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落語家のお年玉

落語家にとってお年玉はつきものです。前座さんはもらう側、二つ目以上色物も含め真打までみんなから貰えます。


前座の頃はこれが楽しみで、このお年玉で楽しい春を過ごすことが出来ます。


僕らの世界では「あけましておめでとうございます」というのは、その年に初めて会った人にのみ言います。同じ人には2回言ってはなりません。


2回目に言うと、「昨日会ったよ。」とか言われたりします。


二つ目以上ならそれで済むんですが、前座の場合は特に気をつけなきゃいけないです。


というのも、この「明けましておめでとうございます。」にはその裏に「(今年初めて会いました。お年玉頂戴!)」の意味を含んでおりますので、嫌味のない笑顔と共に前座はこの言葉を発します。


なので、2回言うとあげたはずのお年玉を再度請求しているような感じになるので、これは避けねばなりません。


なので前座は必ず、お年玉を貰った人をチェックしていて、次に会った時にお礼を言えるようにしているわけですね。


正月は、かなりこういうしくじりがありました。初日から来ているのに何故か三日目にお年玉をくれる方がいたりして、こんがらがっちゃうんですね。


そんなお年玉ですが、二つ目になればもう渡す方です。これはもう一生続きます。今まで自分たちも貰った物で、また縁起物ですからね。金は天下の回り物ですから、芸人はどんどん出します。


ただ、恥ずかしながら二つ目に成り立ての頃はお金が無くて、お年玉を払って、正月は質素な生活をしていたこともありました。自分も貰ったんだし意地でも払いますからね。


なんだかそれも懐かしい思い出です。


流石に今はそんなことはありませんが、やっぱりお年玉は出費の一つです。


そんなところから僕は5年くらい前から、「お年玉運用金」なるものを作りました。


まず、その年にもらった寄席のワリには手を付けず箪笥にしまっておく。そして、お客様から頂いたご祝儀等、出演料とは別に得た臨時収入はこれも箪笥にしまっておく。大体それらのお金で、お年玉が作れることが分かりました。あとは前年の予備で作ったお年玉の繰越とかで、お年玉は大体間に合います。


そうすることで、お年玉のために新たにお金を下ろしたりしなくても済むようになりました。


それまでは、11月くらいからいつも「ああ、そろそろお年玉のお金下ろしておかなきゃなあ。」とちょっと重荷になってましたが、今は全くそれが無くなったので、「さあ、お年玉よ。来やがれ!」ってなもんです。


こんな話をすると「落語家さんって大変ですね。」と言われるんですが、全く大変なことはありません。むしろ楽しんでいます。


というわけで、今年もお年玉の宛名書きから始めて行きます。


落語について、また過去の思い出等を書かせて頂いて、落語の世界に少しでも興味を持ってもらえるような記事を目指しております。もしよろしければサポートお願いいたします。