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〔小説〕朝起きたらアザラシになっていた その27 夢十夜その3
※この話はフィクションです。実在する人物・団体名とは何ら関係ございません。100%作者の脳内妄想のみで構成されています。
朝起きたらアザラシになっていた俺は朝食のバナナを牛乳で流しこんで外出した。
中学生までは好きだった学校も高校から針のムシロだった。
理由はしょうもない事情だった。
当時のモトカノのMちゃんと学校や近所で出くわすと気まずいからだ。
学生時代に彼女がいたことを語ると羨ましいと人は言う。
最初は浮かれてました。でも、別れたあとがつらい。
まいにち同じ校舎や町で出くわすんだよ?
気まずいったらありゃしない。
Mちゃんは俺より大人で、すれ違っても眉一つ変えずに通り過ぎる。
俺のことは忘れてくれたと安堵した。
同時に、Mちゃんしか知りえない俺のプライバシーを女友達にしゃべってないかと不安に駆られた。
心理学者のスタンレー・ホールは「疾風怒濤(しっぷうどとう)の10代」と定義したが俺は怒涛すぎてつらかった。
2月のバレンタインとホワイトデーは俺にとって厄日となった。
2月になるとオカンが
「Mちゃんからもらえないでしょ~代わりにママから愛をこめて❤」
とか言って俺にチョコを渡す。
中2病(ちゅうにびょう)真っ盛りの俺はいたたまれなくなって山へ何日も消えていた。
3月になるとオカンが
「ホワイトデーのお返しはイオンモールのでいいよぉ~」
また無神経なこというので今度は海で何日もお世話になった。
実家へ戻ると近所のおばちゃん達の井戸端会議で収集される情報網で俺とMちゃんのことも知られていた。
なので地元のどこにいてもお寒い思いをした。
進学でも就職でもいいから地元のしがらみやMちゃんの影がない大都会へ脱出したかった。
それまで登校拒否して海釣りへ行って現実逃避していたが、大都会へ出るために出席して授業と進路活動に参加した。
Mちゃんと別れて針のムシロは自業自得なので、高校の3年間は懲役3年のお務めと割り切って登校した。
卒業式は終わると即座に帰って新生活のために荷造りした。
もう学校と地元からオサラバだ!
安堵感で眠りにつく。
朝になって目覚ましが鳴る。
時計の針を見て飛び起きた。
やべえ!9時過ぎてる!!
遅刻ギリギリでも出席すれば何とかなる。
あとは教員の心象を悪くしないよう急いで教室に駆け込もうとした。
習慣とは恐ろしいもので卒業した学校へ駆け込もうとしていた。
実家へ帰省するたびに朝は習慣と条件反射で体が登校しようとする。
2021年の今日もだ。
いったん起きた俺は日の差す実家で2度寝する。
つづく。
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