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中学生がAIを作って実験してみた話

はじめまして。株式会社ヒューマノーム研究所インターンの佐藤と塩谷です。

当社は、2021年7月21日(水)に三田国際学園中学校(東京都世田谷区)にて、当社が三田国際学園中学校と共同開発する教育プログラム「Humanome CatDataを用いたAI構築ワークショップ」を開催しました。

このプログラムは、中学生にAIを身近に感じてもらうことを目的として開催し、11名の中学3年生が参加してAIへの理解を深めました。

私たちはこのワークショップにティーチングアシスタント(TA)として参加し、教室内を巡回しながら参加者のサポートを行ってきました。今回は、そんなTAの目線からこのプログラム実施の様子をお届けします。

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ワークショップ前半:予測するとは何か? データに慣れよう! ーアヤメの種類判別ー

まず、AIにおける予測とは何か、一般的な意味とどう違うのかを生徒達に講義し、予測することに対する知識を深めます。

ある属性を予測するためには、属性とその他の性質などのデータを学習することが必要なことを学びました。このあと生徒達はCatDataを実際に操作しながら、使い方について簡単なレクチャーを受けました。

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はじめにirisデータと呼ばれるアヤメの種類とパーツのサイズからなるデータを用いて、アヤメの種類を予測してみました。アヤメは種によってガク片と花弁の大きさが異なることが知られています。

しかし、表計算ソフトなどを用いて種類とパーツを比較し、アヤメの種類を予測することは困難です。そこでCatDataを用いてデータを可視化し、どの形状が種類の予測に大切かをそれぞれが考えた後、実際にAIを構築し予測してみました。

CatDataはプログラミングや数式の知識が無くてもAIを構築できます。AI構築に必要な手順を知った生徒たちは、すぐに操作に慣れることが出来たようです。また、どのパーツの形状が種類予測に効いていたか知ることもできるため、予想が当たった生徒たちは嬉しそうでした。生徒たちがCatDataの使い方に慣れたところで、プログラム後半に移りました。

ワークショップ後半:AIを構築しよう! ーカエデの種子の回転姿勢予測ー

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ワークショップ後半では、カエデの種子の回転姿勢を予測するAIを構築しました。カエデの種子は落下するときに回転することで知られています。この種を模した模型では、羽の形状に応じて数種類の回転姿勢が観察されています。

一方で、模型の形状を決める変数として、模型の全長、くびれの深さなど、さまざまなものが考えられますが、どの変数が回転姿勢を決定するのかはわかっていません。つまり、私たちが模型の形状を目で見て回転姿勢を予測することは困難だということです。

そこで今回は、模型の形状を決める変数と回転姿勢が対になったデータセットを学習し、形状から回転姿勢を予測するAIを作ってもらいました。生徒たちにとってはあまり馴染みのない題材かもしれませんが、前半の講義やirisデータを用いてのチュートリアルを踏まえて、予測対象や目的、方法を難なく理解できたようでした。

まずはあらかじめ用意されたデータ(私達が事前に実験し、準備しました)をCatDataに学習させました。次にデータの散布図や、作成した学習モデルの評価結果、変数の重要度に基づいて、作成した学習モデルはどうだったか、どうしたら精度が上がるかということについて考察を行いました。

その上で、自ら新たにデータを収集し、もとの学習データに追加することでより精度の高い学習モデルの作成を目指しました。

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生徒たちは、種子の模型を数個いっぺんに作ってから落としてみたり、ひとつずつ作っては落としてを繰り返したり、各々の手順で作業を進めていました。データ収集の方針も、「散布図上でスペースが空いている部分のデータを取ろう」、「重要だと評価された変数の値を変えてみよう」というように、各々の意図を持ってデータを収集していて感心しました。

また、終了の時間がきてもまだまだデータが足りないと奮闘している姿を見て、データ収集の重要性と一方の大変さを理解してもらえているように感じました。

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最終的には、回転姿勢が未知な模型を作成し完成した学習モデルによる予測を行いました。そして実際の回転姿勢を確認することで予測の評価を行いました。

なかには予測の正解率が100%だった生徒もいたようで、AIの威力を実感できたのではないかと思います。予測がうまくいかなかった生徒も、正解率に関係なく「AIが予測してくれた」ということに対してどこか満足げな様子で、AIを作ることによりいっそう意欲的になっている生徒もいました。

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ワークショップを終えて

大きなトラブルや一部の生徒が取り残されるということもなく、無事ワークショップを終えることができました。全体を通して、AI構築の目的を理解し主体的に試行錯誤をしている様子や、羽の落下実験やAI予測自体を楽しんでいる様子、CatDataをすぐに使いこなしている様子が印象的でした。

またワークショップ終了後のアンケートでは、簡単なAIなら自分でもつくれると思った・地道なデータ収集が行われていることを知ってAIに親近感が沸いたという声もいただきました。

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ワークショップ前のアンケートで、AIは難しく、敷居が高いと感じると回答していた生徒たちも、AI構築の体験を通して、AIは自分でも作れるものだと見方を変えていただけたのではないかと感じています。今後、各々が興味を持っていることに対してAIを活用したいと思ったときに、今回のワークショップでAIを作成した経験を思い出して活かしていただけたらと思います。

9月の上旬には、中学1年生を対象とした第2弾のワークショップを予定しています。今回のワークショップで得られた改善点や参加生徒のアンケート回答を参考にワークショップを再構築し、より実りの多いものへと発展させていきたいと考えております。

※ 筆者紹介
塩谷 明日香(慶應義塾大学環境情報学部1年):人間と機械の知能の両方に興味があります。好きなことは模様替え。機械学習やプログラミングは学び始めたばかりの見習いです。
佐藤 美結(慶應義塾大学環境情報学部1年):植物の生態に興味があります。好きなものはポケモンです。塩谷と同じく、機械学習、プログラミングを今年から学び始めました。
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私たちは今年度から当社でインターンシップを始め、ワークショップのTAや機械学習ツールの使い方の紹介記事を執筆しています。今後も、AI構築の実際についてご紹介していきますので、お読みいただけると嬉しいです!

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