20240209 電車

電車に乗っている。

八人掛けの長椅子の中央付近に座っている。八人掛けと言ったが、たぶん八人くらい座れると思っただけで、場合によっては六人かもしれないし十人かもしれない。車両を見渡しても乗客は各長椅子に二人程度しか座っておらず、かなり空いているといってよい。

すると辺りが黄金色に染まり始める。ちょうど車窓から朝日が差し込んできたところだ。朝のラッシュ時でないことを考えると、今日は土日あるいは祝日なのだろう。もしくはお盆休みということだって考えられる。

手に何かが当たった気がしたので、はっと横を見ると、見知らぬ女性がすぐ横に座っていた。一瞬わけが分からなかったが、その女性に妙な懐かしさと親近感を覚えた。

彼女を知っている。

その女性は眠るようにうつむいており、中央で分かれた長い黒髪が顔全体を覆っている。だから顔を判別することはできない。だが、確かに彼女を知っている。

黄金色に染まった長椅子に揺られていると眠気がゆっくりと襲ってきた。


今でもその温もりを覚えている。

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