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小説

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2024年2月の記事一覧

学食へ行こう 7

 「はー、なるほど。大変ですねぇ……」
 二人が学校を休んだ理由を聞いて出てきた感想は、そんな他人事な感想だった。
 いや、そもそも事実として実際他人事なのだから仕方がない。
 散々事件に巻き込まれているので、自分でも忘れそうになるが俺は本当に普通の男子高校生なのだ。
 他人よりも顔が怖いかもしれないけれど、それだけだ。
 たまたま、奇妙な巡り合わせによって目の前の『特別な』先輩二人と知り合い、こ

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学食へ行こう 6

 前回の失敗もあるので食券を渡す場所は問題なかった。
 食券を渡したおばちゃんにビビられる、というのは今回もあった。
 今回も軽くへこんだ。
 今回に関しては俺の直前に食券を渡した部長がおばちゃんにビビられていなかったので余計に、だ。
 まぁ、部長が怖がられるのは部長の普段の行いありきなので、それらを知らないであろう食堂のおばちゃんが怖がらないのは当然なのだろうけれど。
 部長、先入観無しで見ると

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学食へ行こう 5

 「部長はどうします?」
 伊吹先輩はまだまだ時間が掛かりそうなので先に部長に声を掛けた。
 「あー……」
 部長はちらと券売機を除き込んでから、財布から五千円札を取り出してこちらに差し出した。
 「海老天そばにしろ」
 「オッケーです」
 お札を受け取り、券売機に飲み込ませ、海老天そばのボタンを押す。
 すぐに機械が指定した食券を吐き出した。
 取り出した食券を部長に渡す。
 「周も早く決めろ」

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学食へ行こう 4

 チラチラと視線がこちらに向くのを背中越しに感じる。
 気不味い。
 背を縮め、出来る限り目立たないようにする。
 視線に気付いたらしい伊吹先輩が振り返り、朗らかな笑顔で小さく手を振った。
 男女どちらの声なのか判別し難い大きさで「きゃー!」と歓声が上がった。
 思わず、振り返ってしまった。
 歓声を上げていた、今度は女子の集団と目が合う。
 先程まで伊吹先輩に手を振られて一喜一憂していた集団から

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