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大人がハマる昆虫研究

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40になって知ったディープな昆虫の世界。身近な環境も、視点次第で宝の山に。
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#蛾

小蛾類の展翅法

小蛾類の展翅法

はじめに 昨今の昆虫界において蛾類愛好家は意外と多いが、いわゆる小蛾類(ミクロレピ)とよばれる小型種の愛好家は依然として少数派である。小蛾類は、小型ながら、金属光沢や豊かな色彩を持つ美麗種が多い。

小蛾類では、生態も未解明の種が多いため、コレクションの対象としてのみならず研究対象としても魅力的な分類群と思われるが、標本作成と種同定の困難さが敷居を高くしている。小蛾類の展翅法に関しては、過去にいく

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ヒルガオハモグリガの謎―身近な小蛾類の不思議な生態―

ヒルガオハモグリガの謎―身近な小蛾類の不思議な生態―

ヒルガオハモグリガBedellia somnulentellaという蛾がいる。開張(翅を広げた大きさ)が1 cmほどの小さな蛾である(下写真)。

本種はその名の通り、幼虫がヒルガオ類の葉の内部に潜って、表皮を残して内部の組織を摂食する。いわゆる小蛾類と呼ばれる小型の蛾の幼虫は、このような潜葉性の生態を持つもの(リーフマイナー)が多い。幼虫の潜葉食痕(マイン)は、下写真のような感じ。ヒルガオ類は、

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原始的鱗翅類 コバネガ

原始的鱗翅類 コバネガ

鱗翅目(チョウ目)は、昆虫の中でチョウや蛾を含む巨大な分類群であるが、その中で、コバネガ科という原始的な仲間がいる。一般に、チョウや蛾の成虫は、花の蜜や樹液などを吸うためのストロー型の口器を持っているが、コバネガの成虫にはそれがない。また、コバネガの幼虫は、他の鱗翅目の幼虫が目もくれないジャゴケ類を食べることで知られている。成虫の発生時期は短く、時期は種によって異なるが、春先から初夏にかけて、1か

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夜、アブラムシの甘露に集まる蛾たち

夜、アブラムシの甘露に集まる蛾たち

トウネズミモチという外来の常緑樹がある。市街地でも生垣や庭木等に使われているが、鳥が種子を分散するようで、川の土手とかで侵略的に自生しているのもよく見る樹木である。初夏、この木の枝の先端の若葉が丸まるように変形し、白っぽい物質が付着して、何やらベタ付く水が葉から滴り落ちているのがよく見られる。

この美しさに欠ける光景は、アブラムシの一種であるトウネズミモチハマキワタムシのしわざである。本種は初夏

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アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

はじめにアキノヒメミノガ Bacotia sakabei Seino, 1981という虫がいる。ミノガ科(いわゆるミノムシ類)に属する小型で焦げ茶色の地味な蛾である。ミノムシ類は、幼虫が植物質の材料を綴り合せて作ったポータブルケース(ミノ)を背負って暮らす生態で広く知られている。また、下手に自然度の高い所よりも、人間の居住環境近くの方が多く見られるため、蛾類の中では特に身近な仲間である。その中で、

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