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カレンダーの向こう側〜農家のお茶の間〜 Vol.2 【海老沢 啓充さん】野菜と一緒に、子どもたちも育つ農園

現在、農家プロデュース&デザイン集団の「HYAKUSHO」では、クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」を通じて資金調達に成功した「農家さんの 365 日をそのまま伝える HYAKUSHO カレンダー」の制作プロジェクトを実施中です。

カレンダーは、ひと月にひとりずつ農家さんをご紹介。農家さんへの取材から見えたストーリーを通して、農家さんと消費者を繋げることを目指し、2022年に向けてお届けできるよう、走り出しています。

こちらのnoteにて展開するWEB連載「カレンダーの向こう側〜農家のお茶の間〜」では、農家さんへの取材から見えた「つくり手の生き方」を、より詳しくお伝えしていきます。ぜひ読者の皆さんにも、農家さんと一緒にお茶を飲みながら、お話を聞いているような気分を味わっていただけると幸いです。

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今回の農家さんは、茨城県から移住し、現在は長野県塩尻市で、えびさわ農園を営む海老沢 啓充(えびさわ・ひろみつ)さん。就農前はジュエリー作家や、大手外食産業で料理人などを経験しましたが、一念発起して農業法人に入ります。
その後、親戚の住む長野県の自然環境が、子育てに好ましいと惹かれて塩尻市に移住。こちらでも農業法人で働いた後、2020年春に独立をしました。

4人のお子さんたちは、学校や保育園の後に畑で遊ぶのが日課。インタビュー時も顔を出してくれたので、にぎやかな時間となりました。

山麓に広がる豊かな畑では、野菜だけでなく、子どもたちもパワフルに育つ――。就農するキッカケや、自然の中の子育てについて、お話を伺いました。

信頼できる野菜を、1から作りたい

「外食産業では、採算がとれるように、安価な材料を購入するのがお約束。しかし、胃袋に入るものには、こだわるべきだと思ったんです。」

前職で料理人を務めて感じたことは、提供価格に縛られることにより、食材にこだわれない歯がゆさ。日本産を扱いたくても購入できなかったり、リスクを取らざるを得なかったりする場面に、立ち会ってきました。

「日本人が食べるものは、日本でつくるべきだと思っていました。そして、農薬をなるべく使わない、地球や身体に優しい有機食材を提供したい、と思い立ち、自分で作ることを決意して、農業の世界に入りました。」

茨城県と塩尻市にて農業法人に就業後、2020年春に独立。現在はマルシェや、有機野菜の宅配サービスを、主な販売先としています。


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自然の力強さを、肌で感じる子育て環境

茨城県で就農した海老沢さんですが、長野県に移住した理由は、自然の豊かさの中で、子育てをしたいと希望したから。

「長野に初めて訪れたときは衝撃を受けました。山に囲まれて景色もいいし、自然が豊か。子どもたちに、自然の仕組みを知ってほしいと移住を希望しました。畑や自然が見せる光景は、すべてが学びです。」

学校や保育園の後、子どもたちは畑に集合。遊び道具は、木の枝に紐を括り付けたブランコや、収穫用の箱、花や草木などの、畑にあるものすべてです。試行錯誤で、遊ぶ方法を編み出します。夏には、ひとり一株のキュウリを育てて、収穫を行いました。

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海老沢家の食卓には、基本的にこの畑で育った野菜が並びます。

「安心・安全なものを食べて育ってほしいと思っているので、食材づくりを担えるのは、とても嬉しいです。そして採れたての野菜が食べられます。」

スーパーに並ぶ野菜は、収穫から数日経っていることが多いもの。新鮮かつ、お父さんがこだわりを持って育てた野菜を食べている子どもたちは、野菜が大好きです。

「もちろんお客さんのためにつくっていますが、“この子らのために”という思いも大きいです。身近に届けたい人がいるのが、いいですよね。美味しいと言われると活力になります。」

野菜や果物を人からもらうことも多いとのことですが、子ども達は食べる前に、誰がつくったものなのか、質問をするのだそう。

「生産者さんによって味が変わりますし、生産者さんを知って、思い浮かべながら食べたいのかもしれません。」

食材の出どころを知れること、それにより感謝の気持ちや、安心感を抱くこと。子ども達は、その価値をすでに実感しているのかもしれません。 

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食べる人の食卓まで想像する、ものづくり

海老沢さんの出展するマルシェで人気なのは、スイスチャード(日本名:フダンソウ)。ホウレンソウに似ていますが、茎の色が赤や黄と、珍しい品種です。

「鮮やかな色合いを、皆さんに喜んでもらいたい。マルシェは、お客さんと料理方法などの話をしたり、野菜が売れていく様子を見られたりと、とても楽しいですね。」

以前は料理人として活躍した海老沢さん。自分の野菜が、どのように料理されるのか、どのように食べられるのか、想像することを忘れません。

「農家って、エンドカスタマーが見えにくい仕事でもあるんです。しかし、私は畑で仕事を完結させてしまうのではなく、マルシェにも出店したいし、なるべくきれいに野菜の箱詰めをしたい、料理しやすいものを提供したい。さっきのスイスチャードも、それだけで食卓に鮮やかさをもたらすので、彩りを考えなくて楽だし、驚きを提供できます。」

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冬期は、切り干し大根の加工を行う予定です。市販品で多い、細長い紐状ではなく、短く太くサイズを変えて、販売します。

「最初からサイズを短くしておけば、料理前にカットする手間が省けます。お客さんが楽できればいいでしょっていう考えです。あと、太い切り干し大根って、おいしいんですよ。
どんな人が買って、どのように扱われるのかまで、頭で考えておかないといけないな、と思っています。」

お客さんと、そして、地域や家族のため

今後行っていくことは、農園を知ってもらうためのイベント開催や、マルシェ出店。そして、視野に入れているのは地域貢献です。 

「地域貢献の第一歩は、人材雇用。誰かとやっていきたいですね。地元の人を巻き込んで、楽しく運営していけたらと考えています。」

また、2年目の2021年は、取り扱い野菜を絞ります。2020年は、今の畑も1年目だったので、土の具合を見るために、いろんな野菜を育てました。

「効率的に収穫できる野菜を、見極めて育てていきたいですね。野菜の生育は、手をかけた分だけ、如実に現れてきます。今年も手を掛けていきたい。いや、掛けなくてはいけないんです。」

家族のために稼ぐことも考えながら、野菜に対するこだわりを深く持つ。思いを抱いて、両立を目指します。

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笑いが絶えない海老沢家の農園。 “お父さんのつくった野菜はどうですか?“ 子どもたちに聞いてみると、「おいしいーーーー!」と口々に、元気に叫びました。

野菜と一緒に、子どもたちも育つ、えびさわ農園。父の顔から、笑顔がこぼれます。

海老沢 啓充

長野県塩尻市で2020年4月から独立。有機野菜を作る『えびさわ農園』を運営。農業を通して、自然と人々の暮らしを豊かにする事を目指して、畑から学ぶ毎日。環境の事を考えて、除草剤や化学肥料は一切使わず、スイスチャード、ブロッコリー、サニーレタス、リーフレタスを作る。「信州の自然の恵みをぜひ体験してください。」

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