20240227 サンプルG-26①
女と男が小さなテーブルを挟んでソファに対座している。
女は五十前後だろうか、白髪混じりの長い髪を後ろで束ねており、うぐいす色のワンピースに白い貝殻のイヤリングが映えて見える。脚を組み、真正面から男の様子を伺っている。
男はまだ若く、仕事帰りなのだろう、くたびれたビジネススーツに縁のない丸眼鏡をかけている。どこか落ち着きがなく、膝の上で掌をすり合わせたり、指を組んだりしている。
「とても興味深いわね。次は落ち着いて、もう一度ゆっくり話してもらえるかしら。」
「分かりました、こういう所に来るのは初めてで。すみません。」
「いいのよ。あなたがその時に見たこと感じたことをできるだけ細かく話して欲しいの。誰かに伝えるというよりも、そうね、まるで独り言を話しているかのように。」
「ええ、分かりました。やってみます。」
「昨晩、というより、ここ最近は毎晩です。ベッドに入って眠ろうとすると、いつもやってくるんです。」
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