20230830

煉瓦

実はというか、本当は諦めそうになっていた。大きな不調ではないにせよ、精神は少しずつ蝕まれ、身体は鉛のように重くなっている。以前のように両者を分離させることなく、あえて一体となって真正面からぶつかってみた。今考えてみると、それによる弊害が形となって現れただけなのに。まさかここまで弱みを握られようとは。

今日も河川敷を走っている。吹き出す汗を拭い、迫り来る景色を背後へ背後へと押し流している。川は灰色の空模様を映し出し、心なしか元気がなさそうにも見える。行き交う人々はまるで予めプログラミングされたかのように点在し、その表情はゆっくりと沈みゆく煉瓦を眺めているようだ。

そうだ。煉瓦だ。

深く深く沈んでゆく煉瓦を必死で追い続けた。絶対にこれを逃してはならない。もうその一心だけだった。こんな機会は二度とやってこないだろう。全力で無我夢中で煉瓦を追い続けた。あともう少し。あぁ待ってくれ。一気に浮上していく。その力は絶大でどうしようもない。恐ろしいほどの力でぐんぐん引き上げられていく。



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