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HAAM注目!今月の空飛ぶクルマ最新ニュースまとめ【3〜4月】

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】(以下、HAAM)では毎月、次世代の乗り物「空飛ぶクルマ」の最新情報をピックアップし、国内と海外に分けてお届けしています。

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3〜4月は、大手保険代理店の空飛ぶクルマ事業者向け保険販売開始、国内最大級の建築事務所が空飛ぶクルマのデザインに乗り出すなど、機体開発企業以外における、空飛ぶクルマ社会実現に向けた動きが見られました。

海外では国を超えた機体の売買や、空飛ぶクルマ実装に向けた実証実験が行われ、空の移動革命のグローバルさを再認識させられます。

今月も国内と海外に分けて、空飛ぶクルマに関する最新情報をお届けします。

【国内の空飛ぶクルマニュース】

1.損害保険ジャパン、空飛ぶクルマ事業者向け保険を発売開始(4/5)

空飛ぶクルマのより安心・安全な社会実装に向けて、新たな業界が動き始めました。

国内最大級の保険代理店・損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)は5日、「空飛ぶクルマ事業者専用賠償責任保険」を開発し、販売を開始したことを発表しました。

空飛ぶクルマは安全性に関する検証が進む一方、まだ開発されたばかりの新しい技術であることに変わりはありません。

国内における社会実装と普及にはいまだ多くの課題があり、事業者が抱えるリスクは機体の運行リスクだけでなく、機体製造やポート管理に関わる賠償責任など多岐にわたります。

そこで開発された今回の保険では、機体、部品、その他関連機器等の製造・加工・整備・販売に関わる製造物責任や、バーティポートの管理運営に関わる賠償責任等を包括的に補償します。事業者の賠償リスクを包括的にカバーし、空飛ぶクルマ事業に参入する事業者が抱えるリスクを幅広くサポートするとのことです。

損保ジャパンは保険の提供を通じて「新しいモビリティ社会の発展に貢献するとともに、今後も多くの企業と連携する」とコメント。

損保ジャパンの保険が今後どのようにアップデートされるのか?後に続く保険会社は現れるのか?注目が集まります。

2.三菱地所設計、建築物も含めた空飛ぶクルマ社会のデザインを提案。シームレスな移動の実現を目指す(4/10)

三菱地所グループの建築設計事務所「三菱地所設計」は10日、新型eVTOL「Passenger VTOL」のデザインを発表しました。

「Passenger VTOL」はプロペラ・キャビン・走行の3つのユニットから構成された、4人乗りのモビリティ。空飛ぶクルマの離着陸場「バーティポート」と一体的に機能し、ポートからポートの空中だけでなく、空中と地上の「間」の移動をもシームレスにつなぎます。

また、本提案にはeVTOLそのものの姿だけでなく、「進化したモビリティがインストールされた未来のまちのあり方」も含まれました。シームレス移動を叶える新時代のモビリティ「SMS:Seamless Mobility System」のアイデアを取り入れたまちづくりの構想を発表し、空中のより自由な利用を目指すことを示しています。

ビルの屋上や中間層にバーティポートを設置し、eVTOLを介して人やモノがビルへと直接アクセスすることを可能にするアイデアは、都市部で建物の設計を続けてきた三菱地所ならではのアプローチです。

三菱地所設計は、この取り組みが都市における移動の利便性を一層向上させる「都市空間をより可変的で、自由に使えるものにしていくための構想」であるとともに、ビルという建物のタイポロジー(建築の型)に大きな変革をもたらすとしています。

シームレスな移動を可能とするモビリティ「Passenger VTOL」。建築事務所が設計する空飛ぶクルマは、都市における物流・人流をどのように変えるのでしょうか。

3.AirXがブラジル空飛ぶクルマ開発企業とeVTOL購買権契約締結(4/18)

ヘリコプター運航などを手掛けるAirXは、空飛ぶクルマの開発を手がけるEVE Air Mobilityと、電動垂直離着陸機(eVTOL)購買権に関する基本合意書契約を締結したと発表しました。

契約には最大10機のeVTOL確定オーダーと40機のオプション購入権に加えて、都市型航空交通管理ソフトウェア「Vector」の活用が盛り込まれました。
EVE Air Mobilityは、ブラジルの大手旅客機メーカーEMBRAER(エンブラエル)がグループ展開する開発会社であり、eVTOL開発の他にも航空交通管理システム、グローバルサービスおよびサポートネットワークの提供などを行っています。
AirXはEVE社と提携した背景として、EVE社の開発するeVTOLは、土地の広さが限られたエリアで力を発揮する「リフト・クルーズタイプ」という形状をしており、日本の都市部や屋上ポートへの離発着に適していると想定したことを示しました。
2026~27年の日本国内でのサービス開始を目指し、AirXの動きがより加速していくことが伺えます。

【海外の空飛ぶクルマニュース】

4.中国「XPENG AEROHT」が開発するモジュール式空飛ぶクルマ、型式証明書申請が受理される(3/26)

今、注目を集めている中国の空飛ぶクルマ開発。国を挙げて開発支援を行っていることを先月のニュースでもお伝えしましたが、この1ヶ月でも新たな動きが見えてきました。

先月26日、XPENG AEROHTのモジュール式空飛ぶクルマ「エアモジュール (コード名: X3-F) 」が中国中南部民用航空局(CAAC) によって正式に型式証明申請を受理されました。

XPENG AEROHTのモジュール式空飛ぶクルマは中国が開発した初の個人ユーザー向け有人電動垂直離着陸機であり、地上でも空中でも使えるよう自動で分離・結合することが可能です。

今回発行された型式証明書は、CAACが中国民用航空局の定める「民間航空製品及び部品の認定承認に関する規則」に基づいて発行されたもの。XPENG AEROHTの機体とプロジェクトの実現可能性が、当局に認められたことを意味しています。

今後、エアモジュールは製造された1機ごとの航空機の安全性や環境適合性を検査する「耐空証明」段階に入ります。その際「型式証明」段階にCAACが深く関与していることは、認定に有利に働くことでしょう。

5.スロバキア「KleinVision」、自社開発の空飛ぶクルマ「AirCar」を中国企業にライセンシング(3/28)

海外からも、中国の空飛ぶクルマ業界に参入する動きが見られます。

スロバキアの航空機製造メーカー「KleinVision」は、空飛ぶクルマを生産するための地域限定ライセンスを中国の河北建新飞行汽车科技有限公司(河北建新)に売却し、合意に達したと発表しました。

このライセンス契約により、河北建新は特定の地域内でKleinVisionの最先端技術を利用した空飛ぶクルマを製造・販売する独占権を獲得します。

河北建新がKleinVisionの画期的な技術を活用して、中国における輸送基準を再定義する態勢を整える一方、KleinVisionは独占権の付与後もイノベーションを促進し、輸送技術の進歩を推進するための戦略的提携を継続するとのことです。

KleinVision取締役会長・Stefan Klein氏は、河北建新の卓越性と市場リーダーシップへの献身が、KleinVisionのビジョン「世界規模でモビリティの未来を形作る」と完全に一致するとした上で、「当社の認定空飛ぶクルマ技術のライセンスを、尊敬すべき中国企業に売却したことを発表できることを嬉しく思います。」とコメント。

モビリティに革命を起こし、人々の移動方法を向上させるために世界中のパートナーとのコラボレーションを目指すKleinVisionの、先進的な取り組みとなったことを示しました。毎月新たな動きが見える中国の空飛ぶクルマ業界に、目が離せません。

6.ドバイ「Aviterra」、オランダ「PAL-V」の空飛ぶクルマ100台以上を取得(3/28)

ドバイを拠点とするAviterra社は、中東とアフリカに空飛ぶクルマを導入するため、オランダのPAL-V社から空飛ぶクルマ「PAL-V Liberty」を100台以上取得する契約を締結しました。

PAL-V Libertyは、2人乗りの空陸両用車。走行モードでは100馬力のエンジンを使い、最高時速160kmで道を駆けるスポーツカーとして走行する一方、飛行モードでは最高時速180kmで空を飛ぶジャイロプレーンとなります。

Aviterra社はPAL-V社の開発する空飛ぶクルマについて「私たちの顧客の地域旅行の必要条件にとって完璧なツール」であり、「私たちが知っているモビリティを変える革新的なもの」であるとコメント。

混雑した道路から独立して移動し、通勤時間や移動時間を短縮するなど今後の可能性が見込まれています。

また、PAL-V社はAviterra社に対して「中東・アフリカにおける販売・マーケティング活動をサポートする強力なパートナー」とコメント。PAL-Vは空飛ぶクルマビジネスを成長させるため、世界中に地域オフィスを設立中であり、この機会を活かしたいと考えていることを示しました。

両者は今後数ヶ月の間に、開発と認証の成功に関する最新情報があると発表しています。中東・アフリカの空飛ぶクルマ市場を牽引する2社の今後に注目です。

7.ベルギー「Unifly NV」、ヨーロッパ6都市でのドローン・空飛ぶクルマ大規模飛行実証に参加(4/2)

2024年4月2日、ベルギーに本社を置く運航管理システム(UTM)プロバイダー「Unifly NV(以下、ユニフライ)」は、有人機の航空交通管理システムとU-space※の統合を目指すプロジェクト「CORUS-XUAM」に参加。

※U-space:ヨーロッパの、ドローン実装のための規制の枠組みまで含めた、運航管理に関する概念。

ヨーロッパの6つの都市を対象に、都市部や空港などドローンや空飛ぶクルマの運用が難しいとされる環境で、都市航空交通(UAM)を飛行させる実証実験に成功したことを発表しました。

「CORUS-XUAM」では、イギリスやフランスなどヨーロッパの6つの都市で、ドローンなどの無人航空機システム(UAS)と空飛ぶクルマをはじめとする電動垂直離着陸機(eVTOL)を使った、大規模な実証実験を実施します。

今回の実験ではユニフライの機体を利用し、旅客輸送や物流、緊急対応、監視といった目的を設定し、都市、郊外、都市間といった異なるシチュエーションのもと、飛行実験が行われました。

プロジェクトは無事に成功。実験結果はUAMのニーズ・規制の進化や、他の研究開発プロジェクトからのフィードバックを反映させた上で、U-spaceの参照マニュアルとして機能する運用計画書に活用されたとのことです。

ヨーロッパでは、他にも複数の航空管制における近代化プログラムが行われているとのこと。CORUS-XUAMの運営を行う共同事業体は、他のプロジェクトにもこの成果を活用し、研究と実験を続けたいとコメントしています。

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新しい情報が入り次第、今後も空飛ぶクルマの最新ニュースをお届けしていきます。

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▼「空飛ぶクルマってそもそもどんなもの?」という方は、まずはこちらの記事をご覧ください!

HYOGO空飛ぶクルマ研究室【HAAM】
SDGs思考で未来の空を構想するシンクタンクをコンセプトに、空飛ぶクルマの実用化が期待される2030年代に社会の中核を担うZ世代以降の若者【大学生・高校生】と共に観光・地域創生分野における具体的なビジネスモデルを考えるラボラトリー。大学生向けの空飛ぶゼミや高校生のSDGsへの関心を集める企画などを実施。


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