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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【4〜5月】

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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4〜5月は空飛ぶクルマの運行開始に向けたルート・運賃が公開されるなど、空飛ぶクルマに乗る具体的なイメージが湧く発表がありました。

日本メーカーの部品を使った海外製の機体のお披露目や試験飛行など、日本の技術と海外の迅速で規模が大きなプロジェクトのコラボレーションも。今後日本が空飛ぶクルマ業界においてどのような立ち位置を築くのか、改めて考えさせられます。

今月も国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1.テラドローン、空飛ぶクルマの運航システムをベルギー・米国と共同開発(4/25)

世界で空飛ぶクルマの開発競争が激しくなり、続々と新機体に関する情報が発表される中、日本のベンチャー企業が将来の実用化を見据えたシステム開発に乗り出しています。

東京・渋谷に拠点を置く「Terra Drone株式会社」は4月25日、ベルギーのユニフライ社や米国のアロフト社と協力して空飛ぶクルマ向けの運航システムを開発することを発表しました。

テラドローンはこれまでにドローンの位置や速度などの状況を管理するシステムの開発を行っており、国内ではインフラ点検や測量、海外では農薬散布などに役立つシステム事業を展開しています。

今後、3社はこの技術を応用し、空飛ぶクルマが有人地帯などでも安全に離着陸できるようなシステムを目指して開発を進めるとのこと。完成時期は未定ですが、空飛ぶクルマ関連のメーカーや航空会社などの協業先を募集し、空飛ぶクルマ向け運航システムでのトップシェアを目指すと語りました。

機体開発だけでなく、空飛ぶクルマが実装された社会で必要とされるサービスの今後にも注目です。

2.「空飛ぶクルマ」をどう活かす?1年間の産学連携プロジェクト修了(5/2)

2040年の未来都市を構想し、産学連携で空飛ぶクルマ社会の実装を目指す事業構想研究会「空飛ぶクルマ関連事業プロジェクト研究」が約1年のプロジェクト期間を経て、修了しました。

「空飛ぶクルマ関連事業プロジェクト研究」はセンコー、阪急阪神ホールディングスなど多様な業界から10名の研究員が参加し、それぞれが自社の経営資源を活かした事業構想計画を練り上げるプロジェクト。

多彩なゲスト講師を迎えながら開催してきた全24回の研究会を通じて、最終発表会が行われました。

最終発表会では、参加者が「空飛ぶクルマ×観光」「空飛ぶクルマ×エンターテインメント」「空飛ぶクルマ×物流」などさまざまな切り口で、自社の経営資源と空飛ぶクルマを活かす事業構想計画を発表しました。

空飛ぶクルマが私たちの身近で利用される未来が目の前まで迫っている今、地域課題の解決や物流・交通の改革、防災や医療システム等の対応力改善など、私たちには空飛ぶクルマをいかに利用して社会をより良くするかが問われています。

このプロジェクトから生まれた事業構想のタネがどのように芽吹くのか、今後の実践段階に期待が高まりますね。

3.香川県が空飛ぶクルマの想定飛行ルートを公表。運賃は片道約2万円から(5/6)

「空飛ぶクルマ」の導入に向けて計画を進めている香川県は5月6日、県内での想定飛行ルートや運賃を提示しました。2023年度に取りまとめられた、空飛ぶクルマの「香川版ロードマップ」を詳細にした形で発表され、県民への周知とともに民間事業者のビジネス展開を促す狙いです。

今回公開されたのは、高松空港などと観光地や離島を結ぶ10つのルート。運賃は1人あたり片道約2万円〜4万5000円程度と試算されています。

香川版ロードマップには、2020年代後半に高松港周辺の「サンポート高松」や高松空港を起点に観光客を中心とした輸送を実現させ、30年代前半にはビジネスや日常生活での利用が拡大することが描かれています。30年代後半には県内各地に離着陸の拠点が整備され、新しい交通手段として定着する予想です。

また香川県は、空飛ぶクルマに関連する事業展開を目指す企業には最大500万円の補助金を交付することも発表。「生活やビジネスが画期的に変わる可能性がある。実装が進むように取り組みたい」と県政策課の藤田陽主任は語ります。

4.デンソーがeVTOL向けモーターを披露、出力100kWで従来比6割減の軽量化を実現(5/27)

愛知県刈谷市を本拠に置く自動車部品メーカー「株式会社デンソー」は5月22日〜24日に開催された「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」で、ドイツのLilium社が開発中のeVTOL「Lilium Jet」に採用されたモーターを披露しました。

モーターは1万rpm以上の回転数と100kWの出力を誇り、従来比60%の軽量化を実現。共同開発パートナーには住友ベークライト、信越化学、東レ株式会社などが参加し、Lilium Jetの性能向上に大きく貢献しています。

ちなみに、デンソーのモーターを使用したLilium Jetは4月27日、機体の風洞試験を行い、その様子が動画として公開されました。

Lilium Jetは操縦士を含めて最大7人乗りであり、30個のモーターを使って離着陸と飛行を行います。翼としての能力を示す揚抗比が非常に高く、垂直離着陸の利便性とジェット機並みの速度を兼ね備えていることが特徴です。日本のメーカーも携わる注目のeVTOLに、期待が集まっています。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

5.BETA Technologies、ALIA eVTOLの「トランジション」動画を公開(4/28)

アメリカでeVTOLの開発・製造を手掛ける「BETA Technologies」は、自社が開発する5人乗り機体「ALIA eVTOL」が垂直に離陸し空中を飛行、垂直着陸する様子をYouTubeに公開しました。

BETA社はこの数年間、ALIA eVTOLをヘリコプターのように離陸し、飛行機のように前へ飛び、再びヘリコプターのような飛行に戻る「トランジション」の実現に向けて実証実験を重ねてきました。

動画では、飛行機のように水平に移動する際には上部のプロペラは使用せず、後部の水平推力のみで前へと進んでいる様子が確認できます。無駄なエネルギーを利用する必要がないため、ALIA eVTOLは他の機体よりも空中を飛んでいられる時間が長く、他のeVTOL航空機よりもエネルギー効率が高い機体だと言えるでしょう。

eVTOLの課題の1つとなっていた動力源問題を解決する今回の取り組み。YouTube動画には「人類が初めて月面に着陸したときと同じ気持ちになった」「胸が高鳴る」と賞賛や喜びのコメントが集まっています。

6.Joby社、1,500回以上33,000マイル超えの飛行試験を経て、量産体制へ(5/5)

5月5日、Joby Aviationは自社が開発してきた2機の試作機で総飛行距離33,000マイル以上、1,500回以上の飛行を完了し、量産体制に移ったことを発表しました。

こちらのnoteでも度々取り上げているJoby社の取り組み。Joby社は4年以上前にeVTOLの試作機飛行を開始し、パイロットが登場した状態でこれまでに100回以上の飛行を成功させてきました。

NASAと提携した静音性の確認テストや米空軍パイロットへのeVTOL飛行訓練の実施、2日間で31回のパイロット搭乗飛行を行い安全性などを確認してきたほか、高層ビルが立ち並ぶマンハッタンやニューヨーク市内での飛行も行うなど、着実に実績を積み重ねています。

創設者兼CEOのジョーベン・ベビート氏は「このテストプログラムを通じて、我々は数万マイルを飛行し、電動エアタクシーの実力を示しました。試作機は予想以上の性能を発揮し、航続距離、速度、音響フットプリントの目標を達成しました」と述べた上で、「厳しいテストを終えたことで、自信を持って増産体制に入ることができました」とコメント。

空飛ぶクルマが移動手段の1つとなる未来に向けて、Joby Aviationは今後も第一線を行くこととなるでしょう。

7.中国EHang、中東で初の有人飛行。日本でも12カ所での飛行に成功(5/26)

中国のeVTOLメーカー「億航智能(EHang)」は5月6日、同社が開発する自律飛行型eVTOL「EH216-S」が、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビでの有人デモンストレーション飛行に成功したことを発表しました。

中東での有人デモンストレーション飛行は、初めてのこと。高層消防用の「EH216-F」と航空物流用の「EH216-L」も初飛行に成功し、自律飛行型eVTOLがさまざまな場面で活用できることを証明しました。

EH216-Sは世界で初めてeVTOLの型式証明書を獲得した機体であり、生産許可証(PC)や標準耐空証明書(AC)も中国民用航空局(CAAC)から取得している今注目の機体の1つです。日本でも2023年2月に大分県で初の有人デモ飛行を行っており、2024年3月には宮崎県、兵庫県、岡山県など合計12カ所での飛行実績を持っています。

次々と世界各国で試験飛行を成功させるEHangの空飛ぶクルマ。次はどこで試験飛行を行うのか、今後の動きに注目ですね。

8.Horizon Aircraft、ハイブリッドeVTOL「Cavorite」のプロトタイプ機の飛行試験動画を公開(5/11)

5月11日、カナダのeVTOL開発企業「Horizon Aircraft」は自社の開発する「Cavorite X7 eVTOL」プロトタイプ機について大規模な飛行試験を完了し、夏半ばまでの完全な飛行試験プログラム完了に向けてアップデートを行っていることを発表しました。

Cavorite X7 eVTOLは現在、カナダ運輸省の Special Flight Operations Certificate (SFOC) に基づいて管理される厳格な飛行試験プログラムを通過し、一定の基準に達しつつあります。試験は夏半ばまでに完了する予定で、航空機は期待通りの安定性と制御性を示し続けているとのことです。

飛行試験が終わると、Horizon Aircraftは今回のプロトタイプ機の試験結果を活用し、本格的な航空機の開発を進めていきます。

Cavorite X7 eVTOLはハイブリッド電気主電源システムを使用し、効率的かつ安全にバッテリーを再充電することによって、より速くより多くの貨物を運ぶことを実現した機体。Horizon Aircraftは「各社が空飛ぶクルマ開発を進める中でも、高度エアモビリティ(AAM)市場に迅速に対応できる態勢を整えている」と自信を示しました。

9.Vertical Connect社、自律型eVTOL「Genesis-X1」を発表。都市内での移動に特化したコンパクトでエコなeVTOL(5/15)

機体開発の動きは、地球の裏側でも進んでいます。ブラジルの民間航空企業「Vertical Connect社」は、迅速かつ安全でエコロジカルに人々を移動させるために設計された2人乗りeVTOL「Genesis-X1」を発表しました。

「都市のモビリティを再定義する、自律型2人乗りeVTOL」と称しており、動力源は100%電気。最高速度は130km/hで飛行時間は60分ほどと長距離移動を目的に作られたeVTOLに比べると性能は劣りますが、その分ポイント間を素早く安全に移動することに特化した、コンパクトでエコな機体となっています。

その他にもvertical connect社は農家や牧場主向けの散水eVTOLや乗客2名と病院用担架の輸送を可能にした航空救急eVTOLなど、目的・用途に沿ったeVTOLを開発しています。

新しい技術は、課題を解決するために生まれる。空飛ぶクルマ開発の本来の姿を見失わず、目的に沿った機体開発を行うvertical connectが、今後どのような機体を開発するのかワクワクしますね。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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