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ベガス編 最終章

Fremont Streetが見えてくる。

雨,コロナと言ってもやはり人はちらほらいる。

派手なパフォーマンスもやってるし、バカでかい音もズンズン鳴っている。


さて。


ぼくは迷うことなく、ストリートの真ん中にある目立つサークルを選ぶ。

道路脇のサークルだと、気づかれない可能性もあるからだ。

なんせ僕は、目立つ服も着てないし、大きな音も出さない。

一見パフォーマーでは全くないから、歩いてる人が嫌でも目に入る真ん中を選ぶほかないのだ!

その直径約1メートルのサークルの中に入り、

おもむろに、さっき部屋で描いた自分の顔を胸の前に持ちながら、ちょっと笑顔を作りながら、目が合う人たちに

「あなたの顔、そして名前を漢字で描きまーす!1ドルからでーす!」と。


人々の目は、冷たい笑

おいおいまじかあいつ、あの絵で?正気か?


的な言葉が飛び交ってるのだろうか。

めげるかい!


そりゃあ、わかってるよ、地味だ!

他のパフォーマーは派手でわかりやすいし。


僕のは何だ。

自分の顔かどうかも危うい似顔絵をを掲げてる日本人が何やらやっているが、よくわからん。

何か言葉を叫んでるが、周りの音でこれもよく聞こえない。

何がしたいんだあいつは。

それよりあっちの大きい音が鳴ってるところ、楽しそうだ。

そんな感じだろうか。

めげるか。

ギター持って歌うより幾分かマシだ。

届きもしない歌を歌うより、体力的にもメンタル的にもこっちのが効率がいい。

おこぼれちょーだい!

1時間ほど突っ立ってただろうか。

一人目の客が釣れた!(←言い方)

おっさんは、カジノで勝ったのだろうか、

「5ドルでどうだ。この二人を描いてやってくれ。」

ありがとう!もちろんだ!


僕は二人のおっさんに横に並んでもらい、ボールペンをすらすら進める。

お金を払ってくれたおっさんは僕の描き進める絵をたまに見ながら、ニヤニヤしながら被写体の2人のおっさんチラチラ見ている。

5分ほどで一人を描き終わり、

「あなたは描き終わったのでもう顔を作らなくていいですよ。」

言って、その一人目のおっさんの横にもう一人のおっさんを描き進める。

これも5分ほどで描き終わり、


「よし!できた!」と言って、お披露目する。

「Ohhhh!Haha〜!!」と盛り上がってくれる。

「おけい、名前を教えてくれ。」

と言って、顔の横あたりに適当に漢字を当てはめて書いてやる。

ちなみにこの日描いた人の名前は全て覚えていない笑

ありがとう。どうぞ!

と描いた絵を渡す。

ありがとよ、頑張れよman!

そのグループはそう言って、僕が描いた絵をみんなで見ながら、去っていった。

一人がめっちゃ上手く描けて、もう一人が超絶微妙だったので、きっとそのことについてみんなで話していたに違いない。


とりあえず、10ドルは目の前の投げ銭入れ(コップ)に入った。

よし、この調子でどんどんきやがれい。


と気張ってみるがまあ、そう簡単にはいかない笑


僕は再びアウェイ感を全身に浴びながら声を張る。


すると、一人の寡黙そうなメガネのおじさんが声をかけてくれた。


「これはなんだ?」

「あ、こんなふうに、あなたの顔と、名前を漢字で描きます。」

「おお、そうか、いくらだ?5ドルでいいか?」

「あ、はい最高ですありがとうございます。」

「どれくらいかかる?」

「10分ぐらいすかね。」

「よし、描いてくれ。」

「ありがとうございます!」

「笑った方がいいか?」

そういって、メガネのおじさんは、ぎこちなく笑顔を作ってくれる。


絵を描き終わり、名前を漢字で描いて、見せてやる。

「ふふ、いいじゃないか。頑張れよ。」

そう言って、5ドルをコップに入れてくれた。

これで15ドルか。


再び待っていると、何やら冷やかしてくる奴がいる。

キャップをかぶった白人のメガネのおっさんが

「おいおいおめぇ何やってんだよやめちまえよそんなもんはっはー」

と酒を片手に絡んでくる。

僕はこういうのはすぐ笑ってごまかしてしまう。

アメリカ人に笑ってごまかすという言葉はないはずだ、知らんけど。あるのかな。

笑ってごまかしてるやつは見たことがない。

ちなみに僕は笑ってごまかす奴は嫌いだ、自分含め笑


絡んでくる奴は結構いた。

大抵は何を言ってるかわからない。もっとゆっくり話してほしい笑


もう一人絡んできたイカつめのおっさんはなぜかちょっと怒っている様子。

「おい、お前は何をやっているんだ?」

「え、あ、人の似顔絵を描いてます。描きましょうか。」

「いや俺ぁいい。それよりお前のやり方はなんだ。人はパフォーマンスを見て感動してからチップを投げるんだ。」


ふむー言いたいことはなんとなくわかる気がする、、

つまりお前のはパフォーマンスっぽくない!ってことだろね多分

多分これをやるなら自分の作品を飾りながらやるべきなんだろうね。

よく街で見る絵描きさんはそうしてるよね。

僕のは即席すぎるもんね笑

でも英語でどう伝えていいかわからないから

「うんうんうんおっけおっけー!」て言っといた。

するとイカつめのおっさんが

「Oh,no!!」と、言って前を見ている。

僕もその目線の先に目をやると、何やら人だかりができている。

周りの人が今にも泣き出しそうな少年を慰めている。

イカつめのおっさんによると、少年が頭から転んだんらしい。

人だかりが人だかりを呼んで何やら大袈裟なことになっている。

これじゃ僕の存在感0なので、イカつめのおっさんに軽く挨拶をして、場所を変えることにした。


メインのカジノに近い場所に変える。

今度は道路脇のサークルで、すぐ真後ろにカジノがある。

前を見ると奥にステージがあり、ほぼ裸のねーちゃん(複数いる)がDJをしたり踊ったりしている。

その前で暇そうに見ている人もいれば、踊ってる奴もいるし、暇そうに見ている奴もいれば、大声で喋ってる奴もいたり、一番フリーモントストリートで人が集まっているところだろうか。

僕はその人だかりから少し外れたところにいる。


さてここでやろうか。と思うと、なんだか億劫になっていた。

ちょっと飽きてきている自分がいることに気づく。

そりゃそうさ、人が来るのを待つ時間の方が長いんだから。

暇だ基本。


僕は、軽く踊りながら、自分の絵を掲げてみた。

あ、これならなんか僕も楽しいぞ。

踊るのはいいね。

でも僕の踊りは側から見ると奇妙だ多分。

とうとうほんとにちょっと変な日本人になっていたと思う。


ちょっと離れたところでそんな僕を見ながら爆笑してる奴がいる。

そいつの方を僕も見ながら踊ってみたり。

すると、笑いながらそいつがきて

「はっはっはおい日本人、お前踊りで行くべきだよ絵なんかやめてさ!はっはっは」

「ほんとか?わかったやってみるよ」

そいつが定位置に戻って、まだ笑いながら僕の方を見ている。

僕が踊りながら、持っていたスケッチブックをポイッと下に投げて、身振り手振りで踊って見せると、そいつはまた笑っていた。


ちなみに数いる人の中で笑っているのはそいつだけだった笑

まあいい。こうなったら思いっきり踊ってやる。

僕はひょうきんな身振り手振りでアメリカの音楽に合わせて盆踊りっぽく踊ってみたり、なんか楽しかった。

ACDCのBack In Blackが流れたときは、本気のエアギター。エアボーカル。

アンガスさながらの動きと口パクでマルコム。


もう、どうにでもなれ知らん。僕は今楽しいからいい。

そんな気分だった。

結構痛い感じのやつだったんじゃなかろうか。


チラッとさっき爆笑してたやつを見るともう飽きたのだろうか明後日の方向を見ていたので僕も我に帰り、スケッチブックを再び手にして、ステップを踏み始めた。


すると男前のニイちゃんが声をかけてきた。

何やら僕に必死で伝えようとしてくれているが、僕はよくわからなかった。

「だから!20ドル払うと言っているんだ!!」

やっと理解ができた。

「あ、僕の描く絵に20ドル払ってくれるのね?!」

「そうだ!」

「まじか、ありがとう、頑張るよ!」

20ドル分のクオリティの絵を描く自信はさらさらないが、んなこたどうでもいい。


そいつはコップに20ドル札を入れ、横顔を僕に向け、両手をポケットに突っ込んではにかんでいる。

うん、きまってる、イカすぜニイちゃん。わかってるタイプだな自分のかっこいい角度が。

さあてカッコよく描けなかったらごめんよーーー

そう思いながらちょっと気持ち丁寧に描いてみる。


絵ができて、名前を漢字で書く。

「はい、どうぞ!ありがとう!」

僕の絵をはにかみながら見ながら、

「うん、いいね、ありがとう」

とはにかみながら僕に礼を言うと、ちょっと奥で待っている仲間のもとへ戻っていく。

仲間に絵を見せている。

何やら盛り上がっていた。会話は聞こえない。


自己評価では、ちょっと太った感じになっちゃったのが残念だったかな。


さて、再び俺のダンスタイムだ。


と思った矢先、

「ねえ、あなたここ変わってくれない?」

とほぼ裸のおばさん二人組が僕に言ってきた。

おばさんと言ってもふむ、、エロいからだしてますね。


少し勃ちました。


「あ、はい、どうぞ。」

場所を譲って、僕は最初の場所に戻ることにした。

途中、ほぼ裸のシスターがいた。

おっさんどもが群がっている。

そりゃそうだ。まじでいい。

あの、なんて言うの?シスターが頭からかぶってる布?

頭が隠れているのに、おっぱいは全部出てるんだもの。


だいぶ勃ちました。


さあ踊ろうぞ。(←おい絵は)

僕は最初のサークルで再び踊り出した。

もうなんとなく人も減ってきている気がする。

バーテンダーの姉ちゃん二人は暇そうに喋っている。

いいんだ、僕は踊りたいんだ。余計なことを考えず、ラスベガス最後の夜を胸に刻みながら無我夢中で。


何人かと目が合い、「絵を描きますよ!」とジェスチャーで伝えるが、大抵は首を横に振られる。


そんな中、僕の後ろの方で一人で飲みながら、ボーッと僕を眺めている男がいた。

ジェスチャーをすると、微笑みながらこっちにきた。

「いくらだ?」

「1ドルからです。もし気に入ってくれたらもう少しくださいな。」

「よおし、いいだろう。」

そう言ってほろ酔いのおじさんは真っ直ぐに立ち、顔を僕の方へ向ける。

僕は黙々と描く。

名前を聞いて、漢字で描き、絵を渡す。

「いいじゃないか、ありがとう。俺はあのへんで馬鹿みたいに裸で突っ立てる女よりお前の方がまだナイスだと思うぜ。」

ほほう、嬉しいこと言ってくれるぢゃないか。さっきのシスターはマジで勃ったけどね。と思いつつ

「はは、ありがとう!」と返す。

彼は5ドルをコップに入れてくれた。


今何時なんだろう。わからんが少しアドレナリンも出ているのか、まだ踊れるぜ。


その後、二人のカップルが僕の方へきた。

結構二人とも酔ってらっしゃるご様子。

「おい、にいちゃん!俺の愛しいベイビーを描いてやってくれないか?」

「いやあんダーリンったらん。」

目の前でいちゃつくカップルに(ああいいなー乳でけえーー)

と思いつつ、

「ありがとう!じゃあ描くね!」と

グラマーないかにもアメリカ人ぽい、この日初めての女性を描き始める。


全くじっとしてくれない笑

描いてる最中にも二人はいちゃついている。

「なあにいちゃん!このベイビーのおっぱいが大事なポイントだ!あとボディはスラッとなハッはっはっは!」

「うん僕もそう思っていたところさ!いやあ、それにしてもうんナイスだね」

と僕もそのベイビーの乳を褒めながらボールペンをすすめる。

「やだあんみんなしてん。」

とベイビーはさらに乳を寄せている。

一般的に言うところのもはやデブの部類なのだが、僕は愛らしい顔を持つデブは好きだ。

普通に勃つ。


そうこうしているうちに絵ができて、彼女に絵を渡す。

男は酒を買いに行ったらしくどこかに消えている。

「まあー素敵じゃない!いくらなの?」

「いくらでもいいよ!」

「そう、ありがとうね坊や。」

5ドルをコップに入れてくれて、ハグをして別れた。


何やら絵を描いていた最中にベイビーに話しかけていた女性グループと意気投合したらしく、男とは別の方向に歩いて行った。

おいおい男はいいのか?笑

案の定、少し時間が経った時男が僕の方へ来て、

「おい!俺のベイビーを知らないか?」

と息を切らしながら聞いてきたので、あっち行ったよ、と方向を示した。

二人はどうなったのでしょうか笑




ふううう、もういいでしょ。踊り疲れた。。

この金を全部カジノにつぎ込もう。

僕は初めからそのつもりだった。

なけなしの約50ドル。

これで一発当てて、あのギターを買うのだ!!!


すると、さっき場所を変わったほぼ裸のおばさんが歩いてきた。

彼女たちも終わったようだ。

話しかけてくれる。

「あなた日本人?」

「あ、はいそうです。」

「そう、とってもクールだわ。」

「マジスカあざっす、お二人も素敵っすよ、ところで、この辺で一番有名なカジノはどれですか?稼いだお金を全部使おうと思ってるんです」

「まあ!素敵!やっぱりあなたクールだわ!一番有名なのはあそこよ。」

そう言って、示してくれたのは、さっきこの二人組に場所を変わったあのサークルの後ろにあるカジノだった。

「あーあそこなんだね。ありがとう、いい夜を!」

「あなたもね、じゃあね、おやすみ坊や」

なぜ俺はハグの一つくらいしなかったんだと悔やみつつ、彼女らとは逆の方向に歩く。


ちなみに普通に勃っていた。


さあ一発当ててあのギターを買って目指せアメリカンドリーーむ!!


中に入ると賑わっている。

このとき初めてまともに時間を見た。

時刻はなんと夜の2時を周っていた。

と言うことは僕は約5時間ほど踊っていたことになる。


僕はスロットに座って金を数えながら、ディーラーを囲ってブラックジャックやポーカー、ルーレットなどに夢中になる人たちを眺める。


(なんもわからん〜〜〜)

スロットで金を使うことももちろんできるが、なんかもったいないやん

どうせやったらあのかっこいいユニフォームを着たディーラーがいるところでゲームとかやってみたいやん。

システムも何もわからん。。

どうやって参加するのか、現金でいいのか、なんぼから参加できるのか、そもそもゲームのルールも危うい笑

グーグルで必死に調べること約30分。

なんとなくわかった気がして、ブラックジャックの席へ。

だがわかってなくて、ディーラーも教えようにも教えれないし、隣に座ってきたおじさんが僕のゲームをあちゃー、て感じで見ながら、ディーラーがおじさんに教えてやりなよと言っておじさんも僕を少し手伝ってくれたが、理解できないままどんどんお金は減っていくので、

「ヌァぁあすんません全然わかんねっす、ありがとうございます。」

と言って、次はルーレットの席に座った。

最初からここにくればよかったと思えるほど、快適だった。


テーブルにつき、現金をテーブルに置く。

その現金をディーラーがとり、その分のチップを僕の目の前においてくれる。

そのチップを使い、テーブルに描いてある番号、赤か黒かに6枚以上のチップをゲームの参加者が置き終わるとディーラーがルーレットを回す。

玉が入った場所が、画面に表示される、自分のチップを置いた場所に玉が入っていればその勝ち分のチップをディーラーが渡してくれると言うシンプルかつ奥が深いゲーム。

他の参加者やディーラーと会話を楽しみながら、ゆるーく楽しめた。

参加者の女「あなたは日本人よね、一度行ったことがあるわ。東京タワーが高かったわ。」

ディーラー「コンニチワ。オゲンキデスカ?」

と、快く日本にまつわる話をしてくれる。

当たると、「グッジョブ!」とディーラーも褒めてくれたり。

1時間ほど遊べた。


まあ結果的には全額そのルーレットで使い切る形にはなったわけですが笑

僕のアメリカンドリームはあっけなく。

でも最高に楽しかった。

端金でラスベガスの雰囲気を身をもって経験できたのでもう十分だ。


最後にディーラーが手を差し出してくれた。

気持ちよく握手をして、僕はカジノを出た。


もう外は明るくなっていた。


いやああ、




遊んだなーーーーーーーーーーーー!

ありがとうラスベガスーーーーーーーーーー!


て感じで。

ここまで長々と読んでくれたあなたは相当な物好きだと思う。










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