夜磯でドッキリ!!!
三日月浮かぶ初秋の夜。
肌寒さを感じながら、『超』の付く釣りバカの義兄に案内され、あまり人の立ち入らない磯に立った。
磯釣りの醍醐味
『竿の長さと、細糸による、魚とのスリリングな駆け引き』
5メートルちょっとのカーボン製ロッドが、弓の様に弧を描く。
強引に引くと糸が切れてしまう。
糸を緩めすぎると、底に潜られ、海中の岩で糸を切られる。
人付き合いも。
並んで『電気ウキ』を闇夜の海に浮かべる
竿を振る度、『シュッ』という乾いた風切り音が静寂を裂く。
2時間ほど経ち、義兄が呟いた。
「釣れないから、もっと入江の先に行ってくる。」
50メートル程の距離だろうか、右斜めに見下ろす形で、義兄が釣り場を定めたのが見えた。
時折灯すライトと、赤い電気ウキによって、位置が分かる。
そして、一定のリズムで響く風切り音。
夜磯のアイドル、眼張が数匹釣れ、型もなかなか。
腕時計はいつの間にか、午前1:30を示していた。
あれ、義兄は?
さっき居た場所に居ない様子。
まさか海に落ちたんじゃないか!
いやいや、そうすれば流石にドボンと音がするハズだ。
きっとまた、釣座を変えたんだろう。
ボンヤリと考えていたら、視線の外に微かな赤い光を感じた。
なんだろう。
見上げると、灯りがブラブラと漂っている。
竿に吊るされた電気ウキが、闇夜に踊るそれと同じ。
なんだ。そろそろ引き揚げようと崖を登って来たんだ。
竿を振る音が再び
程なく、またあの聞き慣れた音が響く。
あれ、崖を登っていたんじゃなかったのか?
てっきり引き揚げるものと思って、道具を片付けてしまった。
竿を納める気配がないので、仕方なく再び仕掛けを投げることにした。
午前2時半を回った頃、義兄が道具一式を担いで崖を這い上がって来た。
「みろよ!粘った甲斐あって、ほら!」
手にしたスカリには、60センチを超えるであろう、真紅の魚体が横たわり、バタバタと尾鰭を叩いていた。
「すげー!デカい!道具仕舞うから、ちょっと待って!」
道具を片付けながら、訪ねた。
「ところで、一回崖を登って来たよね?」
「は?ずっと同じ場所で動かずやってたけど?」
「え?じゃあさっきの赤い光って・・・」
『ガサ!』
音に驚き背後の崖を見上げると・・・
視線の先には、月明かりに照らされクリクリと光る目玉が4つ。
目を凝らすと、タヌキの親子がモノ欲しそうに、こちらを見下ろしていた。
帰りの車で、義兄がゲラゲラ笑っている。
「お前、タヌキに化かされたな www」
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