20230825

プリズム

「自分のことが好きか」と聞かれたらあなたなら何と答えるだろうか。「そうですね。嫌いですがどうやっても自分以外にはなれないので、嫌々ながらも何とか付き合っていきますよ。」と無造作に顎付近を触りながら答える方もいらっしゃるかもしれない。あるいは「いやぁ、変な質問ですね。好きに決まってるじゃないですか。もし嫌いだったらさっさと手首を切ってこの世とおさらばしていますよ。」と妙に白い歯を見せながらニヤニヤと答える方がいらっしゃるかもしれない。自分ならどう答えるだろうか。

今日も河川敷を走っている。自宅を出た時は雨が降っていたが、河川敷に出た頃にはすっかり雨もあがっていた。雲間から思わず目を覆いたくなるような激しい光を放っている。その光が路面の水たまりに反射して眩しさに追い打ちをかける。何気に後ろを振り返ってみると、虹がかかっていた。

その美しさに呼応するかのように胸が開き始める。そしてドロドロとしたものが溢れ出てくる。両手で必死で抑え込もうにも、指の合間をくぐるように溢れ出るのでどうしようもない。その溢れ出たものは様々な姿態へと変化したかと思うとぐるぐると渦を巻き始める。

あっこれは。あの時の絵。

そう気づいて後ろを振り返ってみるともう虹は消えていた。


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