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#63 百鬼堂農園(14) 左門豊作

 「あ、おにいちゃん」

 畑への道すがら、さえない50代の私をおにいちゃんと呼ぶのは、市民農園のおばあちゃん、南東さんしかいない。全身黄色のおしゃれコーディネートで、マスクまで黄色い。きょうもカッコいいぜ。

 「●●の花がきれいに咲いてたよ。●●さんがいま畑にいたよ。これからホームセンターに行ってくるよ。きょうも頑張ってね」。矢継ぎ早に話して嵐のように去って行った。人付き合いが得意ではないことは自覚しているが、こうしたゆるい知り合いができるのは悪くないと、最近しみじみと感じている。

 ハツカダイコンが大きく育ち、たくさん採れた。うれしい。スライスしてサラダに入れた。…おいしいけれど、正直それほどたくさん食べたいものでもないなあ(苦笑)。

 と、内心思っていたところ、妻が甘酢漬けをたくさん作ってくれた。甘酢になじんでくると、さわやかでどこか味わい深くとてもうまい。なんといっても鮮やかな赤が美しい。あっという間に食べ尽くした。これはなんぼでもいける。

 赤くてきれいでたくさん採れてうれしいので、また種をまこうと思います。なんだか健康によさそうな気がするし。指南書によると、種を少量ずつ、一週間おきくらいにずらしてまくと、いつも新鮮なハツカダイコンが食べられるそうです。なるほどねえ。


 シソもぐんぐん育ち、こちらも初の収穫。はさみで次々と刈り取る。刈り取ったそばから、鮮烈な香りが。新鮮なものはこんなに香りが強いんですね。大きめのものを20枚ほど収穫した。

 ネットで調べてシソの醤油漬けというのを作ってみた。ごはんのお供に最高。あとは妻がシソとキャベツと塩昆布をマヨネーズで和えてサラダにしてくれた。たくさんあってもいろいろと使い道がありそう。これからの季節、冷たい麺の薬味としても大活躍してくれるだろう。

 比較的簡単といわれているハツカダイコンとシソだが、やはり収穫はうれしいことこの上ない。たくさん採れたのでうれしくて適当にタイトルをつけた。

 ともに幼きころ極貧生活を送った左門と飛雄馬。兄弟を養うため、農作業にも励んだ左門。豊作と名付けた親の気持ちはいかばかりか。あの頑強な肉体も、自家製の野菜によって培われたであろうことは間違いないだろう。

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