東証一部上場の「変な」会社
資本主義社会では、最短距離で利益を上げていくことが求められる傾向が強いですが、最近はその傾向が変質しているように思います。
●マネーゲームでお金を動かす
●お金を得るための行動する
こういうことが今の社会のルールのように思えます。
しかし今では、「きれいごと抜きで」夢を求めてお金を使う、夢を求めて仕事をするというあり方が、資本主義社会でも様々な形で目につくようになってきたと思います。
この観点では昔から様々思うことがあるので、今回はこの点について気になっていることを書いてみます。
持続可能性が資本主義社会で重視されるようになった
投資ではESG投資という言葉を5~6年前から耳にするようになりました。
環境に配慮している、人権へ配慮している、多様性を大事にしている等が会社を評価する指標としても重要視されてきており、実際にこういった点に配慮している会社に投資した方が、投資のパフォーマンスがよいというデータも出てきています。
そういった流れもあるのか、投資会社がESG投資に馴染まない会社を避ける傾向が出てきています。例えば、ゴールドマン・サックス社が2020年7月以降は女性の取締役がいない企業の上場を支援しない旨を表明したとの報道も出ています。
また、投資家への利益還元では配当を非常に重視する傾向が続いてきましたが、コロナショック等もあり、見直しをする機運も出てきています。
ただ、これはESG投資等に合致した施策を取れば
「短期間で儲かるのでやっているだけ」
と考えることもできなくもありません。
しかし、そもそもそういう意図からお金と向き合っているとは考えづらい傾向が他にもあります。
利益をより度外視する動きが見えるようになってきた
その新しい動きとして、持続可能性から踏み込み、具体的には、「利益のための投資から夢への投資」へとお金の流れが変わってきているように感じています。その特徴は以下の通りです。
●夢を追いかけている
●遊び心がある
●型にはまっていない
●経営者が従業員を「1人の人間」としてみている
●社員が人間くさい
不思議なことに東証一部上場企業の会社の経営においても、そのような傾向のある会社が散見されます。
具体例として以下いくつか挙げてみます。
東証一部上場の「変な」会社
ユーグレナ
ユーグレナ社はミドリムシに特化した事業を展開しており、ミドリムシからのエネルギーでロケットまで飛ばそうとしている会社です。ある意味で荒唐無稽であると同時に利益が見込めるのか未知数です。しかし、この会社は東証一部上場企業であり、様々なところから資金が集まってくる会社です。
過去、社長の出雲さんの著書を昔読んだことがあるのですが、その並々ならぬ事業への意欲が印象的でした。
先日あるウェビナーで出雲さんのお話を聞く機会もありました。「事業として今後利益を出していけそうか?」との司会者からの質問に対して、「事業は利益が見込める計算が立って始めるものではなく、自分でこれがやると信じられるものがあるからやるのだ」という趣旨の回答をされていました。まさに本の内容通りの方だなと感じました。
そのときのお話の中では、創業当時は投資家からのプレッシャーがきつく大変だったそうです。しかし、ここ数年で投資環境が変わり資金調達がしやすくなったということです。
カヤック
社名に「面白法人」と書いているくらいで、遊び心にあふれたサービスが満載です。本社の所在地が鎌倉というのも珍しいです。
例えば、「社畜ミュージアム」というアート作品を作っています。これは、劣悪な労働環境の中で働く人を油彩や彫刻などのアート作品で表現した架空の美術館です
画像引用:中小機構公式チャンネル:https://youtu.be/V35knsZr2GM
IT企業ながら移住支援に取り組んでいたり、地域社会との絆を大切にする「鎌倉資本主義」を提唱するなど、事業を一言で表現することが困難な会社です。
ガイアックス
ガイアックスはソーシャルメディアとシェアリングエコノミーに関する事業を展開するIT企業です。
昔は他の会社と同様に売上至上主義の色合いがある会社で、失業率がとても高い会社だったそうです。
しかし、メンバーお互いに自由にいろんな意見を言い合える「泣ける組織」を作る改革を行い、今や自律的な組織を標榜する代表的な会社の1つとなっています。
仕事はテレワークが基本でオフィスへの出勤は会社の方からむしろ制限しているくらいであるという話を社員の方から伺ったことがあります。代表や役員の方々にもイベント等でお会いしたことがありますが、とてもフランクで上場企業の経営陣とは思えません。
参考:ガイアックスホームページ
アカツキ
ソーシャルゲームなどを作っているIT企業です。
オフィス内には、アートやクリエイティブなものや遊びのある空間がある特徴的な空間になっています。
この会社のヴィジョンは「ハートドリブンな世界へ」でミッションは「世界をカラフルに輝かせよう」であり、東証一部上場企業が掲げるものとしては異質です。
創業者の塩田さんは内面世界の大切さを大事にされていて、コーチングを学ばれています。
社員との関係性も大事にしていて、お互いに考えていることを分かち合うワークショップを開催したり、自己表現やアートをテーマにし合宿やフェスを開催するなども行っています。
Snow Peak
Snow Peakも個性的な東証一部企業です。新潟県に本社があるキャンプ用品を扱っているメーカーで、最近はアウトドアでの研修事業なども行っています。
キャンプ好きな方でスノーピーク社のキャンプ用品を愛用している方も多いでしょう。
社長は経営者ながら毎年それなりの期間キャンプをしていますし、社員もキャンプ好きが集まってきているところが特徴的です。さらに、社員がユーザーとも一緒になってキャンプを行うイベントも行っています。
物語コーポレーション
焼肉きんぐなどを展開する飲食業の会社です。
離職率が高い飲食業界では異例の離職率の低さで、社員1人1人をとても大切にしています。
例えば、採用が内定すると会社は、応募者の家族に、お子さんにどうして内定を出したのか理由を書き記す手紙を送ります。
入社式は日本一長いとまで言われるくらいで、社長がオリジナル内容の「激励書」を社員1人1人に読み上げたり、あらかじめ家族にインタビューして録音した音声メッセージが流したりします。
本部から予算をお店に押し付けることはせず、1人1人が個性を出した上でのマナーを大切にしていて、組織の論理よりも個を大切にする社風です。
「お客様を上に自分たちを下におくマナー」を否定しており、各店舗にはお客様におせっかいする「焼肉ポリス」も配置されています。
会社の経営理念は「Smile&Sexy」です。上場する際に、経営理念を変更した方がよいと主幹事証券にアドバイスされても変更せず、今もこの経営理念で事業を行っています。
まとめ
いずれの会社も個性があると同時に他の会社にない独自性があります。それはどれも目には見えにくいものであり、バランスシートなど経営の数値としては評価しにくい部分も少なくありません。
しかしそれでも上記の会社は、いずれも資本主義の論理に則った証券市場に上場している会社です。
今の世界経済は資本主義経済をベースに動いています。しかし、その資本主義社会そのものが目に見えない形で変質していると考えることもできるのかもしれません。
お金の世界もいつのまにか、今や目に見えないものに価値を見出す世界に変わりつつあります。その変化は一見するとゆっくりで形には表れにくいですが、すでに様々な形になっています。
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