20230810

漂流

これは遺伝子レベルでの癖なのだろうか。それともただの怠け癖なのだろうか。あるいは全人類に共通した習性なのだろうか。漂流癖がある。

と言っても、バックパッカーのように世界各地を放浪するわけでも、冒険家のように人類未踏の地へ赴くわけでもない。ただの漂流癖があるだけだ。

今日も河川敷を走っている。何の変哲も無いよくある普通の土手の上だ。太陽の光は容赦なく降り注ぎ、風は大きなうねりとなって行く手に立ちはだかる。大河は粛々と水を運び続け、遠い山並みでは山塊を乗り越えた綿雲が次から次へと湧き上がっては散開する。いわゆる普通の土手だ。

背丈より大きく育った草木の合間を走っていると、彼らは風でなびくという動作に隠れてその存在を知らせてくる。時に無邪気に、時に切実に。だが、彼らの声なき声に応えることはしない。ただ傍観する。いわゆる普通に走っているだけだ。

今日も現実と虚構を漂流する。



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