見出し画像

本人の側に立った理解とは(前編)

※2020年度と2021度の2年間、メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文(コラム)を転載してきましたが、昨年度からは『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず過去に書いた文章を毎月1~2本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めています(執筆時から年数が経っていることで修正する場合があります)。

※2022年度からは「原則として2年前までの文章を転載する」という方針で更新しており『ごかいの部屋』掲載文にかぎらず30年余り前の文章から選んで時系列に転載を進めてきました。そして現在は2年前の文章を掲載しています。そこで今月は、おととし9月に配信した『ごかいの部屋』の掲載文を転載します。私がやっている不登校・ひきこもり相談室「ヒューマン・スタジオ」の設立20周年記念イベントを翌月に控え、そこで講演する内容を予告する意味を込めた文章であることをご理解のうえお読みください。

====================

 『ごかいの部屋』誌面の下のほうの告知版で詳細の確認方法をご案内している「ヒューマン・スタジオ設立20周年記念イベント」では、2日間を通じて「20年の間に積み重ねてきた “本人の側に立った視点(当事者視点)” にもとづく不登校・ひきこもり対応」をお伝えします。
 
 そこで「対応の前提となる理解」の大切さを踏まえ、イベント直前のこの機会に「20年の間に構築してきた “本人の側に立った視点(当事者視点)” にもとづく不登校・ひきこもり理解」を本稿でお伝えします。

本人の心理を踏まえる当事者視点

 この20年で私が気づき痛感してきたことのひとつに、不登校/ひきこもり状態への対応は「本人の心理に沿って模索し積み重ねていくもの」ではなく「学校/社会復帰という目標(ゴール)に連れていくもの」だという強固な社会通念があります。
 
 私は前者を「本人の側に立った視点(当事者視点)」と、後者を「学校/社会の側に立った視点(学校/社会視点)」と呼んでいます。
 
 前者の視点では「まず本人の心理への理解から」となるわけですが、後者の視点では「学校/社会復帰のためにどうするか」となり、現状その視点に立った相談や支援が主流です。そのため、本人の多くが「どうせわかってくれない」などと予感して、相談せず支援を忌避しています。ご家族にも「相談してもダメだった」とお考えの方が少なくありません。
 
 では、当事者視点に立つと本人の心理はどう理解できるのでしょうか。
 
 言うまでもなく、私が本欄で書いてきたことはもとより、相談や家族会、講演などでお伝えしてきたことのうち心理を説明した部分は、すべて当事者視点に立ったものと自負していますが、それに加えてここでは本欄に書いたことがなかった2点をお伝えします。 

広がる学校/社会との距離

 まず、229号にも書いたことの別角度からの説明です。それは「自宅と学校/社会との距離感」です。

 不登校/ひきこもり状態にない人/なる前の人にとって、自宅と学校/社会はセットですよね。つまり「自宅と通学先/仕事場を往復する生活」です。もちろん、心と体は一致した状態で往復しています。
 ところが、何らかのストレスにさらされて、自宅と学校/社会との間に亀裂が生じ、それが広がって自宅と学校/社会が離れていき、ついには気の遠くなるような距離になります。
 「モーゼの十戒」の絵や映画をご覧になったことのある方は、それを思い出してください(今回のカバー画像)。あんなふうに、分かれるはずのないものが分かれて離れていく感じになるわけです。
 
                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。