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小説

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物語です。
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#二次創作

FUSE 2

3/
 「……それじゃあ、お疲れ様です」
 「おー、おつかれー」
 挨拶と共に会釈をする。
 タバコを吸っていた夜勤の先輩がくれた気の抜けた返事がバックヤードに響いた。
 バックヤードの扉を抜けて店内に出るが客はいない。
 窓の外はすっかり真っ暗で、もう数時間もすれば日付が変わるのだからそれはそうだろう。
 俺は買い物をすることもなく店の扉に向かった。
 別に特に用事は無い。
 あとは帰って眠るだ

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FUSE 1

 気が付けば、また海岸沿いへと足を運んでいた。
 滅多に車の通らない閑散とした国道沿いの、ろくに整備もされていないボロボロの柵の向こうにはいつもと同じ砂浜と海、そして濃い橙をした夕陽がぽっかりと浮かんでいる。
 季節は夏で、連日猛暑日を記録しているらしいのだが、海風の吹くこの場所、この時間帯は適度に過ごしやすい気温だ。
 そんな場所で、俺はといえば特に何をする訳でもなく時間を浪費するように、ただた

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