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菊地康介のコーヒーをめぐる旅 Vol.5

モットーは「人生を丁寧に」

話し手:菊地康介 / 聞き手:永井一樹(附属図書館職員)

(永)とりあえず、自分の店をもつという目標を実現したわけですが、今後の夢とか目標は?

(菊)ふたつあります。それをはっきり意識しだしたのは、JICAでの任期を終えた頃でしたけれど、ひとつは国連で働いてみること。もうひとつは“居場所づくり”をしたいなと考えています。居場所というのは、美味しいコーヒーが飲めるカフェ的な場もそうなんですが、別にそれに限定するわけではなくて、ライブがあってもいいし、ラジオ局みたいなのもあってもいい。とにかく、居心地のいい居場所づくりというのをライフワークにしたいなと考えています。

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(永)今、コロナ禍における新しい生活様式が問われているなかで、何か考えに変化が出てきたりしていますか?

(菊)オンライン飲み会とか、オンラインを冠した活動が今すごく増えてきています。日々進化していく情報技術によって、多くのことがオンラインでできることがわかりだすと、「これまでの通勤時間って無駄だったよね」とか「対面でわざわざ会議室を予約して話すことって時間取られるし無駄だったよね」とか言う人が出てきました。確かに今回のパンデミックは、これまでの無駄をオンラインによって効率化する絶好の機会だとは思うんですが、一方で、合理化が非人間的なレベルまで進むと、でもだからこそ、対面の良さってあったよねって気づく部分がやっぱり出てくると思うんです。
オンラインならいつでもどこでも会える。でも、わざわざ移動して会いに来てくれたっていうときのうれしさだったりとか。そういうつながりって貴重だったんだなっていうふうに、僕は感じていて。

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(永)高校時代のエピソードで、東日本大震災の直後に、原子力発電所の建設予定地になっている山口県のある島まで、友達と自転車で行って、現地の反対運動を見てきたっていう話がありましたよね。埼玉から山口まで、一週間かけて自転車で移動していくうちに、原発事故の深刻さが徐々に薄まっていく様子が、手に取るようにわかったという話。
オンラインによって、人間は距離を克服した(ある意味で、「どこでもドア」を発明した)けれど、逆にそのことで、我々は自転車くらいの速度でこそ味わえる意味を読み取りにくくなっているといえるかもしれませんね。

(菊)そうですね。

(永)緊急事態宣言下の自宅待機のとき、どこにも行けないから、僕、子どもを乗せて自転車で近所の公園をコンプリートしまくっていたんですが、40年も住んでいる場所なのに、あれ、こんなところに池があったのかって、びっくりするようなことがあったりするんですよ。それは自転車とか徒歩ならではの発見で。

(菊)なるほど。そういう、速度の遅さみたいな部分は大事にしていきたいなというのはありますね。僕のコーヒーも、「人生を丁寧に」っていうのをずっとモットーにしてやっています。一日一日をきちんと丁寧に生きる。温かみのある時間を過ごす。そんな生活に、僕のコーヒーがお手伝いできたらいいなと思っています。

(永)一ファンとして、今後も菊地君の夢を陰ながら応援しております。
今日は長時間ありがとうございました。


菊地康介ロングインタビュー 目次

|0| 菊地康介という若者
|1| フリースクールで培った「自由」
|2| パナマの寒村に飛ばされて
|3| 新型コロナでビジネス計画が白紙に
|4| モットーは「人生を丁寧に」


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