見出し画像

「分からないけど考える・分からないから考える」

ボクは学期はじめの授業に授業通信を発行しています。

前学期の最後の授業で生徒に書いてもらった「授業アンケート」(学校指定タイプではなく,ボク個人が作成したもの)のまとめと,ボクの感想や子どもたちに語りたいことを載せています。
今回とっても印象に残った感想を一つ紹介します。

ここから ――

〈分からなくても考える〉ことの大切さを学べる授業でした。
今まで知らなかったことや考えたこともなかったことの答えをみんなで出していくのは,楽しかったし,ためになりました。無駄になる知識がほとんどなく授業自体を楽しんで受けることができました。           

―― ここまで。

他にも「考えることがたのしかった」「考える力が身についた」という感想がとても多くありました。それを読むうちに、高校生たちにぜひ伝えたいことがムクムクとふくらんできたので次のような文を書きました。
少々長いのですが、よろしかったらお付き合いください。

「分からなくても考える・分からないから考える」

●考えさせられるのはイヤ

ボクは他人から「考えろ」「考えなさい」と言われることがキライです。
なんか学校のセンセイがこんなことを書くなんてちょっと不適切かもしれませんが,本当だから仕方がありません。

なぜかって,誰かにそう言われたときはたいてい,〈何を考えたらいいかわからない〉〈別に考えたくもない〉ことを考えさせられることが多いからです。

しかも,仕方なく考えた挙句,発表させられて,それでマイナス評価等されたときは,「わざわざ付き合ってやったのに,なんて失礼な奴だ」と相手に腹を立てることもある,はい,ボクはそんな人間です。
人間として「器が小さい」のかもしれません…。

ところが学校のセンセイというのは,問題を考えて生徒に質問をする,生徒に考えてもらうことがとても多いお仕事です。〈自分がされてイヤなことは他人にはしない〉――これは人間関係の鉄則ですが,ボクは自分がイヤなことを生徒に押し付けてしまう危険があるお仕事をしているのです。

そこで,(あなたの目にはどう映っているかわかりませんが)かなり気をつかっています。何か考えてもらうときには,「多くの生徒に〈考えるに値する〉と思ってもらえるような問題を出そう」と心がけています。授業中のすべての問いかけ,問題をそうすることは正直難しすぎますが,授業始めの「Let’sThink」くらいは,何とかしたい。

―― あなたたちの多くの人が
「今まで知らなかったことや考えたこともなかったこと」
それでいて
「ちょっと考えてみたくなること」
そんな問題にしたいと知恵をしぼっています。

実は,そうした問題の多くは,ボク自身が,その問題を思いついて自分で考えてみたらおもしろかった,たのしかったという問題なのです。答えを初めから知っていたのではなくて,〈知らないから思いついた〉問題だといってもいいでしょう。

誰かに出された問題の答えが浮かばなかったり,答えても間違ったりしてしまうと,それを恥ずかしいと感じることはボクもあります。知っていること,正解だと分かっていることならばビクビクせずに答えられるでしょう。

●「分からないから」考える

でも,実際の人生って,何が正解かなんてわからないことばかりです。教科書に書かれていること,政治や経済のしくみだって,よく読めば 「昔は●〇だったけれど,今は▲●になっている」と書かれています。

それはつまり,昔と今は違うということです。
それならば,今と将来は違うということになりませんか。
なぜ違うのか,

それは現在のしくみは「正解ではない」からです。
現在のしくみは「こうすればうまくいくのではないか」と多くの人が考えてみたただの仮説なのです。

そして,ボクたちはその仮説が本当に正しいのか,毎日毎日実験をおこなって生きているといえるのです。

そして,その結果,
将来は必ず別の仮説が生まれて,別のしくみがつくられます。
そして,またみんなで実験していくことになります。
これまでも人類の歴史はずっとず~~っと,この繰り返しでした。
そしてこれからも。

●「分からなくても考える」

特にAI(人工知能),チャットGPT(生成AI)が急速に普及すると共に,第二次世界大戦後の世界秩序が大きく変動する21世紀においては,あなたたちは「正解が分からない大きな変化」のなかを生きることになります。
自分で考えないで誰かのいいなりに生きていると,いつの間にか,自分の人生を台無しにされてしまうかもしれません。


だからボクは,自分を守るために
「分からなくても考える」
「分からないから考える」
ことを,ことさら大事にしていきたいと思います。

―― いかがだったでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
できれば感想など寄せていただけると嬉しいです。

この記事が参加している募集

オープン学級通信

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?