う
単純な意思決定は情報に基づく論理的な判断をしたほうが正答率が高く、一方で複雑な意思決定の場合、フィーリングで行ったほうが正答率が高いらしい
ここでいう単純な意思決定というのは4つほどの選択肢の中から最適な回答を選ぶような問題で、複雑な意思決定といいのは12個ほどの選択肢の中から最適な回答を選ぶもの
フィーリングといっても100%ヤマカンというわけではなく、あくまで判断に必要な情報を提示した上で最終的に感覚で選ぶというもの。最後はエイヤで決める、みたいなのは実は正しくて、思っている以上に無意識の脳は正しい判断を行えるということなのかな〜
またフィーリングでの意思決定のほうが意思決定後の満足度や自信も高くなるという傾向があるらしい。論理だとついつい正解か否か気にしてしまうけど、フィーリングだとあまり気にならないとかあるのだろうか
意思決定までの熟考はあまり意味が無くて、情報に基づく論理的な判断をしたグループは熟考してもしなくても正答率は変わらなかったが、フィーリングで判断したグループは熟考することで正答率が下がったらしい
複雑な問題はフィーリングのほうが意思決定の精度が高く、且つ熟考の意味がない というのはなかなか反直感的で面白かった(本当に?と思ってしまうが)
⑱ 自信が決断の引き金になる
人が決断をするのは「自分は正しい決断ができる」と自信を持ったときで、自信は意思決定までの所要時間と証拠の量に影響を受ける
短時間で多くの証拠を集められると自信を持ちやすいので、決断を早めるためには “(充分に)情報を集めた” と思ってもらうことが大切で、そのための How としては 1. 小さなチャンク(情報の塊)で伝えること と、2. 情報を集めたということをフィードバックしてあげること が有効である
前者については単純に情報量を増やす効果があるのと、後者については “充分集めた" と思いやすくする効果がある
なお、逆に意思決定までの所要時間が長くなると、これは難しい問題に違いないと脳が勘違いをして意思決定の自信がなくなっていく傾向があるらしく、悩めば悩むほどより悩む構造 になっているようだった(時間がかかる → 難しい問題と認識する → 更に時間がかかる というネガティブなフィードバックループが回ってしまう)
⑳ 人は特定の時期に意思決定する
仕切り直し効果 というものがあるらしく、何かしら区切りのタイミング(29歳, 39歳, 49歳など十の位が変わる年齢や、1年の始まり、長期休みの終わりなど)に習慣を改める意思決定をする傾向がある
ポジティブな意思決定に限らず、例えば自殺率みたいな内容も一の位が9の年齢とそれ以外の年齢で有為に差があるらしい
4章 人はどう情報を読み理解するか
㉓ 読みにくい文章のほうが学習効果が上がる
読みにくい文章やフォントのほうが学習効果が上がるらしい。これは非流暢性(disfluency)があることで、システム2が呼び出されるため。何かで日本語よりも英語で読んだほうが読むペースがゆっくりになるので理解を深めやすい、みたいな記事を読んだけれど、それと同じような内容かもしれない
一方で読みにくい文章のほうが信頼性は下がるらしく、これもシステム2が呼び出されるから疑ってかかりやすくなるのかな〜と解釈した
㉔ 動詞より名詞のほうが人を動かす
「◯◯する」よりも「◯◯になる」のほうが行動に至りやすいらしい
例えば「募金する」よりも「支援者になる」のほうがよいみたいな
そんなことある?と思ったけど、名詞のほうが集団への帰属意識を呼び起こしやすい という説明を読んでなるほどなーと思った
㉘ 読む行為で重要なのは紙の本での多感覚な体験
紙の本を読む行為と電子書籍を読む行為は体験として違うもので、紙の本は五感を利用して読むことができる
そのため紙の本の場合は 物理的なナビゲーションとメンタルマップ を描くことができるので、何がどこに書いてあったかを思い出しやすい
物理的なナビゲーションとメンタルマップ というのは、例えば本の1/3くらいのページの右下のあたりに書いてあった気がする、という感じで、本の内容と物理的な情報を紐付けて保存できるということ
なので、情報に対するアクセシビリティが紙の本のほうが高いため思い出しやすく、結果として記憶として定着しやすい(かもしれない)
自分は結構物理本を買う傾向があるのだけれど、読み返す前提のものはやっぱり紙が良くて、そうでない1回きりのキャッチアップのためのもの(新書とか流行り物とか)は電子書籍で買う、みたいな棲み分けがよいのかもしれない
学び
3章の 人はどう決めるか の内容が1番興味深かった。複雑な問題はフィーリングで解いた方が良い というのは若干懐疑的だけど、少なくとも熟考に思ったよりもポジティブな効果がないこと(熟考によって正答率変わらないし、熟考すればするほど難しい問題と認識してしまう)というのは意思決定を早くしていく上で頭の片隅においておけると良さそう。