「見送り」~短編シナリオ~
出発いたしますので、ご乗車の方はお急ぎください~
随分とレトロな列車と乗り場だ
おばぁちゃん:じゃぁ、体に気を付けるんだよ、風邪ひかないようにね。
うん、ばぁちゃんもね。
僕は大丈夫、心配しないで。
話したいことは沢山あるのに、言葉が出ない。
するとばぁちゃんの荷物のチャックが開いていることに気付いた
ハッとした僕はしゃがみ、そのチャックを閉じた
するとばぁちゃんは僕の頭を撫でた
おばぁちゃん:大きくなったねぇ、やっと手が届いた。
なぜか涙が溢れた
ばぁちゃん、僕はばぁちゃんと過ごせて楽しかっ
刹那、声に被せるように汽笛が鳴る
ドアが閉まります~ご注意ください~
ニコリと笑うばぁちゃん
ばぁちゃんは列車に乗り、席に着いた。
車窓から手を振り、満足そうだ。
これから食べるのか、ミカンが握られていた
もうこっちからも手が届かない
ありがとう、元気でね。
列車が見えなくなるまで、全力で手を振っていた
次の日、ばぁちゃんは安らかに息を引き取った。
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