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母親仕事第一幕、無事終了

 本日、私の末娘が18歳になりました。私が住む地では今日から成人です。お陰様で、3人の子供達を無事に成人させることができました。
1994年に初めて母親になれた時からほぼ30年、ようやく母親としての第一幕が終わったのです。
今日は少し自分を褒めてあげよう。祝ってあげよう。そんな気持ちでこれを綴っています。

 これからのお話は、私が折に触れて我が家の子供達に語ってきたことです。失笑されるかもしれませんが、今となっては私の子育ての原点だと思う出来事になりました。


オムツをはいた芸人さん


 我が家のお兄ちゃん(長男)がお腹にいたある日、私はとあるテレビ番組をみていました。その芸人さんが誰だったのか、なんという番組だったのか、そんなことも何も覚えていません。
その方はステージ上に大人用のオムツを履いただけの姿で登場し、笑われていました。今ならば、パンツ一枚の姿で世界中のたくさんの人たちに笑いを届けた芸人さんのように思うかもしれません。でも、その時の人々の反応は冷たいものでした。
親の顔がみてみたい。よく言われるそのことばで冷ややかに野次られていたのでした。

 でも私はその時に、私がその方の親だったら絶対に褒めてやる。そう心の底から思い、まさにそれが親になるということであるとその時に悟ったのでした。

 自分の子供がステージにたつ人間になりたいと思い、役柄としてオムツをはく。そしてそれを人々から冷笑される。それも含めてすべて彼の仕事ではないか。自分の仕事を一生懸命にこなす息子を誇らしいと思う。そういう母親になりたいと心から思ったのです。

親からの呪縛

 人は誰も完璧であるはずなどない。それは私の両親にも当てはまることです。
子育ての基本は自分がして欲しくなかったことを子供に繋げない。そう確信していた私は、親となって子供時代の自分と常に向き合ってきました。そして、それはとても苦しい作業ばかりだったのです。

 夫が私の子育てを労ってくれる時はいつも、我が家の子育ての基本は私がその苦しみから逃げなかったことだと言ってくれます。私はそれを聞く度に、私の苦しみに常に伴走してくれた夫には感謝の言葉しかありません。

 私の両親には子育てに一つの型がありました。学歴、職業、生き方、全てに思い描く姿があり、その型にはめていくことこそが親の役目だと盲信していたのです。
 自分が親になった時に絶対に子供に繋げない、心の底から自分がして欲しくなかったこと、それはまさにそのことでした。

 子どもが選んだ道は心から応援しよう。
オムツを履いた芸人さんをみながら、私はお腹の中のお兄ちゃんにこう語りかけていました。
 お母さんは絶対にあなたを応援する。裸で舞台に上がろうとオムツを履いていようと。お腹をさすりながら、私はその時に初めて親になるという決心が固まったような気がしました。

他人の評価は気にしない

 子どもが選んだ道を心から応援する。その為には何をすれば良いのだろうかと思った時、私が心がけたことはまさにこの一言でした。
その為に、私たち夫婦は子供達の学校の成績表すら気に掛けることをしてきませんでした。
もちろん親として、学習の理解でなにかつまづいていることはないだろうか、自信を失っていることはないだろうか、友人関係での憂いはないだろうか。そういうことにはできる限り目を配ってきたつもりです。しかしながら、彼らの能力に対する他人からの評価には一切興味を持たない。それはお互い徹底してきたように思うのです。

 そのお陰で子供達はそれぞれの成績を持ち、落第しそうだと言われて学校に呼び出された際には、あまりにも穏やかに登場した私に対して先生方から、ことの重大さを理解しているのかとお叱りを受けたこともありました。

 それにしても、こんなことが許されたのは私たち夫婦の子育てへの考えが一致していたからだということは否めません。茶飲み話で褒められるぐらいのことに人生を賭ける必要なんてない。そう言いながら見守ってくれた夫なしに、この子育てはありえませんでした。

 お兄ちゃんが大学を卒業する時、彼は特別なセレモニーの中で私たち夫婦への謝辞を述べてくれました。その際に、unconditional love (無条件の愛)という言葉を使ってくれたのです。私はそれを彼が感じていてくれたことが嬉しくて仕方がありませんでした。
 命の成長を見守るということは、なんて幸せな作業でしょうか。
私は、それを経験させてくれた子ども達に心の底から感謝しています。

 明日から続く母親業第二幕は、まさに終わりがない旅のように私は思います。
我が家の子供達、そして彼らと家族になってくれる人たち。
そんな人々にとって、折に触れて懐かしく穏やかな気持ちで思い出してもらえる人間になれたらいいな。それが私の願いです。そしてこの願いこそが、これからの私の人生の目標だと思うのです。その為にも、今日は自分の子育てを振り返ってみたいと思ったのでした。 

 みんな、お母さんのところに生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ。本当にありがとうね。

2023年クリスマス コロラドにて


1992年からのアメリカ暮らし、ボストンはそろそろ四半世紀になりました。 「取材」と称していろいろ経験したり、観光ガイドも楽しんでいます。 https://locotabi.jp/loco/hyacinth 応援していただけたらとても励みに思います。