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ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム 最終回「毒の片付け−解毒−」

この記事は2020年4月10日、ヒューロムWEBマガジン naturise「ゲルソン・インスティテュート・アンバサダー氏家京子 連載コラム最終回『毒の片付け−解毒−』」に書いた記事を転載しています。


病気の細胞はゴミ屋敷

 ゲルソン療法は、高カリウム低ナトリウムの野菜食と野菜ジュースで患者さんの治癒力を最大化します。
 それでは、治癒力が大きくなった体では実際に何が起こるのでしょうか?
 最初に始まるのは「細胞の解毒」です。
 病気の細胞は、必要なものと不要なものを分別する力が弱っています。そのため、入ってきたものは毒でも溜め込むようになります。
 この悪循環が進むと「細胞がゴミ屋敷化」して健康な機能を失い、その人の全身にまで影響を及ぼすようになってきます。

治癒力で解毒が始まる

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 高カリウム低ナトリウムのゲルソン食とジュースは、病気の細胞に特有な「多すぎるナトリウムと水溜り」の環境を正常化して、細胞が溜め込んだ毒、たとえばフリーラジカル、アンモニア様生成物、窒素酸化物、タンパク質派生物なども細胞外に捨てやすくしてくれます。
 ゲルソン療法で治癒力が最大化すると、最初に始まるのはこうした毒の片付け、つまり解毒なのです。

歯車が回り出す

 ゴミ出しに必要なエネルギーができたタイミングで細胞は解毒を始め、患者さんの健康状態には具体的な変化が起こり始めます。
 昨今、世界的に片付けや断捨離が注目されています。それは「片付け」というシンプルな作業に明確な目的を与えると、魔法のように人生が好転する事実に人々が魅了されるからです。ゲルソン療法の治癒の仕組みもこれとよく似ています。

毒はどこへ?

 毒の片付けが始まると細胞内はクリーンになります。不要なものが無くなってできたスペースには、本当に必要な酸素や栄養が入ってきます。
 クリーンな細胞のミトコンドリアは酸素と栄養からエネルギー生み出し、治癒力はさらに増えて毒出しも前進します。
 これですべてが上手くいくように思えますが、じつは、ここで新たな問題が発生します。細胞の片付けで出たゴミが、細胞の外を汚し始めるからです。

ダストシュートとしての血液

 細胞外に追い出された毒はどこへ行くかというと、全身を流れる血液循環です。つまり、細胞がクリーンになれば、血液が汚れるという問題が発生します。
 がん患者さんの場合、がん細胞が有毒な副生成物を作るのでそれも全身を循環します。
 さらに、患者さんの体でゲルソン療法の効果が出てくると、強くなった免疫で腫瘍を破壊し始めます。その破片やがん細胞の内部にあった核酸が放出されれば、血液が酸性になるなど様々な症状を引き起こします。

毒の連鎖問題

 Dr.ゲルソンは患者の体内で起こるこの連鎖的な毒の問題に当初は気付きませんでした。
 末期がんの患者を治療途中に続けて亡くしたため、不思議に思い検死解剖を行ったところ、患者の死因はがんではなく肝機能停止でした。
 私たちの肝臓は血液中の毒性物質を回収し日々解毒していますが、末期患者の肝臓はさほど強くありません。それなのに、ゲルソン食とジュースの影響で一気に増えた毒が弱った患者の肝臓に集中してしまったのです。処理能力を上回る毒に患者の肝臓は耐えられず、機能を停止していました。

肝臓を助けるコーヒー浣腸

 Dr.ゲルソンは「機能低下した肝臓でも解毒を続けられるようにするには?」と解決策を考えました。そして、昔読んだコーヒー浣腸の研究を思い出しました。
 ラット実験でわかっていたのは、コーヒー豆のテオブロミン、テオフィリン、カフェインを直腸から入れると肝臓内の毒は胆汁とともに放出され、十二指腸、小腸、大腸を通じて便で体外へ出やすくなることでした。(A Cancer Therapy Result of Fifty Cases, Max Gerson M.D., Gerson Institute, 1958.)
 Dr.ゲルソンはこの研究を参考にして自分の治療にコーヒー浣腸を導入しました。そして末期がんの治療も安全にできるようになったのです。
 コーヒー浣腸の効果は現在でも注目されており、神経痛の緩和、フリーラジカルの不活性化を助けることがわかっています。(V. L. Sparmins, L. K. T. Lam and L. W. Wattenberg, Proceeding of the American Association of Cancer Researchers and the American Society of Clinical Oncology, Abstract 22, 1981 : 114, 453)

大切なのは全体性

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 こうして細胞内も細胞外もクリーンな環境になると、私たちの全身の機能は回復します。それは、森や海などの環境が浄化されれば生き物たちが息を吹き返すのと同じです。
 Dr.マックス・ゲルソンは次のような言葉を残しています。「私たちが環境と体に備わる自然の仕組みを学び、理解すれば、たとえがんでも予防し、治すことができるのです」。
 ゲルソン療法は、「私たち一人ひとりには『自然に治る力』が備わっている」という事実を思い出させてくれる治療法です。

■参考書籍
『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』、氏家京子著、2019年発行

ゲルソン療法に関する日本語HP
ゲルソン・クリニックのHP

このコラムを書いた人
氏家京子(うじいえ・きょうこ)

1972年生まれ。
健康雑誌の編集部に6年勤務。米国系統合医療サービス企業に1年勤務。 フリーランスジャーナリストとして独立後、統合医療や自然療法分野の取材を国内外で継続し、医療消費者への教育活動、統合医療に関する翻訳書籍の出版を行う。
1998年から始めたゲルソン療法の取材経験は日本でもっとも豊富で、米国ゲルソン・インスティテュートから日本アンバサダーに任命される。
ゲルソン療法のワークショップを開催するほか、ゲルソン・クリニックへの入院希望者に通訳として同行する業務も行う。
ゲルソン療法の患者教育を担うゲルソン・エデュケーター育成、ゲルソン療法専門医の育成にも携わる。
2019年6月、『Dr.マックス・ゲルソンのゲルソン療法 細胞から回復する高カリウム低ナトリウム療法 セオリー編』を出版。

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