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#31 最近よんだもの(6)

「君が手にするはずだった黄金について」(小川哲、新潮社)

 過度な承認欲求は身を滅ぼす、という話ではなく、人は承認欲求を満たそうとし続ける悲しい生き物だ、という話。自分がここnoteで書くことも、承認欲求を満たすため。面白かった。タイトルがよい。

 イタい生き方をしないように、という問題ではない。人は生きている限りイタいのだ、おそらく。承認欲求というのは怪物だなあ、と思う。殺したり消し去ることはできない。うまく飼い慣らしていくしかないのだろう、という気がしている。

 小川哲が漫画家の山本さほと結婚したと知り、声を上げて驚いた。この驚きを誰かに話したかったが、小川哲と山本さほ両方を知っている人はまわりにいなかった。山本さほは、著作のいくつかと、ファミ通の連載を楽しみに読んでいる。くだんのゲーム雑誌の読者層がどれほどなのか知らないが、KindleUnlimitedで、伊集院光のコラムと桜玉吉の4コマを読んでいます。山本さほが京極夏彦邸を訪れた話は、面白かったなあ。

「レシート探訪」(藤沢あかり、技術評論社)

 書評で評判を知り、読んでみた。丁寧に生きている人たちの地に足のついた生活記録という感じ。レシートからどんな生活をしている人なのか探っていくような内容かと勝手に思っていたら、ちょっと違ったけど、楽しく読ませてもらいました。

 自分が取材するなら、ストロング系缶チューハイをまた何本も買ってしまった、というレシートをポケットに突っ込んでいるような人を選ぶかなあ。外国人労働者とか。「アル中ワンダーランド」(まんきつ、扶桑社文庫)も読みました。よいですな。

 連休に浮かれて旅関係の本をいくつか。「旅は暮らしの深呼吸」(本田さおり、集英社)、「50歳からのごきげんひとり旅」(山脇りこ、だいわ文庫)、「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」(益田ミリ、幻冬舎文庫)。どれもきっちり読了した、という感じでもないが、旅の前に浮かれて読むには最適。「道元と曹洞宗」(洋泉社)は勉強になりました。

「鉄鼠の檻」(京極夏彦、講談社文庫)

 おそらく3度目の読了。講談社文庫と書いたが、文庫は超鈍器本で読みづらくなってきたので、途中からは買い直した電子書籍で。いや面白い。改めてすごい小説だなあ。膨大な禅や仏教の知識を生かした仕掛けがたまらない。私の禅にまつわる浅い知識は、若いころ読んだこの作品に寄るものが大きいと再認識した。「薔薇の名前」もまた読みたい。年末年始は3日しか休めないけど、百鬼夜行シリーズ9冊合本版を読むか、いや「鵼の碑」かなやっぱり。

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