見出し画像

慶應生のレポート公開〜社会学から考える公共空間〜アフターコロナをBARは生き残れるか?

 こんにちは。hunaです。

新型コロナウイルスの影響で、現在多くの飲食店や水商売といったお店が営業自粛追い込まれています。

BARといったお酒を扱うお店では、テイクアウトメニューも開発しづらく特に大変かと思います。

さて、私の考えた結論から伝えますと、アフターコロナを

「BARは生き残れる。」

と考えています。

もちろん、現状と全く同じは無理です。

換気といった感染リスクを抑える必要は絶対ですし、また、自粛しなければいけなくなった場合でも他に収入を得られるように多角的なビジネスが求められます。

しかし、そう私が確信するのは他にも理由があります。

BARといった「1つの空間に人が集まる」公共空間には

社交場

という重要な社会的役割があるのです。

そして、SNSやTV電話など交流には様々な手段がありますが、それらは不完全であり、人間はいろんな情報を手に入れることで相手を知ろうとします。


ここでは、私がそう考えるきっかけとなった、数年前、大学に提出した社会学のレポートをもとに、ビジネス的な視点ではなく、社会学的に公共空間について分析しています。

学生の不完全さを残していますので、ご了承ください。

レポート本文が太字。

今と状況がかなり違いますので、補足もしております。

レポート対策としては、自分が興味のあることを書く!
だと思います。私は経済学部ですが、人が消費といった何か行動を起こすとき、社会学的視点は大変重要でありながら見落とされがちだと感じています。

ビジネスマンの方にも今一度社会学の重要性を知るきっかけになって頂ければと思います。




           社会学

「女性がバーやカフェなどに行き、一人にしておいてほしいときどのような戦略を利用するのか(セレクション4・社会的相互行為と日常生活)」

1.課題設定の理由

 女性は誰に対し戦略を講ずるのか。相手はなぜ公共の場にもかかわらず、話かけてくるのか。女性がバーやカフェで誰に対しどのような戦略を講じるのか社会学的に分析することから、その根底に根付いているバーやカフェ、ジェンダーの社会的役割について考察する。

私は単純に一人呑みが好きでこれを選びました笑


                2.本論

 2.1「一人にしておいてほしい」とはどういうことか

 バーやカフェは公共空間であり、人々は互いのことを認識こそするが、視線を合わせないようになるべく居ない者のように他者を扱い、そして他者にもそれを求める。E.ゴッフマンはこれを「儀礼的無関心」と呼んだ。

 この「儀礼的無関心」は一種の非言語コミュニケーションに加わるということであり、これを「焦点の定まらない相互行為」という。そして、相手の話に注目するなどお互いの存在と直接的に関わること(直接的に言葉を用いる言語的コミュニケーション)を「焦点の定まった相互行為」と言い、この事例をゴッフマンは「出会い」と述べている。(ゴッフマン1980)

 つまり「バーやカフェで一人にしておいてほしい」とは、この「焦点の定まった相互行為」をバーやカフェに居る人物たちとしたくないということ、儀礼的無関心を自己も装い、他者にもそれを希望することである。このことから女性の戦略も、もっぱら非言語コミュニケーションに頼ることとなる。

カフェはあれですけど、お酒の場だと知らない人が絡んできたとか、下心じゃない感じもするけどちょっと絡んでくる方いらっしゃるじゃないですか。

当時真剣に悩んでたんですよね。

2.2女性はどのような戦略を利用するのか

 まず女性は話かけられたくない場合それを前もって他者に知らせる自己呈示をする。ここでの自己呈示は「彼女は一人で飲みたそうだ」と印象操作(戦略)をすることだ。このためには相手の社会的役割を分析し、それぞれに応じた戦略を考えることが重要である。

 ではここからバー・カフェに居る人物達それぞれに対しての各戦略を詳しく述べていく。

(1)バーテンダーと客共通の非言語コミュニケーションを用いた戦略

 席は他の客とは一定の距離感(社会距離・公衆距離)がある所を選ぶ。目安は会話が成立しないぐらいの距離であり、この距離が離れれば離れるほど「焦点の定まった相互行為」を拒否しているような印象を与える。

 バーテンダーは客との間に求められているものを提供するという社会的役割がある。日本社会心理学会によれば、注文での会話は、客がサービスを受けるための道具的な目標を持つ役割なので、これは非言語コミュニケーションとされる。(日本社会心理学会2004:258)

 ゆえにバーテンダーとの注文のやり取りは「焦点の定まった相互行為を行いたくない」という希望を破る行為ではない。

注文は今回、会話としてカウントしません。

 なので、バーテンダーに注文する際「今日は一人でゆっくり飲みたい」と伝えれば、そこで客の希望とそれを約束し最大限守らなければならないという社会的役割の結果、バーテンダーは最小限の非言語コミュニケーションしかとらなくなるだろう。

書いちゃいましたけど、初めてのお店で初っ端「今日はゆっくり飲みたいんで」って言う自信ない。

 そして、高田公理によると、客をバー・カフェの構成員とすると支配者はバーテンダーである。(高田1988:第4章)

 故にバーテンダーの攻略は重大である。バーテンダーは客を審査し安全な人間だと判断すれば、席に通す。そして女性が話しかけても大丈夫な(言語コミュニケーションを望んでいる)人物だと認識すれば、客も大丈夫なんだと認識し話しかけやすくなる。つまりこの関係性を利用すれば、バーテンダーへの意思表示が他の客への意思表示となる。

バーテンダー攻略は、本当大事ってことです。


(2)周りの客への非言語コミュニケーションを用いた戦略

 ここからが本題であるとも言える。客には、バーテンダーのような必ず希望を守らなければならないという役割は与えられていないが「彼女が何者かわからない」ので、相互行為を行って大丈夫か脅威を感じていることと、彼女自身が相互行為を拒否している以上むやみに話かけることは迷惑行為にあたるとし、その公共の場での社会的規範を守らなければという意識から話しかけたりはしない。

「知らない人に話しかけるってやっぱ怖いわ〜」と

「本人も話しかけるなオーラ出してるし、そっとしておこう」という

自分のためと相手のために、基本は話しかけないとされます。

 だが、アルコールを摂取すると人間は相手の個人空間に介入しやすくなる。また、高田公理や小林章夫によれば、昔からバー・カフェは社交、コミュニケーションの場であった。(高田1988) (小林1994:29)

 また、石井綾子によると相手がこの場にいるという情報は相手がどのような人物か判断するうえで重要な手がかりである。(石井2016)

 ゆえにカフェ・バーに来ているという事は「出会い」を目的としてこの場に居ると判断されてもおかしくはない。

しかーし!お酒は人を開放的にしてしまうし、

「こんなところ来てるんだから出会い目的だろ?」と超ポジティブシンキングにさせてしまうのですね。

私は、酒を飲んでもただ笑うだけで、絡みませんけど。


 なのでバー・カフェに私は「社交場ではなくただの公共の場という意識を持っている」と複数の戦略を利用して示す必要がある。以下、日本社会心理学会、NPO四国青年、大村英昭らの文献を参照し戦略をまとめた。

① 腕組・足組み…これは相手に対し心理的に防御する体制であり、相手は壁を感じ話しかけにくさをだす。(日本社会心理学会2008:260)

② 視線を合わせない…視線を合わせることは相手に何かしらの関心があることを示す。なので逆に視線をはずすと相手は自分と関わりたくないと感じそれ以上関わろうとはしないだろう。(日本社会心理学会2008:260)

③ 自分の世界に入る…読書やスマートフォンなどの操作、イヤホンで音楽を聞く行為は自分の世界に入り込むことであり、相手と関わる気がないことを示す。(NPO法人四国青年2015)

④ 体を他の客側に向けない…席と同様、会話可能にしやすい環境作りは相手と会話したいという表現に見られる、背を向けるなどし、会話に必要な表情を見えないようにすることも大事である。(日本社会心理学会2008:261)

⑤ 無表情…視線を合わせる同様、表情もまた重要である。相手に対しての微笑みは、相手への関心、好意を示すので無表情で無関心を表すことが大事である。(日本社会心理学会2008:261) 

 だが思考もコミュニケーションもすぐに消滅する。相手に一度呈示しただけではすぐに消えてしまい、再度呈示しなければならない(オートポイエーシス)。したがって常にこの戦略を続けなければならない。(大村ほか2005)


この時点で、退店しますね。私なら。


(3)出会い目的の男性客へ会話を用いた戦略

 客のなかには、このような戦略を用いてもなお介入してこようとする人物、特に男性客がいる。アンソニー・ギデンズによると男性は伝統的に女性たちよりも大きな自由を享受してきたこと、男性の社会的地位のほうが高いことから他者の個人空間に介入しやすい。(ギデンズ2006:133,164)

 女は下って意識が強い男性こそ、よりしつこくなるってことです。

 またバー・カフェを公共の場ではなく社交の場として捉えていることが、男性をより容易に個人空間に介入させる。

 そこで、男性客が話かけてきた際の自己呈示方法も考える必要がある。以下、アンソニー・ギデンズ、日本社会心理学会の文献を参照しまとめた。

①視線を合わせない

②体を相手側に向けない

③話しかけられても応答しない…聞こえていないフリをすることは「相互行為の破壊」である。男性は女性の従属的立ち位置が壊れたと感じ不安感を抱くであろう。(ギデンズ 2006:122)

④適切な応答をしない…「不適切な応答」は相手への拒絶行為である。(ギデンズ  2006:119)

⑤応答のタイミングを先延ばしするかのように振る舞う。(応えるスピードを遅くする、あー、えーといった間を埋める言葉の多用)…これも「相互行為の破壊」である。(ギデンズ 2006:119)

⑥低い声…高い声は喜びや楽しいという印象を与えるが、低い声は恐怖や不安感、脅威を与える。(日本社会心理学会2008:260)

⑦表情…笑うと楽しんでいると認識されるため、嫌な表情(眉間にシワを寄せるなど) を見せることで嫌悪感を示す。(日本社会心理学会2008:261)

最終手段ですね。地獄。


 3.今後の課題

 バー・カフェが歴史的に社交場・コミュニケーションの場という社会的役割を担ってきたことが、男性の個人空間へ介入しようとする行動力を増幅させる。しかし女性は社交場ではなく公共の場として利用したいと願っている。この戦略は、両者にとってのバー・カフェの社会的役割が違うことから発生する。

 では、近年女性の社会的地位を男性と平等にしようと対策が講じられてきているが、女性と男性の社会的地位が同じとなったとき、この社交の場で男性はどう振る舞うのか。

 男性が女性に個人空間の介入を受けやすくなり、戦略を利用することとなるのであろうか。その戦略は女性のものとは違ったものとなるのであろうか。

 またバー・カフェの社交場としての社会的役割がなくなってしまうとどうなるであろうか。

 日経BPヒット総合研究所によると近年では女性が一人でバー・カフェなど飲食店に行く「おひとりさま」が増えてきている。そして彼女達はバー・カフェに対して社交場の役割ではなく「一人の時間を楽しむ場所」という役割を求めて行く。

 現在では社交場という機能はSNSへと移行し、どこに居ても常にネット上で誰かとつながっていることが、バー・カフェの社会的役割の変化を引き起こしていると推察されている。(佐藤2015)

 はたして、このまま社交場という役割はなくなってしまうのか。社交場としてあり続けるのか。

 今後、このような社会構造の変化とともに「女性たちがバーやカフェで一人にしておいてもらいたいことを示す戦略」が必要ではなくなる可能性もある。


多少、今回のコロナ騒動でこの考えも変化していくと思うんですね。

仕事の仕方がこのまま在宅となり、一人の時間が増えると
あえて外でお酒を飲むことは、友人と話をしたりという誰かと過ごすことに意味があるようになるのではないか?もちろん、お店の雰囲気や働いている人に会いたいというのもあると思います。

どこまで、コロナ問題が深刻化するかはわかりません。技術も進んで、よりコミュニケーションが違和感なく行われるようなシステムが作られるかもしれません。

しかし、社会学的にはBARなどは社交場として戻るのではないかと思います。

参考文献

1『社会学』著者 アンソニー・ギデンズ 2006年9月25日第4版

 訳者 松尾清文 西岡八郎 藤井達也 小幡正敏 叶堂隆三 立松隆介 内田健

 発行 有限会社而立書房

 2『集まりの構造』著者 E.ゴッフマン 1980年12月5日

  訳者 丸木恵祐 本名信行   発行 誠信書房

 3『社会文化理論ガイドブック』著者大村英昭 宮原浩二郎 名部圭一

  2005年6月20日初版     発行 株式会社ナカニシヤ出版

 4『社会心理学事典』 編集 日本社会心理学学会 2008年6月20日

  発行 丸善株式会社

 5「電車内空間での逸脱行為」http://www.f.waseda.jp/ohkubo/ishii1.htm

  石井綾子  2016年5月20日

 6『酒場の社会学』著者 高田公理 1988年10月17日初版

  発行 PHP研究所

 7『ロンドンのコーヒー・ハウス: 18世紀イギリスの生活史』著者 小林章夫

  1994年10月1日初版 発行 PHP研究所

 8『【第115号】身近な行動を社会学でみてみると…?』

  http://shikokuhope.sakura.ne.jp/column-the-hope/3167.html

  NPO法人 四国青年NGO HOPE 2015年5月20日

 9『第3次おひとりさまブーム 「私の時間が必要」は9割』

  http://style.nikkei.com/article/DGXMZO91164810R30C15A8000000

  日経BPヒット総合研究所 佐藤珠希 2015年5月20日



最後までお読みいただきありがとうございました。
よろしければスキをお願いします。

お金?大好きに決まってるじゃないですか! 私の酒代にさせていただきます。 よろしくおねがいします。