見出し画像

su-re.coメンバー紹介#1 【サラ・ウィビソノさん】 インドネシア・バリ島で気候変動環境下での持続的なコーヒー生産に挑む

hutan.coffeeは2021年からインドネシア・バリ島を拠点として活動する環境系シンクタンク su-re.co(シュアコ)とパートナーシップを結び、バリ島におけるサステナブル農業の発展を日本から支援している。

su-re.coにはシンクタンク部門に所属する研究者とビジネス部門に所属するビジネスパーソンが多数在籍している。

今回は、ビジネス部門に所属する【サラ・ウィビソノ】さんを紹介する。
----------------------------------------------------------------------------
2015年にインドネシアバリ島に創業し、コーヒーとカカオのサステナブルなビジネス事業を展開するsu-re.co。収穫から梱包に至る全工程をハンドメイドで、化学肥料や農薬無使用のコーヒーをHutan coffeeに提供している。
 
su-re.coでは収益の一部で、農家へ気候変動に関する教育(以下、気候変動スクール)を行い、コーヒー農家の持続的な事業をサポートする。さらに、家庭サイズのバイオガスキットの設置により、エコフレンドリーに農家の生活向上を実現中。
 
https://www.su-re.co/post/the-essential-communication-channels-in-rural-development[1] 
 
su-re.coにて働くサラさんは、生産・輸入・マーケティングなどコーヒー事業開発の中核を担う。サラさんなくしてHutan Coffeeのコーヒー販売は成り立たない。その一方で、気候変動スクールの実施やバイオガス設置もマルチタスクで行っており、生産者のコーヒー農家と接する機会も多い。
 
そんなHutan coffeeとコーヒー農家の架け橋となるサラさんにコーヒー農家への想いを聞いた。

気候変動に適応するコーヒー栽培の必要性

su-re.coがバリ島で展開するコーヒー豆

サラさんは気候スクール実施を通して、コーヒー農家に気候変動に適応した栽培のサポートをしているわけだが、なぜそういったサポートが必要なのだろうか。
 
コーヒーは土地や高度によって味や香りが左右される。ましてやコーヒー栽培には、気候が命だ。しかし、近年の気候変動によって、これまでのコーヒー栽培は通用しなくなってきているという。
 
「su-re.coプロジェクト先の一つ、フローレス島バジャワ(Bajawa)を訪問した時、コーヒーやカカオ農園は、猛烈な雨の被害を受けていました。干上がった土壌が農園に広がっていたこともあります。このように来るべき季節が予期できない状況は栽培を困難し、農家に大きな影響を与えてしまうのです。」
 
気候変動に適応するコーヒー栽培がコーヒー農家には求められているのだ。

農家をサポートする意義とは

カカオ農家にてバイオガス設置の様子。サラさん撮影

そもそもサラさんは数年前、「季節の異変から気候変動がリアルに起こっている」と気づいたことをきっかけに持続可能な農業の重要性を悟った。
 
「私は、ジャワ島バンドンで生まれ育った言わば、”シティガール”なので、都市に気候変動を技術で解決する方法が集まることを知っています。ですが、地方は都市と同じような機会には恵まれないため、気候変動は地方にいる農家に影響してしまうのです。」
 
「農家は、私たちの生命に必要な食べ物を作っています。その農家の仕事が気候変動によって機能しなくなってしまったら、どうなるでしょうか。農業は私たちの生活に必要不可欠な存在なのです。」

日々、コーヒー農家と接する中で芽生えた気持ち「感謝」


フローレス島バジャワにて、農家がコーヒーのカスを家畜飼料に転換することを目指した廃棄物管理ワークショップ実施時。前列右から2番目サラさん

もともと国際機関で働く”ソーシャル一家”に育ったサラさん。学生時代に、姉の調査サポートのために訪れたスラウェシ島トラジャ(Toraja)で一人旅をすることになった。
 
農業で生計を立てる人が多いトラジャでは、「地球は生命の源であり、地球を大切にする」考えが古くから根付いているとサラさんは話す。現地の人の話やスラウェシ島の自然が、現在彼女の農家サポートへの源になっているだろう。
 
農家サポートの日々を過ごす中で、「学ぶ意欲に溢れ、一度教えたことをすぐに吸収してしまう賢さも持つ農家に感謝でいっぱいだ」と語る。
 
「農家のみなさんは、新しいことを学ぶことに対して貪欲かつ改善を惜しまないです。生産物の実りが気候の状況に左右されることを誰よりも分かっているからこそ、気候変動に適応する栽培のために、su-re.coと協力しているのです。」
 
一方で、農家と直面するコミュニケーションの課題もある。
 
「バリ島のコーヒー農家と関わる機会が多いのですが、農家は、公用語となるインドネシア語を使わずに、バリ語という民族語を使用します。バリ語を話せればいいのですが、私はバリ島出身ではないので話せないのです。」
 
1万3000以上からなる島国かつ約300種族から構成される多民族国家のインドネシアでは、700以上の言語が存在する。まさにインドネシアならでわの課題だろう。
 
「コミュニケーションに壁を感じることもありますが、それでも農家のみなさん自身もコミュニケーションを図ることに前向きな態度でいてくれています。その面でもありがたく思います。」
 
気候変動による影響を一番に受けるのは農家だからこそ、サラさんは農家へのサポートが重要だと考えているが、当事者である農家自身も気候変動への適応の必要性を感じている。気候変動に適応し、これからの未来に続くコーヒーを栽培するという目標に向かって進んでいる。

ビジネスで農家に未来を

サラさんとコーヒー農家さん作業時の様子

ただ、やはり想いだけでは気候変動に適応するようなコーヒー栽培の改善やコーヒー農家への還元を実現することは難しい。
 
サラさんはその理にかなった仕組みが”ビジネス”であるという。
 
高校生のときに、起業家の本やTVからビジネスに興味をもち、大学と大学院で経営学を専攻した。
 
「ビジネスという仕組みは購入者と販売者の双方に利益があります。su-re.coは持続可能なビジネスを作っています。特に農家へのサポートでは、利益によってコーヒー栽培の持続的な仕組みを取り入れているのです。」
コーヒーを購入する時に支払ったお金が農家へと回り、気候変動に適応するコーヒー作りに役立てられる。一方の購入者は、コーヒーを飲みながら、未来のコーヒーへの投資をしていることになるわけだ。
 
どこまでも農家想いのサラさんからは、コーヒー愛好家たちがどんなコーヒーを選択するべきなのか問われているようだった。朝の安らぎの一杯に、仕事の合間の一杯に、コーヒーがもたらす幸せを未来に残していこうではないか。

文書:Yu Shinozaki

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?