見出し画像

「夜の桜」

「桜が好きか」
Yes or No の質問で、私は"No"と答える。

答えに選択肢が不要であれば、
「花びらだけは好きだ。他は好きじゃない。」
と答えるだろう。

桜の木、桜の花、桜並木
どれを撮ってもパッとしないのだ。
他の植物の方が私の目には美しく映る。

唯一好きな花びらは、
雨に晒されると地と溶けこみ
踏まれると濁り
放置されると枯れる
「儚い」を象徴したようなものだ。
触るとやさしく私を包むような花びらはなかなか見ることができない。


「好きになれない」

今年も桜並木を撮ってみたはいいものの、
桜の影はくすんだ色をしていてやはり好むことができなかった。

「好きになれない」

花粉、観光客、新学期、、、、
外に出る気力をなくす事ばかりで、より桜を避けてしまう。

「好きになりたい」
そう思うのに。


でも違った。私が知らないだけだった。


夜に散歩をする。何年ぶりかの。
気持ちを落ち着かせるために。

ゆっくりと気持ちが落ち着き始めると
ようやく景色を見ることができる。

ちょうど橋のところに立っていた。
桜が目の前にある場所で。

「綺麗」

そう口に出た。
いつもと変わらない桜。苦手とするソメイヨシノで。
褒め言葉が出たことに自分でも驚いて、戸惑った。

理由はすぐにわかった。
白いのだ。
暗いからこそ。

「あぁ私はこの色に染まりたいのだ。」

気分が晴れないからこそ行う夜の散歩でしか思えないことだろう。
そして
自分の見識の狭さに悩んでいたのに、それを体現されてしまったのだ。

悔しいとは思わなかった。ただただ腑に落ちた。


今、
桜を好きになった。

同時に、

"見識を深めるための努力を続けよう。"
その決意が強固なものになった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?